第218話爺さんと海弟
サブタイが手抜きとか言わないでッ!!
聞いた話を整理しよう。
その1 俺は、コイツの作った世界で生きていたAIらしい。 (俺不満)
その2 そして、ことごとく世界のシステムを支配していたらしい。 (俺満悦)
その3 この爺さんはそれが目的で、何か企んでいるらしい。 (俺疑問)
そして、今から企み発表。
の前に。
「何で、俺は少女なの!?」
「やっぱこういう機械とかって少女に限るじゃろ。向こうで男だったのはイラギュラー」
俺のせいにされてるし。
「元々作ったのが女の体。で、出てきたのが男の俺ってことか。……大至急、変更を願いたい」
「ワシ個人の研究じゃったしなぁ。大至急と言われても時間は掛かるぞ?」
……最悪だ。
「まぁ、頑張る事じゃ。若いうちは苦労は買ってでもしろと言うしの」
「この体に歳とか関係ないだろうが」
「なら、男の体はいらんだろ」
「いるよ」
当たり前だろうが。
「って言うか、最近女になってばかりだ」
「女心を知れと言う事じゃな」
「知らなくてもいいだろうが」
「……はぁ。たくさんの女の運命を変えておいて……」
「は?」
「いや、今はいいじゃろ」
……ところで。
「口で喋れ。読むのは疲れる」
「喋るのは疲れる」
「……何で、命令を聞かんのじゃ……」
オッホッホ、俺に命令?
出来るかよ。
「プログラムか……」
「常に進化する俺に付いていけないのか。……残念だな科学よ」
「いや、お前の暮らす場所よりも、百年ほど進んでいるのだが……」
なんと!!
俺と愚民の差は百年以上!?
「……眠い」
「……なんちゅうか。何で、対応できないかわかった気がする。お前、何も考えてないじゃろ? いや、本能で生きてるじゃろ? 機械に必要な演算能力を放棄して、何か変なところに回してないか?」
「知るかよ」
これは俺の体らしいが、なんも知らん。
「まぁ、うまく接続できてよかったわい。うんうん」
「うんうんじゃねぇよ!! 魔法返せ!!」
「どのみち、その体じゃ使えんだろうに」
……そーじゃん。
「……こっちの世界の武器を使うことをおススメするが?」
「ナイスアイディアだ!! って言うか、元の世界に帰るのを希望する」
「話の区切り方がいまいちわからんが、とりあえずこっちの武器。長剣でいいか?」
「うん、って何だか機械的だな……」
「様々な補強がされておるからな。強度だけなら、お前の世界の核爆弾を落とされても壊れん」
「ほぉ、何かすごいな」
「まぁ、この世界じゃもっと強い武器があるがのぉ」
……それをくれよ。
「個人の研究じゃし、銃器は扱えんじゃろう?」
「まぁ、そうだな」
「ならそれでいい。うん、それじゃあ計画へ進もうか」
「それだよ!! 何その計画!!」
「……よし、聞かせて進ぜよう」
お前、次に偉そうにしたら殺す。
「ついでに言うと、こちらからその体を制御できるから」
「万策尽きたか」
「ワシは考えたのじゃ」
無視か。
「この世界には並行する世界と、垂直する世界、それに上下世界があると」
「何だそれ?」
「まぁ、聞いておれ。そして、ワシのたどり着いた答えがこの計画。下界より生物を救い上げ上界へと示す。すれば、上界のヤツらはワシの事に気づきワシを上界へと導くだろうと」
「何か壮大な物語だなぁー。ハッハッハ、まぁ頑張れ」
「お前も手伝うのじゃ」
「え?」
俺も?
何を手伝うって言うのさ似非博士。
「似非じゃないわい。ワシの研究の為、お前はこの世界に名を轟かせろ。そうじゃな……、この世界の強いヤツでも倒してきたらどうじゃ?」
「うっさいな。俺は帰ってあんまんでも食うの」
「いきなり話が切り替わった!?」
粒餡が好きだ。
「……こっちの世界の甘い物も食べてみたくは無いか?」
「よし、交渉成立だ。報酬は先に頂く」
「逃げるなよ?」
「わかってるさ」
……思考は全部読まれてるし。
「まぁ、爺さん。それが間違いだと気づくまで俺が手伝ってやるよ」
「間違いではない。確証はあるからのぉ」
……まぁ、俺には関係ない話だ。
適当にこの世界で暴れるとしよう。
☆
「食ったぜ。お腹いっぱいだ」
「……研究費から引いておこう」
……よし、そろそろ強い奴でも探しに行くかな。
「何かの世界チャンピョンを不意打ちぐらいが丁度いいか」
「相変わらず外道……」
爺さんに言われた!!
「まぁ、よい。それと、一つ言っておく。この世界は向こうの世界より科学技術が発達しておる。つまり、こっちの世界での戦いは向こうとは違うと言う事じゃ」
……段々ファンタジーから離れていってるよな。
おい、コメディーに変更は出来ないか?
え? 基本ファンタジーだろって? ……まぁ、そうだけどさ。
「何を一人でぶつぶつと。まぁ、頑張れ」
そう言って、研究所の外へと放り出される。
あたりを見回すと、機械的な町並みが俺の瞳に移る。
「ほぉー、すごいなぁ……」
目の前に走る車は、かなりのスピードが出ているように見える。
町行く人々も、何やら靴に付いたローラーでスピードが出せるようになっているらしく、速く動いている。
「……忙しいヤツ等だ」
とりあえず、研究所の敷地内から出て、もう一度あたりを見回す。
すると、何やらタクシーらしき物が止まる。
「……え? あ? 客じゃないです」
それを言うと、タクシーらしき物は走り出す。
最後までタクシーらしき物はタクシーらしき物だった。
「さて、どうするか……」
この体は飲まず食わずでも生きていけるみたいだし、長旅をしても大丈夫だ。
しかし、結構長い時間旅をしているってのも元の世界に戻ってから大変かも知れない。
「……あの爺さんの作った世界だし、時を止めることだってできるだろ」
楽観的にそう考え、道を歩き出す。
どんどん、追い抜かされていく俺。
……筋力やら体力が落ちてる……。
そう気づいたのは、日が暮れた頃だった。公園らしきところで、俺はベンチに座っている。
「……身体能力まで女にしなくてもいいってのに」
……かなりの長旅になりそうだった。
……美少女戦士海弟の物語は続くのである。
……本人の前で言ったら殴られそうだな。
ってな訳で、科学な都市を海弟が駆け巡ります。
あぁ、ファンタジーを捨てる気は無いので……んまぁ、読者様の予想できない展開になると思います。既に、そうですが。




