第220話見るも無残なホーム
魔法&科学。
……これが混ざる時ほど恐ろしい時は無いですね。
この世界は思っていたよりも危険だ。普通なら出来ないはずの魔法と科学の両立が出来ている。
そう思ったのは、警察の行動を見ていた時だ。
どちらも扱い、どちらの舞台も制する。そんな圧倒的な力を持つのが警察だった。
人々を守る、と言う目的で動いてくれているからいいが、政府の奴等に出来るんだ。裏社会の奴もこういう部隊をいくつか持っているだろう。
もっと巨大な力。
……今の俺じゃあ勝てそうに無いな。しかも、両立ができるこの世界のことだ。頂点に立つ奴だって科学と魔法、両方使ってくるだろう。
……まぁ、そこまで行けるかはわからないがな。
俺はアニメや漫画の主人公みたいに、何か信念があって戦うわけじゃない。
面白そうの一言だ。それに、頭を捻って楽しむ。うん、これ一番だよ。
クソったれの世界で唯一楽しめるのこれぐらいだし。
「えっと、それで、泊めて欲しいの?」
「ん、あぁ」
会話中に考え事をしてしまったようだな。
まぁ、会話相手の女の子は気にしないだろうがな。
「……家、誰も居ないしいいと思うけど……」
一人暮らし? 危険だなぁ。
まぁ、俺の問題じゃないしこれから一緒に暮らすんだしいいか。
「でも、何もないよ? お金になるものだって―――」
「待て。待て待て。なんだ? おれが、泥棒かなんかだと言いたいのか? んまぁ、面白そうだからそれもいいが、今回の目的が目的だからなぁ。って訳で、お前の想像するような事は出来そうにないな」
「え、違うの?」
「違うね」
さすがに、泥棒なんかしても楽しくないしな。金目の物なんて集めたって使いようが無いし。
「寝泊りできるところが欲しいんだよ。ほら、おれは、アレだし」
この姿。高校生~大学生の女性の姿だ。力が弱まっている今だし、そういうのに出会いたくない。
仮に出合ったとして、倒せる自信が無い。
「優しそうな人で安心しました」
……コイツ、命(?)の恩人に優しそうな人って……。ナニソレ?
まぁ、いいや。
寝泊りできる場所、確保。
この女の子はマンションに住んでいるらしく、すぐ近くのマンションのような……デパートのような場所へと入っていく。
マンションにしては光の強さが半端無いな。科学じゃなくて、たぶん魔法かと俺が推測していると、俺に構わず進んでいく女の子。
途中、『虎石』と書かれたポスト(?)のようなところを覗いたが何も入っていないらしく蓋を閉めるとエレベーターにしては大きい四角形の部屋の中に入る。
その部屋の扉は、人間を判断して扉を開くらしく、自動的に開く。
「虎石って、キミの苗字?」
一応、聞いて見る。
「え、あ、そうです。虎石桜奈と言います。わたしはこの名前、気に入ってるんですよ」
「おれも綺麗な名前だと思うよ」
……海が近かったからって理由で海兄と海弟と付けられた双子の弟から見ればね。
「そ、そうですか。始めて言われました」
「だろうね。他人に無関心過ぎないこの世界―――いや、この町の人」
「え? ほかの町から来たんですか? あ、すいません。この町の人はですね、他人との関係の制限が大きいんですよ。結婚って制度も何年か前に無くなったみたいですし」
「ん? なら、どうやって子孫とか残すんだ?」
「子孫ですか。そういうのは、えと……わかりません」
……そいや、この子小学生だったな。
わからなくて当然か。
会話が途切れると同時に、エレベーター(?)の扉が開く。
「先に言っておきます」
「は?」
先に?
部屋が汚いとか?
そんなの気にしないよ。
「えと、さっき、この町の外から来たって言ってましたよね?」
「近いことはな」
厳密に言うと、この世界の外から来た。
「その、この町はですね。えと……孤児や心の傷ついた人が来る町なんですよ。その孤児は大人になって……この町を支えて。そんな感じの町なんです」
「一種の独立国家?」
「その、反発とかじゃないですし、違うかもしれません」
……ってことは、この国(町)は日本とは別の、面白いほどに孤独を好む奴の溜まり場ってことか。
しかも、独立しているわけではないし、日本の法律も基本的には適用されている。でも、町の決めた方針がそこにあって。
色々な部分をカバーしているってわけか。
「その、あなたも―――」
「おれは違う。おれは、心の傷以前に、もはや心がバラバラだ」
まぁ、心の傷は治らないと言うが、ここまで破壊された心は案外治るもんなんだぞ?
吹っ切れるとも言うな。心が成り立つ上で犠牲にしちゃいけないものを捨てて、新しい心を構築する。
普通の奴じゃ絶対に無理。異常の奴だって不可能。
なら出来るのは?
簡単だ。
人生を諦めている奴。
異常でも普通でもない、その真ん中。
何をするかわからない、その異常。なのに、日常へ溶け込める、普通。
危険すぎる存在は、壊れたものに執着しない。
「こ、怖い人ですね」
「ん? あ、すまない」
目付きが悪くなってたか?
そこら辺は気をつけないとな。
「その、ここです」
「お、おう」
……そういや、一般的な女の部屋に入るのは……青空を含め二人目か。
……ちょっと待て。俺の人生に普通の女は居ないのか!?
待ってくれよ。何その人生!!
「なぁ、おれとお前は友達だよな?」
「い、いきなり……、えと、友達ですよ」
「そうか。それはよかった」
一般的な女性の友達が一人増えたぜ。
「その、何も無いところですが……」
「いや十分だとおも―――」
……部屋?
なにそれ?
おいしいの?
…………。
「な、何が起こったんだ……?」
「その、わたしの部屋……です」
……嵐が過ぎ去ったような……そんな喪失感のある部屋だった。
……つまりは、こういう事だ。
リビング、使用してません。
キッチン、物がギッシリ。
廊下、物がギッシリ。
トイレ、物がギッシリ。
倉庫、使用してません。
……つまり、この子ってば使いたいものがすぐに手元にないと落ち着かないわけね。ハハ、理解。
……倉庫ぐらいは使ってやれよ。って言うか、普段、キッチンで暮らしてるの?
神が舞い降りようと、地球最後の日が来ようと、恐怖しか感じません。
しかし、これが混ざったら……、絶望が生まれます。
……と言う、自論です。
ま、酸性とアルカリ性みたいに中和なんてありえないのですよ。
……それじゃあ、少し次はボケてみようか。




