第150話『○○』を潰す
『領主』を潰す ×。
はい、考えてみましょう。
外交問題とか難しい事はわからないが、とりあえず俺は容疑者にすらならなかった。
……って言うか、逃げたし……。
朝になる前に町に忍び込んだので、誰にも顔を見られていないし、森の中の師匠の家で寝ていたので町に居る奴は誰も俺たちの存在を知らなかったわけだ。
と言う事で、俺たちは無罪。
「……完全犯罪……万歳?」
「反省しろッ!!」
そう言って、拳と脚を同時に突き出してくるマヤ。
とりあえず、急所を守るように防御して、二つの攻撃を受け止める。
「……オレッチ寝ていい?」
「あぁ……俺も眠い……」
早寝早起きはきついね……精神的に……。
だが甘かった……。
俺たちが、小屋へ帰ると……。
「おいッ!!」
山賊さんが待ち構えていました……。
その数、十……くらいか。
魔法使うのも面倒だし……。
腰に手を当てる。
クナイ投げよ……。
シヒュヒュヒュッ。
連続して、投げるがまだ威嚇。
チラリと山賊の顔を見たが少し怖気づいているようだった……。
「テメェ……昨日はよくもやってくれたな!!」
先頭に居た汚い袋をそのまま着たような奴が吼える。
とりあえず無視してもう一度クナイを投げる。
……俺はとことん冷徹になれる人間です……たぶん。
「ひ、ひぁあああ!!」
「撃退完了……」
「か、かなり恐いです……。オレッチも逃げていい?」
「……今の俺ってそんなに恐かった?」
山賊を追い払った後、玄関の扉を開けてから聞いてる。
「うりゃぁあああ!!」
うりゃぁああ?
グシャッ。
……あぁ……腹にナイフが刺さっています……どうしよう……。
とりあえず、意識を手放して自然治癒に任せよう……。
らしくない考えと共に俺は意識を手放した。
……だって、眠かったんだもん!!
☆
目が覚めて起きると、そこは玄関でした。
誰も運んでくれなかったようです。
悲しいです……はい。
「って、傷口もそのまま……治しておこう」
とりあえず、魔法で治し立ち上がる。
「……マヤは?」
キョロキョロと周りを見る。
そして、殺意を抱く。
「HAHAHA、自分だけベッドで寝るなどという不届き者には正義の鉄槌を……」
ボカッバキィィッ
……ベッドの脚が折れた……。
「オレッチの腹がぁぁぁぁああ……。何故か背中もぉぉぉぉおお……」
……俺は何も知らないよ?
立ち上がるマヤ。
……さて、”正義”の鉄槌は下したから”俺”の鉄拳を食らわしてやろうじゃないか。
「ぼ、ぼうりょくはんたぁ~~い」
「俺は世界に縛られないぜ!!」
ボグググ……。
「お花が綺麗……。あ、あんな所にも……」
「何か乙女になってるぞ!!……馬鹿は治らないと言うしとりあえず諦めよう」
「努力してよっ!!」
「あ、目覚めた」
いやぁ……であって数日の人間の為に努力できる人間じゃないからなぁ……俺は。
「オレッチね、さっきの山賊を捕まえたんだぞ!!」
「……処刑してくるか。何処に居る?」
「逃げられちゃった♪」
……処刑するか。
「イダダダダダッ!!」
「えぇい、キサマなど処刑だ!!」
ヘッドロックを解き、マヤを見据える。
「で、どっちに逃げた?」
「寝たから忘れ―――ちょっと待って!三分で思い出すからッ!!」
慌てるマヤを見ながら俺も考える。
まず、俺を刺したのは山賊の一人と言うことでいいだろう。
待ち伏せとは卑怯な……まぁ、マジメになるのは騎士とか侍とか何か色々だけでいいけど。
……と言う事で、久々に騎士としてマジメに山賊を処刑しましょうか。
国に縛られない自由部隊の隊長こと俺だ。
レティナの国王こと俺の友達に許可をもらうだけで捜索&消去はできる。
「うぅ……あ、あっち……こっちかな……でもあっち……」
コイツの処刑は確定済みだ。
「さて、今回の敵は国一つでもエルフでも宇宙人でも生物兵器でもない……山賊だ!!」
「はい?」
「ッてわけで、いつもより早く終わらせるぞ!」
「でも、今、夜だよ?」
……朝帰って来たから……いつまで寝てたんだ……。
「まぁいい。山賊から全てを盗んでやろうじゃないか!!」
「な、何かカッコいい!!」
「HAHAHA、だって俺だからな!!」
言っている自分が一番意味がわからないぜ!!
「そうと決まれば、捜査とか色々(しょけい)の許可を取ろう。一度、レティナ王都に帰るぞ」
「おぉー」
鏡を取り出す。
コイツには初めて見せるが、別に驚いていなかった。
……それはそれで悲しい……。
一気に城の内部に入り、マエティーの魔力を感じ取りまた転移。
許可証を書いてもらってそのまま『鏡』で小屋に帰る。
「……ここまで能力使っているのもな……」
「オレッチなんか変なのに関わっちゃった?」
……俺に聞くな。
正解。
『山賊』を潰す。
……久しぶりに海弟が出血した……。
何か、自分がショックを受けている……何故だろう……。