第223話腹ペコ公園
何か、行き詰るなと思っていたら、主要登場人物が少なすぎる事が判明。
今回は、女の子ばかりで行きます。
……この世界……いや、この町には悪が無い。
じゃあ、桜奈を襲った奴は何なのかと言えば、この町の外の連中だろう。
今日の朝、ニュースで町の外の連中だと言っていた。
「たくさんの人が居るのに全員が孤独。それが、この孤児の町」
何か、悲しいな。
俺は歩く社会人を眺めながら思う。
この町に居る、人間は肉親を少なからず失っている。
そして、考え方の独自性。
一人だと、遊びだって限られる。
その中で一番楽しいのは、きっと空想する事だ。
親を思い出し、今までの友達を思い出し、ペットや近所の人を思い出し。
その空想は、この町で長く暮らすほど大きくなっていき、現実に目を向け始めるようになると、科学と結びつき、大きな成果を生む。
柔軟な考え方が出来る奴がこの町には多いんだ。
いや、一度心に傷を負っているからこそ、言葉を心に深く食い込ませる事が出来る。
「まぁ、そんな奴ばかりだとは限らないけどな」
けど、大半はそうだと思う。
だって、下を向いて歩いている奴ばかりだから。
俺の世界の奴だってそうだったけど、地面を向いて歩いている奴が多い。
それは疲れているからそうするんじゃなく、気持ちの問題だと思う。
「……この町の人間を一気に救えるような計画」
……何か、それが一番手っ取り早そうだ。
何かで一番になるんじゃなく、悲しんでいる人を助ける。
欲ではなく、本能で動く。
「……おれには重荷だ」
上界と下界があるとして、上に上がったところで何かあるんだろうか?
俺は無いと思うんだが……。
「欲に従う為に欲を殺すか。んなもん、自分で払えよ」
他人に頼るなボケ。
「……腹減った」
……今まで、シリアスだったのはコレが原因です。
「何か食べ物をー!! 死ぬー、死ぬー」
現在、公園のベンチに座って叫んでおります。
あぁ、叫んだらまだ腹が……。
『さっきから、五月蠅ぁぁぁぁぁぁい!!』
その声と共に、俺の後頭部に痛みが走る。
「いぃッ!」
前のめりに倒れ、顔が擦れる。
あ、熱い!!
「な、何するんだッ!!」
「ん? あら、女だったの」
「何を言う、おれは―――」
女の体でしたね。はい。
「おれ? まぁ、いいけど。さっきから、五月蠅い。こっちは後ろで仕事してるんだから」
「は? 後ろで仕事?」
後頭部の痛む場所を抑えつつ、立ち上がって蹴ってきただろう女を見る。
顔は、化粧が少なく最低限やっていると言う程度。普通だろう。
服装は、作業着と言うおざなりなもの。しかし、仕事と言っていたので、何かあるんだろう。
「何の仕事してる……の?」
急いで、男の口調から女の口調に変える。
俺の周りには、個性的な奴ばっかだったから、これも不安なんだが……。
「んなもん、どうでもいいの。えぇ、どうでもいいことよ。って言うか、詮索するようなことやめてくれる?」
「それは、悪いことをした」
「い、いや、謝らなくても……、これだから他人と会話するのはいやなのよね」
「そう。貴方も孤児なの?」
「……詮索しない」
……じゃあ、会話できないだろうが。
何も知らない相手と話し合いなんか出来るわけ無いだろうが。
「はぁ、まぁ許してあげるから、この公園から出て行ってくれる? あ、強い口調になっちゃったわね。ゴメンなさい」
……まぁ、人と会話慣れしてないからだろうけど。
しかし、俺はこの公園の外に出て何をすればいいんだ!!
よし、無駄に対抗してみよう。
「でも、行く場所が無くて……」
「知るか」
……コイツ、手強いぞ!
「…………」
「……何?」
ジーッと見つめる作戦を実行。
「…………」
「……………………………あたしの仕事を手伝ってくれるなら居てもいいわ」
「ありがとー!!」
敗者の称号は君のものだ!!
「それで、仕事は!」
「この公園の手入れ。昼時になるとゴミが増えるのよ」
「それで、ゴミ拾いを?」
「違う。こういうのは未然に防ぐの。そうね、あの不良。きっとガムでも地面に捨てるわよ。ほら」
言うと同時にガムを吐き出す不良っぽい少年。
「はい、社会のゴミは消えましょー」
熱気を帯びた炎の弾を手のひらから打ちだ……何をやってるんだこの人は!!
『ギャ、あつぅぅッ!』
「死ね死ね爆だーん!!」
連続して、放たれる炎。
それの着弾地点は、不良っぽい少年の体。
「……み、未然に防ぐって……」
「そういうことよ。あなたも、剣持ってるでしょ? なら、その剣を使って―――」
「あ、危なすぎッ!!」
ここは、正論を言わせてもらうぞ!!
「……死にはしないでしょ?」
さっき、思いっきり『死ね死ね爆弾!!』って言ってたよ!?
「とりあえず、ゴミ掃除。頼んだー」
お前の言うゴミの中には人間さえ含まれてるだろ!!
……男女?
なにそれ? おいしいの?
まぁ、そんな感じで、公園のゴミ掃除をする海弟でありました。
腹ペコな海弟はいつぶっ倒れてくれるのか楽しみですね。