第117話君は何故生きる? 月姫編
伏線に伏線入れてどうしたいんだろう……。
「ひっぐ……うわぁあ」
涙をぽろぽろと流す少女は、一人の少年を見ている。
少年は、少女に虚ろな目を向け最後の言葉を発した。
それは呪いの言葉。
それは呪縛の言葉。
それは復讐の言葉。
それは未来への言葉。
「約束……だよ?」
少年は、動かなかった。
それは、死を意味する唯一の反応だった……。
☆
「ひっ……」
「どうしたんだ?」
「いや、何でも無い……」
涙を拭う水都。
俺は、それを見ているだけだった。
「海弟、事態は深刻だ」
「……勿論、守る方を選ぶよ?」
「まだ、何も言ってないんだがな……」
甘い物が滅ぶなんて許せないって言う、不純な動機なんだけどね。
向こうの住人がこっちに来て、こっちの住人が向こうを助けようとする。
「当たり前なんだよ」
「面白い事言うな。倒せるか?」
「無理」
「くははっ、言うと思ったよ」
「一つ言うと、俺は修行はしないぞ?俺の魔力量はもう修行じゃ増えないからな」
「お前の師匠も言ってたよ。だが、まだあるだろ?」
「俺に、あの村に行けと?」
いまや、一国じゃねぇか。
「いや、それも考えたんだが……今回はもっと早い方法を取る事にした」
「何だ?」
「魔力遺伝子を使う」
「思いっきり毒だな」
「水都に」
「「は?」」
何を言ってるんだろうか。
影流は仲間を減らすって言っているようなものだぞ?
「あぁ、勿論、海弟にも……な」
「俺はまだ死なん!」
「いや、時期に死ぬぞ?」
「何を言って……」
顔は笑っているが、目は真剣そのものだった。
俺……死ぬの?
「取り合えず、話をしてやろう。お前の師匠から聞いたものなんだがな」
俺が要約しよう。
師匠は昔、異世界から人間を召喚したことがあった。
師匠だってやんちゃしてたんだろう。
そして、その時のが現在の勇者である母さん……なのか……。
強くなった母さんは、魔王を倒しに旅に出る。
まるで桃太郎だな。
途中で仲間になった二人と共に魔王城へ行ったが、中は空だった。
そして、国へ帰ると、歓迎された。
本当にこれでいいのか……。
そう思った母さんは責任者の案をだし、師匠の元へ行った。
そして、一連の話をしたらしい。
ここからが重要だ。
俺の母さんは、魔王を倒した奴が何処かにいると考えた。
ならば、自分の力量が及ばぬ世界。
つまり、魔界とこの世界を行き来できる者だろうと。
そして、見つけた魔族に母さんは殺された。
あくまで仮定の話だ。
そして、俺が死んだ時のように地味の母さんが現れ魔界へ飛ばした。
俺みたいに脱走はしなかったんだな。
死者がこの世にいる事は許されない。
いくら神の名で世界から騙そうたって無理がある。
だから、死者は世界に嘘だと告げられたらそこでおしまい。
という事は、今、向こうの世界にいるであろう母さん達はもう何処かへ逝ってしまったということだ。
「……嘘だ……」
「あぁ、まだ仮定だ。十分嘘の可能性はある。っていうか、お前の悪運があれば嘘にできるだろ?」
「……簡単に言うな……」
「まぁ、無理なら……やらなくてもいいんだぞ?」
「敵が俺が死んでいることに気づいたら俺はどうせアウトなんだから、少しぐらいの毒はいいだろう……ってか?」
「まぁな。水都のほうは……」
「俺は、苦痛だけで済むが、水都は何故だ?」
「人間じゃないから……だよね?」
「あぁ……」
……人間じゃない?
混乱だな。
俺の脳内は混乱している。
現実を受け止め切れていない?
馬鹿な。
だってそうだろ?
現実があるならそれを見ればいいだけの話なのに。
「月人だな……。いわゆる宇宙人か?」
「私は地久産まれの地球育ち、だから地球人。でも月人だよ。だから幻影を使えるんだよ」
よ~し、俺の頭回れ。
この危機的状況を回避しなければ。
……何だ、簡単じゃない?
