第151話海弟と好敵手
好敵手とは同等の相手と言う意味です(確か)。
……海弟と同じくらいの実力を持った相手?
出てくるわけないじゃないですか。
俺が山賊さん宅へ行く頃にはもう夕方になっていた。
俺の友達マエティー君も困っていたらしく、場所まで教えてくれたので迷いはしなかったが、着くまでに時間が掛かった。
『鏡』では一度行った事がある場所、しかもそこを連想しなければいけない。
なので、時間が掛かると……。
「……問題です」
「オレッチが答えるの?」
「今の俺の状態は?」
「……瀕死……かな?」
……何度も言うけど、俺の体力は平均並み。
山賊さんが平気で山道を歩けても俺じゃ無理なの。
しかも、魔法使いだから魔法使うたびに体力が天国へ飛んでいってしまうわけ。
カムバックスタミーナ!!
「最後の関係ないような……」
「あぁもう、何処かからスタミナを吸い取らなければ……」
それから、そういえば飛べるじゃんと言うのを思い出し、世界と次元と地面を繋げて飛ぶ(飛んでいる感覚)。
勿論、高所に居ても吐かない。
「……何か色々魔法の限界を超えてるんだけど……」
「気にしたら負けだと思え」
「負けでいいから教えて!!」
「少なくとも俺は、敗者に手を伸べる奴じゃない」
「教えてー」
そう暴れたので二回ほど落として恐怖に晒し、寸前で受け止めると言う単純作業をし黙らせる。
しょうがないんだ。石が無かったから。
興奮状態のマヤをなだめながら飛ぶ事十分……いや、五分……かな?
山の緑の中に一つ茶色の洞窟が見える。
「……撲滅」
俺はチキンなので遠くから膨大な魔力を使って撲滅する。
勿論、交渉とかする気はないのでこれでOKなのだ。
「……しんじゃうよッ!!」
「……ほら、あれだ。山賊だから」
「何で山賊だから爆発!!」
……二度目だから大丈夫だろう。
うん、きっと。
逃げ……もとい、戻って報告しようと後ろを向くが咄嗟の判断で地面に叩きつける。
……自分の体だを……。
「こんな事なら当たっておけばよかった……」
まぁ、毒が塗ってあったみたいだから無理だけど……。
残念ながら毒の治療はできない俺は(攻撃専門なので)魔法を世界と次元と地面を繋げた状態から次元と地面だけに変え、重力を半端なく受けて落ちた。
たぶん、マヤは庇ったので一応は大丈夫だろう。
気絶はしているみたいなので今のうちにおんぶして遠くへ逃げる。
「ったく……さっきので死なないとか化け物だろ……」
「ええ、アナタと同じ『化け物』ですよ」
突然殺気が俺を襲う。
それでも体は反応するようで、小さな火の弾を咄嗟に殺気の方向へ放つ。
「この世界は柔い……そう思いません?」
炎に包まれている。その『化け物』が言う。
言っている意味がわからないが、今は理解する時間じゃない。
逃げる時間だ。
って言うか、復讐しにきたのに……。
「あぁ、待ってください。お礼ですよ。お礼」
「金貨三百枚。もしくは、甘い物フルコースで」
「……貪欲ですね……」
そう言って、懐から一枚の銀貨……見たこともない硬貨を渡される。
「これは、魔法道具です」
「……いらないから」
とりあえず、返品する。
「いえ、受け取ってください」
笑顔で言ってくる。
……残念ながらこちらにも意地と言う物があるのだよ!!
「いらないからッ!!」
「お礼を受け取ってもらわなければこちらとしても―――」
とりあえず、俺は振りかぶり。
投げる。
ひゅ~~~~ぱさっ。
木の上に乗った。
「……何てことをしているんですかッ!!」
「もう、もらったんだ!使い道は俺の自由だ!」
そう、自由なのだよ。
この騒ぎで目覚めたのか背中のマヤが起きる。
「……ねむ……」
「えぇい、こうなったら。実力行使だ!第三『炎鎧』」
ぼぼぼぼぼ。
「……アチィィィィッッ!!」
「炎よ!!」
右手から炎を噴出させ、相手に当てる。
今度ははっきり見える、何か異質な壁に阻まれて攻撃や熱気を防いでいるのだ。
「こっちもはっきり見て!オレッチが火傷しちゃう!」
「……柔い世界で育った人間が!本物の『化け物』を見せてやろう」
「お前みたいな『化け物』何て何回も相手にしてるから今回も指先だけで倒してやろうじゃないか!!」
「オレッチを!オレッチを助けてよ!」
一気に熱気が増す。
そして、第一撃。
拳を前に突き出し、相手の頬を殴る。
バシギッ。
俺の拳は頬に当たらなかった。
だが、俺には衝撃がきている。
後ろからだ。
前に、しっかりと『化け物』は見えるのに。
……どうしてだ?
そのまま、前のめりに倒れる俺。
「……もう少し、封印されていようか……」
呆れた声で去って行く『化け物』。
「……どうなって―――」
後ろを振り向いて気づく俺。
「おぉ、炎のネズミ?……と言う奴か?」
「オレッチに……水を……」
とりあえず、治癒してあげました……。
しかし、俺が気づいていない間にマヤを攻撃するとは……『化け物』はやはりやる事が違うな。
「卑怯な奴め」
「……も、燃える……」
何だかうなされているマヤ。
わかっている、すぐに仇を討ちに行ってやる。
俺はそのまま洞窟へと向かった。
海弟と同じくらい『化け物』なのです。
『化け物』として同等なのです。
『化け物』の理由は後々説明します。