第177話『海弟と特権』
……何が書きたいかわからなくなった……(ガクッ)。
雪山登山から二日……今日はエイプリルフールだったりなかったり……。
俺はいつも嘘を付いているようなものなので昼寝でもして過ごそうかな~と、思ったりしてたらふと試したいことができたので町に出陣することにした。
「世界の支配者の特権を使ってみようということだが……」
「俺は俺で忙しいんだがな……」
影流を誘ってみました。
「まぁ、いいじゃないか。今日はとことん誰かを不幸にしようぜ」
「その誰かが可哀想過ぎる。……やりすぎるなよ……」
それはやっていいという事ですか?
まぁ、影流も良いと言っていることだしやるか。
すると、近くの公園で幼い声が聞こえてくる。
『なぁ、向こうに勇者が居たんだぜ!!』
……少年……夢を見るのはいいけどさ……うん、現実は皮肉だよ……。
「まぁ、いいや。嘘を真に変えてみよう」
「世界を支配してる奴の特権だな」
「よし」
………………。
どうやればいいんだ?
「どうしたんだ?」
「いや、どうやればいいのかな~って」
「……祈ってみたらどうだ?」
そうか、脅すのか。
『世界の兄ちゃん、勇者を向こうに移動させろ。……わかってるよね?』
……俺の祈りは天に届いただろうか……。
少年達に付いていく。
「誰もいないじゃん」
少年の友達が言う。
そこに浮いて……あ、幽霊だから見えないじゃん!!
ちょ、意味無いことを……。
『何で私はここに居るのかしら……』
勇者の苦悩だな。
まぁ、俺には関係ない。
「……できたな」
「あぁ、これ無敵だな」
この特権いいな~。
もう少し遊ぶか。
「あの少年の考えてる事を見てみよう」
…………。
一言で言うならばメルヘン。
…………。
これ現実にしたら楽しそうだな……やらないけど。
「何が見えるんだ?」
「現実逃避が見える」
「……それはまた……あの少年を応援するか」
……そうだな。
あの少年の幸運度(目視不可)を上げてやろう。
『ッてわけで上げろ』
よし、上げた。
「ほら、ここだよ!」
「いねぇじゃん」
「いないよー」
……おぉう……幸運のおかげで勇者見えるようになったけど周りが見えないから変人扱いだぁぁぁぁああ!!
「……何が起こってるんだ……」
「いや、何か……俺のせいだ。少年、ゴメン」
「お節介ってやつか」
……俺もう何を信じていいかわからないよ。
まぁ、少年の幸運を元通りにすればいいか。
「あれ……? 見えなくなった」
『何かコイツ見えてたみたいね』
母さん口が悪い。
「……帰るか……魔族との交渉も続いてるし……」
「何の取引してるんだ?」
「戦鋼って言う金属の取引だ。かなりの強度があってな、あの金属で城を増築したいと思ってな」
「ほぉ、影流も増築を考えてたのか。手に入ったら俺に言ってくれ、一日で増築してやるから」
……錬金サイコー。
さて、帰るか。
☆
「ただいま~」
「お、丁度いい。お前の知り合いか?」
ん? 誰か居るのだろうかと顔を上げる。
「げ……」
「何ですかその顔……」
久々に見た死有さんでした。
いやぁ、今日も綺麗ですね~(エイプリルフールby海弟)。
「何か用ですか?」
「酷い言い草ですが、まぁ許します」
わ~い許してもらった~、って怨まれる理由が理不尽すぎる。
「知り合いみたいだな。俺は部屋行ってるから……精々頑張れよ」
……大丈夫、彼女じゃないから。
エイプリルフールってことで嘘ってことだよね?
「それでですが……」
「何がそれでだよ」
「……」
何その一々説明するのか~って顔。
「現在、影流様の国と魔族との取引があるのはご存知ですよね?」
「まぁ……」
「それで、海弟様にはこちらの利益を上げるため協力していただきたいのです」
「ほっほっほ、嫌だ」
何でだよ。
何で俺なんだよ。
青空とかだったら笑顔で承知してくれるだろ。
何で俺?
「迷惑は承知なのですが……、どうしてもお願いしたいと!!」
「……無理」
「それは何か都合が悪い、もしくは予定が入っているという事ですか?」
……そうだなぁ……うん、そういうことにしておこう。
「そうだ」
「何の予定ですか?」
「エイプリルフールを楽しむという……」
皆~嘘を付け。俺が現実にしてやるぞ~(嘘付き殲滅大作戦)。
「えいぷりるふーる? 何ですか?」
……え、コイツ等こっちで長い間住んでたんじゃないの?
知らないの?
「エイプリルフールとは、多少の罪は不問になる日だ」
……多少の罪=嘘。
……うん、意味は同じだよね。
「ほぉ、私も協力しますよ」
「……いいよ、魔族だし」
「……協力しますよ」
……この人、監視する気だ!!
「い、いや……いいよ。用事あるでしょ?」
「いえ、海弟様も大変そうなので」
……クッ、最終手段。
「人数は揃ってるからさ」
「人数?」
「そう、えぇ~と」
……誰か思いつく奴……。
「そう、青空とか水都とか、佐藤くんとか」
……甘い物繋がりで佐藤くん思い出しちゃったよ。
「……そうですか。残念です」
……え? 何この展開!! 先が読めなくなってきたぞ……。
「……それでは……」
そう言って外へ出て行く死有さん。
……なんだか取り返しの付かないことをしてしまった気がする……。
「……ん?」
そして、感じる視線……クッ監視だけはすると言うことか……。
こうなったら青空と水都……と佐藤くん(下の名前知らない)を集めなくては!!
「ん? おぉ、携帯携帯」
ポケットの携帯を手に取る。
『海弟~今暇?」
「ん? 誰?」
……何処かで聞いたことある声だな。
『何気に酷い……。水都だよ』
……あぁ、今話題の。わからなかったぜ。
「何かあるのか?」
『今うちでパーテ―――』
……金持ちっていいなぁ~。
「……しまった!!」
再びなる携帯。
「もしもし?」
『何か扱いが酷い』
「気にするな。それで、パーテ……何だ?」
パーティのお誘いか?
『あぁうん。パーティの準備してるから手伝って』
……俺にはいつ春が来るんだろう……。
「二人ほど呼んでもいいか?」
青空と……佐藤くんを呼んでこの用事があったように見せかければ俺の自由は舞い戻ってくるはずだ。
『……無理』
「……どうして?」
『……』
……ん? どうした? 何が起こったんだ?
『あぁ、ゴメン。今父さんが来て、何か―――』
……おい、切れたぞ。
何か危なそうだな……。
まぁ、一応……。
「あぁ~、水都が不参加か~。でも丁度枠が二つに減った事だしいいかな~」
……死有さんに態と聞かせとこ。
「……気苦労はいらないんだけどな……」
まぁ、今から町へ行くのも癪だから家に居よう。
……おっと、鍵をかけておかないとな。不法侵入者が来るといけないし。
『……チッ』
……窓を全部しめとこ……特権使用して。
バチンと鳴る音が聞こえてくる。
そして
『イツゥッ!!』
……ゴメン兄さん。
しかし、これで死有さんから解放された。
「……寝るか」
俺のエイプリルフール終了。
……何故死有出したんだろう……。
……海弟の弱点だしてやる(ニヤニヤ)みたいな事考えてたのかな……。
うぅむ……謎だ。