第92話影流と青空とキモ笑いさんの決戦
二話更新。
影流視点。
青空陰薄。
「うぅ~ん」
俺が目を覚まさすと、見知らぬ光景が広がっていた。
わからないところだが、隣に青空がいることから、何か海弟関係だとわかる。
ということは、今回は俺が巻き込まれたのか……。
「影流さん、ちょっと」
「え?」
前に、海弟についていた少女と妖精に出会う。
たしか、地味と吉って名前だったと思う。
一度、海弟のネーミングセンスを正してやる必要があると思う。
~~説明中~~
「それで、俺達はここにいるのか?」
色々と、二人に聞いた俺はここが魔界だということも、戦争に巻き込まれたということも知った。
まぁ、そっちは海弟一人で何とかやっているみたいなので、こっちはこっちで自由にしていよう。
「あれ~、ここどこ?」
目を擦りながら青空が起きる。
取り合えず、簡単に説明した後、城の探索に出る。
剣が用意してあったので、それを腰に装備してから部屋を出た。
二人は海弟のところへ行ったが、大丈夫だろうか?
「広いね……」
「かなり頑丈そうだな……」
一風変わった城だが、海弟達が召喚された方の城と素材は同じようだ。
しかし、強度が全く違うであろうそれに俺は驚いている。
「一周してみるか」
「そうだね。体験してみるのが一番だよ」
そうして、俺達はこの城を探索することになった。
☆
「ホ?ここは、どこでしょうか?」
全身真っ白のキモ笑いさんが目覚める。
ひんやりとした空間に、ただ一人イスに縛られて座っている。
「……捕まった……というところでしょうか?全く芸の無いことです。こんなもので私を止められるとは……」
ジリリリリリ
魔力を感じるセンサーがあったのか、警報が鳴る。
縄を解かれたら鳴る仕組みになっていたようだ。
「なるほど、そういうことですか」
だが、キモ笑いさんが縄を持つと復元される。
それと同時に警報も止む。
「この程度の治癒……どうってことありませんね」
そう、普通は干渉しないものにまでキモ笑いさんの治癒は干渉する。
だから、将軍まで上り詰めることができたのだ。
武器に使えば耐久度が上がり、食べ物に使えば元に戻すことができた。
まぁ、食べ物を戻した時は、その肉が動物になって大変だったが……。
「それでは……ハァッ!!」
武器を持っていないわけではない。
キモ笑いさんの武器は透明な小刀だ。
魔力に当てられると透明になる仕組みで、この世界ではほぼ最強といえる。
「ふ、やわな城です」
影流がすごいと言った城もあっけなく壊されてしまった。
そのまま上の階まで上がっていく。
そして、一つの部屋のドアに手をかけた。
☆
次々と兵士が倒されていく様子に、青空を庇いながらその部屋から移動する。
さっき、メイドに案内されこの部屋に来たのが、運が悪かったようで、脱走犯という奴に見つかってしまった。
それも、強い奴らしい。
武器は見えなく、手を振ると鮮血が飛び散り四散する。
できるだけ、青空には見せたくない光景だ。
「逃げさせませんよ」
後一歩で、一気に走って逃げられたのだが、止められてしまう。
冷や汗が出る。
「……庇っているのですか。ホホホ面白い。こっちに来なさい。さもないと……ホホホ」
一瞬だけまじめな顔になり、俺の横を通過する。
だが、チャンスだ。
取り合えず、俺があいつの相手をしている間にここの居る皆には逃げてもらうことにする。
そうすれば、もう死者はでないはずだ。
それを、短く説明して、この城の人たちを避難させてもらうことにした。
俺は、ついていく。
着いたのは、ただただ広い空間だった。
飾りなどは何も無い。
何故ならそこは屋上で、空が見える。
「ここで、何をするつもりだ?」
「決まってます。決闘ですよ。貴方は強そうでしたしね……」
俺の得物が剣ではないのだが、ここは仕方がない。
