第222話『いつもより普通でお送りします』by海弟
後書きにて、海弟の三大怨敵を紹介します。
……朝になった。
「寝れないな。最悪だ」
「んぅ……お姉ちゃん……むにゃ……」
一枚の布団に、二人の女性。
……子供だが、女性と寝るのは始めてな俺が居る。
「……とりあえず、起こすか」
体を揺すりつつ、名前を呼ぶ。
「う、わっ! え、あ、だ、誰!!」
「おれだ」
「あ、あぅ、すいません」
ペコペコと頭を下げる、桜奈。
若干眠たそうだ。
「いや、そんな頭下げなくていいから」
「す、すいませんでした……。あ、今、朝ごはんを作りますからっ!!」
ベットから、降り三歩でキッチンにたどり着く桜奈。
……もう、何も言わない。
「何か、手伝える事は?」
「い、いえ、そんな。わたしがやりますっ!!」
……こりゃぁ、手伝えそうに無いな。このやり取りが続きそうだし。
「……ふぁぁ、眠い」
とりあえず、テレビを付けニュースを見る。
タレントらしき人を批評している。
……面白くねぇな。
「あ、どうぞ。出来ました」
と言って、ベッドの上にトーストを乗せる桜奈。
そういや、机が無いな……。
「まぁ、いいか。これは、個人の問題だ」
「……で、できないわけじゃないんですよ?」
出来ないからこんな事態になってるんだろうが。
「あ、わたし学校に行きますけど、お姉さんはどうするんですか?」
「おれ? おれは、ぶらぶらと歩いてようかな」
食べれるかわからなかったが、とりあえずトーストを口にしながら言う。
「……あの、ずっと気になってたんですが……」
「何?」
「その、お姉さんも、家族が……その、居なくなって……この町に来たんですか?」
……そおいや、この町は大きな孤児院みたいなものだったな。
規模は違うが、目的は同じ。
「……おれは、少し違うかな」
「……そう、ですか」
朝から、イヤな雰囲気だ。
「よし、んじゃ行ってみよーか!!」
立ち上がり、玄関を目指す。
「あ、合鍵は、玄関にありますからっ!!」
探してみると、同じ鍵が二つ置いてあった。
そのうち一つを取り外に出る。
エレベーターを使い一階まで一気に降りる。
そして、深呼吸。
「ゴホッゴホッ、空気悪ッ!!」
そして、自爆!!
自分で、言ってて恥ずかしい!!
「はぁ、何処へ行こうか」
路地裏? いやいや、この世界、剣一つで路地裏を制覇できるとは思えない。
「でも、行くと言う……」
もう、朝だし大丈夫だろ。何がかはわからないが。
「よっしゃー、突撃ィッ!!」
人々の影になりそうな、裏路地へと突撃する。
しかし、そこには誰も居ない。
「……こ、この先の展開は?」
きっと、無しなんだろうな。
「ノリだけで、動いちゃダメだな、やっぱり」
俺は、裏路地から出て、表通りを見る。
そろそろ、通勤のサラリーマンが目出ってきている。
「……俺の世界とは、全く違うな」
ローラーの付いた靴で、素早く移動しているサラリーマン。何故か、ミスマッチに見えない。
「……はは、さすがに龍は居ないよな」
空を見上げながら、言う。
…………。
「良く出来た、飛行機だなー。ハッハッハ」
『グルォォォォン!!』
……え? 何? 何の音?
まさか、あの飛行機の鳴き声じゃないよね?
「ちょ、非現実に現実を混ぜて! えぇ!?」
もう、わけわかんないな。
「理解するのは諦めた方がいいな」
ここの世界に住む奴にはコレが日常。普通なんだ。
知らなくても暮らしていける事。
なら、俺だって探らなくもいいだろう。
「……この町の裏は浅そうだ」
だからと言って、頂点に立つのが容易いわけじゃないがな。
「……少し、努力してみるか」
……表に居た方が安全そうだし、自由そうだ。
それに、表に出てくる技術力も中々……。
「世界レベルじゃまだ足りない。『異』世界レベルだ。そこまで上り詰めてやろうか」
腰に括りつけた剣を見る。
……まずは、鞘を捜さないとな……。って言うか、よく警察の皆様は俺を逮捕せずに逃がしてくれましたな。
「って言うか、何で剣だけでおれは腰に付けてなきゃならないんだ」
危ないぞコレ。
「んー、とりあえずは―――」
隣を見る。
白い布が水に濡れて舞いそうで舞わない状態になっていた。
「……雨なんて降ってなかったよな」
……幸運だな、何か恐ろしいぞ。
剣に布を巻く。切れないようにっと。
「……剣道の防具店とかあれば良いんだがな」
とりあえず、今日はそれを探すとしようか。
……金は、後で考えりゃいいや。
エントリーナンバー1
龍。
龍の群れに突撃し、肉と肉のぶつかり合いを見てから恐怖。
ライバルと言うより、恐怖対象。
エントリーナンバー2
学校。
学業もさることながら、城壁のような防御力。
耐震の為に作られた設備も、地の魔法への対策となる!
……まぁ、海弟は地の属性の魔法を使えませんが……。
エントリーナンバー3
風呂。
海弟に安らぎを唯一与える物。
思わず、癒しの一言を発してしまう。
以上! 三大怨敵でした!!