「何故、俺達はここにいるんだ?」
「そりゃぁ……何故だ?」
「誰かが向こうの世界に攻撃を仕掛けたから……じゃないかな?」
「俺も思った。だからだよ。何も真っ向から勝負する必要なんてないだろ?」
不死身が住む世界で戦えばいいんだろ?
簡単じゃねぇか。
「なぁ、五式だっけか?『再影瞬壊』ってのは一度その物体を壊して再構築するんだろ?」
「うん……まぁ、そうだけど……」
なら、いけるな。
誰だか知らないが、敵も可哀想だ。
俺を敵に回さなきゃ良かったのによ。
「クククク」
「お前……魔王みたいだな……」
「知略は結構得意だぜ」
「本当に魔王みたいだね……」
「ステージの用意をしなきゃな。師匠にも世界は広いって事を教えなきゃな」
俺はアニメとかのヒーローみたいに正面から堂々と戦うなんて戦法はお好きじゃないのさ。
外道だろうが、なんだろうが、やってやろう。
「特殊魔法『鏡』よし。これにアレ使え。場所は……あぁ、魔力が一番強い場所。ここだ」
「何か感覚的だね……、まぁやってみるよ……」
集中しているのがわかるぐらい静かだ。
「幻影彩光 五式 『再影瞬壊』」
俺の鏡が崩れる。
そして、向かった先は―――
☆
力加減を間違えちゃったのかな?
もう、地の紋章を倒しに行く事になっちゃったよ。
でも、楽しみだなぁ~。
きっと、濃い血がドクドクあふれ出てくるんだろうな。
「ん?アレは何かな?」
一枚の鏡?
空中に浮かぶ?
「う、うわぁあ~」
何だかわからないけど、触ったら吸い込まれて……。
「ここは何処だい?」
「教えてやろうか?」
「ん?誰?」
「クハハハ、とりあえず今は魔王と名乗っておこうか!」
「魔王?」
あ、君は……。
僕も楽しめそうだよ……。
でも、ここは何処だろう……。
敵に有利な地形で戦うのか。
でも、面白そうだからいいよ。
「世界を騙すのはもう無理だよ」
とたん、口を吊り上げる彼。
君は何を考えているの?
僕には理解できない。
僕に何の恨みがあるの?
僕を倒して英雄になりたいの?
それは、違うよ。
僕は正しい事をしているんだから。
「君が庇ったらから、君も死ぬことになったんだよ。そして、月のお姫様も……ね?」
「残酷だなぁ、本当に気持ち悪い。だったら、殺してみろ。まさか、師匠もあれほど強引とはね……。いやはや、身が焼けるほど痛いよ」
「師匠?」
君は何を言っているんだい?
君は何で笑っているんだい?
君は何で剣を構えているの?
君は何でそんな目で見るの?
君は何で僕を睨むの?
「君は何で生きているの?」
「甘い物が食べたいから」
「え?」
え?え?え?え?え?え?え?え?え?え?え?え?え?え?え?え?え?え?え?
どうしてさ!
君の思考は理解できない。
「世界を騙して、何かしたいことがあるの?」
「まぁ、落ち着け。お前は俺の大切なお菓子を消そうとした。その罰だ」
「意味がわからないよ!」
僕に何を言おうとしてるのさ!
僕を壊したいの?
僕は何をすればいいのさ!
「取り合えず、壊した国十個。名産の甘い物の数だけ殴らせろ。その後、しっかりと殺してやる。焼いて骨になるのがいいか?地面に埋められたいか?」
「君は、僕を馬鹿にするの?僕は……僕は……僕は……君を殺したいよ……」
「糖分が足りてないな。こりゃ、重症だな」
君は、僕を怒らせた。
君は、僕を怒らせた。
君は、生きる価値の無い人間だ。
ヘイ!!
海弟は外道だZE!!
ククク、海弟の魔王ステータス……。
今回の相手は強敵ですよ?
たぶん海弟じゃ勝てないかな~。
……真っ向から戦ったら。