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女王への謁見

「うぅ、ちょっと泣いちゃった」


 元の服に着替えた僕は、エマさんとモチポちゃんに連れられて、赤絨毯の敷かれた長い廊下を歩いていた。


「着替えただけで大げさな。王族貴族の方は毎朝毎入浴の度にメイドに着替えをさせているのですよ」

「もうお婿にいけない……」


 僕が両手で顔を隠しながら呟くと、エマさんがクスリと笑った。


「大丈夫ですよニンゲン様。貴方様がお婿に行けないなど、この世界ではありえません」

「?」


 言葉の意味が解らなくて顔を上げると、目の前に鷲の彫刻が施された、巨大な観音開きの門が構えていた。


 門の両脇にはジャガーの耳としっぽを生やして、ゲームに出て来るようなオリジナル軍服を着た女の子が腰に剣を挿して佇んでいる。


 いまさらだけど、エマさんもお尻のあたりから馬の尻尾が生えている。


 モチポちゃんのしっぽは、ウォンバットは尻尾が退化しているから、スカートの中に隠れちゃっているのかな?


 ジャガーの兵隊さんを見て、僕はだんだん記憶が戻って来る。


 あの戦場。


 コスプレした女の子達が乱闘をしていたけど、なんなんだろう?



 でもモチポちゃんの耳はカチューシャや付け耳なんかじゃないのは確認済みだ。


 僕は、この門の向こうに答えがあることを期待した。


「ニンゲン様。どうぞ、奥へお進みください」

「ください」


 エマさんとモチポちゃんが左右の門を押し開けると、そこはお伽の国だった。


 いわゆる、王様との謁見の間。


 体育館のように広くて、天井は遥か頭上。


 門から真っ直ぐ伸びた赤い絨毯の両脇には、ハルバードを手にした勇ましい顔つきの女の子達が並んでいる。さらにその女の子達の外側には太い柱が天上へと伸びていた。


 壁にも、柱にも、天上にも金細工、銀細工を使った装飾や、巧みの技であろう彫刻が施されて、近衛兵であろう女の子達の軍服も、そとにいた子達とは明らかに違う。華やかでありがながら機能的な服装は、一人一人がこの部屋の主を飾る装飾品の一部だった。


 エマさんに連れられて絨毯を歩くと、彼女達が皆、ライオンの耳と尻尾を生やしているのが解った。けど、みんな顔が少し子供っぽくて、中高生に見える。


 そして赤絨毯の伸びるずっと先、部屋の奥に据えられた玉座。そこに座るのは、きらびやかでありながら、華やかなドレスをまとった一人の少女だった。


「姫殿下。ニンゲン様をお連れ致しました」


 エマさんと、それに合わせてモチポちゃんがかしずいた。


 僕は空気を読んで膝を折った。すると、周囲のライオン少女達が一斉にざわついた。


「ニニ、ニンゲン様! 私なんかに膝を折らないでください!」


 その女の子は玉座から飛び起きて、慌てて俺に駆け寄って来た。


「え?」


 姫殿下なんて呼ばれているから、彼女はすっごく偉いんだと思ったのに、その彼女が申し訳なさそうな顔で僕の腕に触れた。

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