第135話苦渋の選択
さて、平和は遠いのか……。
さて、俺の前には苦渋の選択がある。
まぁ、選択は絶対にしなければいけないのだが、少し迷う。
「ここで、時間を巻き戻したらバレンタインが……」
当然、バレンタインだけのチョコレートの発売も遠のく。
いや、ずっと待っていた俺としてはもう長引かせて欲しくない。
そう思う。
「いいですか?」
「ちょ、ちょっと待ってくれ……」
どうせこのままにしても異世界が見つかったとか言って向こうは騒いでいるからチョコなんて買えない。
わかっているが、期待してしまう。
どうしたものか……。
「あ、水都。ケーキ。ケーキの約束」
「……覚えてたんだね」
海弟はケーキをゲットした。
「ん、巻き戻しOK!!」
「……では……」
向こうの世界へ行く地味母。
うむ、ショートケーキもいいがモンブランも……ん?待て。
「この栗はどうしたんだ?」
「似たような食材があったので使いました」
「……まぁ、いいか」
後々、これで困る事になるのだが今の俺は知らなかった……。
☆
「ゴメン、あれ腐ったトトルだって」
「ぐあぁああ……。なんてことを……」
ケーキを食べてから一時間後、衝撃の事実と共に腹痛が俺を襲う。
とりあえず、作った水都を睨む。
「腐ったら黄色になるんだね。初耳だよ」
「知るか!トイレの常習犯になったらどうするんだ!!」
「トイレの常習犯って何!!」
知らないから。
俺は何も知らないから。
だから、会話に関わってない君達は冷たい瞳で僕を見ないで。
「だが、今は腹痛……」
「苦しそうだね……」
「クッ……」
痛みじゃない違和感って嫌だね。
痛みの方が何割かマシだ……。
「お前にもこの苦しみを!! 第二『流亜』」
「へ?つぅ……」
クハハハハ、この違和感を味わうがいい。
とまぁ、自業自得だ。
「痛いよ。酷いよ……。死んじゃうよ……。何でこの痛みに耐えられるのさ……」
「ちょ、そんな痛いの!!」
俺が人外だと言いたいのか!!
フフフ、フハハハ。
「この苦しみを城中に!!」
使用する魔力を上げて、『流亜』を使う。
元々、痛みなどを外へ逃がす魔法なので場所を指定して痛みを伝えることができるのだ。
「……迷惑だよ」
「SI☆RU☆KA!!」
「は、発音が!!って、大きな声を出さないで……」
なんだろうね。
この廊下、こんなに長かったっけ?
「と、トイレを目指せ」
「な、長い……」
もはや、倒れこんでいる人を尻目に俺は歩く。
そう、天国を目指すんだ!!
「だ、だあぁあああ!!」
「ら、ラストスパートに!!」
隣の俺より少しでかいくらいの男がラストスパートにでる。
そして、あと数センチ。
「い、行けぇええ!!」
「あぁあああぅうぅぅぁああ~~~」
何故だ……何故、届かなかったんだ……。
そこには一つの死体があった……。
「誰かわからないが……散ったな……」
「うん」
ゴメン、俺、掃除はしないよ。
臭いから。
「ダメだ。臭いが誘発を……」
「何で、皆を巻き込むのさ!」
「だって、楽しいから」
簡単じゃないか。
「あ、後三歩……」
「後……二歩……」
ふふふ、ん?
「……ゴメン、後二十歩くらい増えた……」
ここ女子トイレだ……。影流め……余計な物を作りおって。
俺たちが来る前は男女共用だったのに……。
「わ、私の苦しみは続くというの……」
何か、気持ち悪い笑みを浮かべる水都。
勿論俺は、関わり合いになりたくないので逃げ……もとい、退散する。
「ふぅ……、ここからは一人だ。さぁ、魔王の城へ突撃だ!!」
薄暗いここは、掃除だけはされているのか床は淡い光を反射し、俺に対して「僕達に漏らさないでね」と、訴えかけているようだった。
「うがぁぁああ!!」
俺に電撃が走る。
コレは、足から尻に向かって激痛を伴う―――
「足つった……」
う、動けないだと……。
い、いや待て。
大丈夫なはずだ。
「自由に舞う風、重ねしは鏡 『聖曲 風鏡』!!」
さ、最後の踏ん張りだ!!
足に風を付け高速移動。
そう、そこにあるのは便器!!
「うりゃぁああああ!!」
風でズボンを膨らませ、そのまま脱ぐ。
そして、便器に着地!!
「って、足からじゃない!!」
……あぁ……終わった……。
ゴメン、もう一回時間を戻してくれないかな?
できれば記憶に残したくないんだ。
あ、無理?
うん、わかってたよ。
世界単位じゃないからね。うん。そうだね。
じゃあ、力ずくで行くよ。
次から、日常編(?)に入っていきます。
バレンタインもやりますよ。(時間を巻き戻したので)
ふふふ、カップルが生まれるかも知れませんよ?
ま、ふざけすぎてだいぶ先になるという事態も考えられますがね。