剣を中段で構える。
「珍しい構えですね。では、始めるとしましょうか」
それから無言になる。
大きな動きはなく、ただじりじりと身を少し動かすだけだ。
ジャリ
初めて音がする。
それと同時に、二人とも前に突っ込む。
「たぁああ!!」
「はっ」
見えない武器の正体は剣だろうとわかっていたので、大まかにずらせる様に相手の手元から力強く剣をぶつける。
相手は蹴りを放ったが、俺は右腕で防ぐ。
「甘いですね……」
突然左手に衝撃が襲う。
その後、鉄の擦れる音がして始めて剣が手元にないことを気づく。
「チッ……」
「舌打ちしたい気持ちもわかりますが、死ぬときぐらい楽しげな表情にしませんか?」
「狂ってるな」
「私は、人の叫びというものを多く聞きすぎましたからね。そういう仕事なので」
どんなことをやっているかは知らないが、俺を殺そうとしているのだ。
だったら、本気で迎え撃つまでだ。
股を閉じ、右手を開いて前に出し、左手を腰から突き上げるように構える。
力が拳に行き渡る。
「丸腰で戦うのですか?バカですか?ここで楽になればいいものを……生憎貴方は魔道を使えないようですし……」
わからないが、魔道というものはこの世界の武道らしい。
「残念だが、俺は普段自分の拳を使って戦ってるんだ。だから、お前に心配される必要は無い」
「……拳一つで?ホホホホ、愉快なことをいってくれます。楽しいですよ。……それならそれで相手をしてもらいましょうか」
それと同時にダッシュし、剣を突き出す動きをする相手。
だが、遅い。
「はっ」
左手を軸にして腰を落とし、相手の足を取り転ばせ、蹴りを三度打ち込む。
この世界では武道というものが発達していないようだ。
似た魔道というものはあるらしいが、それも魔法の副産物程度らしい。
「ググ……やりますね……」
だが、俺の与えた傷は瞬時に回復する。
魔法か……。
「ならば、一撃で終わらせる」
「できるものならやってみなさい」
鳩尾に一発入れてやればいけるだろう。
そう思って、多く見積もった蹴り三発を鳩尾に入れたが痛みに慣れているようで効かなかった。
俺も正直一発で倒せるとは思っていない。
だから、俺の体力の続くまで相手の魔力を減らすことに徹することにした。
何度も拳を打ち続けている間に相手の武器の形がわかってきた。
忍者刀のような形をしている。
「はぁ……はぁ……やりますね……」
ニヤリと笑う。
俺は、汗もかいていないが、比較的疲れている方だと思う。
「降参しないのか?」
「体力の差=決定的な勝ち負けではないんですよ。どうやら、その動きはこの世界のものではないようです。ならばそれに対応していきましょうか」
そう言って、前にダッシュする男。
だが、見える。
「なっ!」
僅かに発光していた右手が城の石に触れることで、そこから無数の石でできた尖がった角ばりができる。
「ふ、成功のようですね……」
地の魔法を使う相手か……。
だが、そんな事どうでもいい。
今は自分の足場探しで手一杯だ。
カラン
「!!」
ここで終わり……。
そう思ったが、実際には違った。
いつまでたってもこない浮遊感に手を伸ばしてみると、さっき転がった剣があった。
俺はそれを背負い、一直線に相手に向かう。
「ホホホ、何をしても無駄ですよ」
「それは、どうか……なっ!!」
背中から取り出した剣を一気に振りかぶり……喉元に向かって投げる。
聞きたくも無い音がし、何かが倒れる音がする。
「……海弟の役にたったか……」
実際にはわからないが、そんな気分だ。
見たくもない光景が目の前にはあるが、俺は目を背けずに海弟がこの場所に来るまでここに居た。
影流にも主人公属性が……ある……のかな?
わかりませんね。
残りは、青空視点の閑話だけですね。
短いですが……。
今日中に更新しましょうかね。