第16話新しい国と魔法石 前編
ゼッカスの王、いや女王エイラ・ヘクア・ゼッカス。
その美貌は魔獣をも魅了するとかしないとか…
もちろん、こんな綺麗な女王がいる国は綺麗……とはいかないものの、新設国であるゼッカスには十分なくらいの領地、財産があった。
その中での一番の活躍は魔法石だろう。
魔法石の売買だろう。
魔力のだけじゃなく、アクセサリーなどにも魔法石を付けて普及させている。
これは、王が女だからこそ出来ることだろう。
その王女、エイラはいま退屈している真っ最中だった。
「暇」
「仕事がありますぞ」
「わかんない」
「わかってください」
「ベーレのとこ言ってこよっかな~」
「王都を離れるわけにはいきません」
「転移術は?」
「今、手の空いている魔法使いはいません」
「無理矢理あけて」
「それは……」
「王様命令」
「うぅ」
「あ~、ゴメン。はぁ、仕事やるよ」
「嗚呼、ありがとうございます」
退屈しのぎもままならないままこの日は、時間だけが過ぎていく。
昼ごはんも普通に過ごし、昼からも仕事をしもう5時を回っていた。
「ん?ちょっと手洗いに行って来る」
「行ってらっしゃいませ」
そう言って、出て行くエイラ。勿論、手洗いはトイレのことだ。だが、この女王が手洗いなどに行くはずもなくそのまま隠れて城下へ。
なぜこの時間帯を選んだかというと、今頃ベーレが帰ってきて酒場にいるころだからだ。これは信じられる情報である。(メイドさん情報)
「よし、ここね」
そう言って、入って行く。
いかにも暑苦しいおっさんがたくさんいるが、目的の人物を見つけたのでそこまで走っていく。が、
「あっ」
「いたっ」
「えっと、ごめんなさい」
「まちな」
そう言って、当たった男の連れが言う。
「おうおう、まさかゴメンだけですむと思ってんのか?」
「じゃあコレもあげます」
そう言って、風のイメージをして男に投げつける。
ブォン
「ヌァッ」
「ちょ、兄貴」
「いつつ」
男が起き上がってくる。
さすがにベーレも気づいたようで仲裁に入る。
「ちょっと姫様。ここにきては困ります」
「いいじゃないですか」
「あ~、また抜け出して?」
「はい」
「じゃあ一緒に戻りましょう」
「テメェ、無視すんじゃねぇ……って、ゼッカスの大将軍ベーレ・ハテュ・ガルーク!!」
「なっ、じゃあこいつは」
「ゼッカスの王、エイラ・ヘクア・ゼッカスです」
「なっ、……しつれいしやした」
そう言って男2人が人ごみの中に入って行く。
「さぁ、戻りますよ」
「やだ、まだ見て行く」
「困ったな」
「じゃあ、行きましょう」
そう言って、ベーレの手を引いていく。
ベーレ・ハテュ・ガルーク。
この男は、武官の仲のトップ。大将軍であり、この国の将軍をまとめる立場にある。
エイラとは面識があり、仲がいい。このところ、魔物討伐ばかり行っているので、かまってほしい様だ。
「どこへ行きますか?」
「こっち」
そう言って、引っ張る。
ここで来たのは、古臭い防具屋。
「なんだここ?」
「視察の時に来ました。誰もいませんよ」
「なっ!!」
そりゃ、王女と2人きりなのだ、緊張しない方がおかしい。
「それでですね、話したいことがあります」
「はい」
ドキドキしながらそれを聞く。
「魔法石発掘場までついてきてくれませんか?」
「は?」
「魔法石の原石を見てみたいんです!!」
「はぁ」
「だから、人数集めお願いします」
「ばれて、怒られますよ」
「ばれないようにやってください」
「はぁ」
無茶なんだいを押し付けるエイラに、溜息をつくベーレであった…。