事故
僕は川の水位が下がったのを確認して、声を上げる。
「てったーい! 撤退してー!」
互角の戦いだったのに、みんなは僕の合図に従って一斉に撤退。
川を渡って逃げ始める。
水位が下がったのは、川上のほうを水を、大岩で塞いだから。それを担当する子達には、一〇〇数えたら大岩をどかすように言ってある。
漫画やアニメだとありがちだけど、鉄砲水で帝国軍を押し流す作戦だ。
僕の思惑通り、みんなは僕の横を通り過ぎて撤退していく。
トリケラ部隊が川に入った。
川上のほうを見ると、鉄砲水が押し寄せて来たのが見える。
よし。と僕が小さくガッツポーズを作ると、僕の目に一人の少女が映った。
逃げ遅れたトカゲ少女が、まだ川から上がれずにいた。
このままだと、トリケラ族に追い付かれてしまう。
「まずい!」
僕は慌てて川に飛び込んで、女の子を川岸に上げた。
後ろから迫るトリケラ族から逃げようと、僕も川岸に上がろうとする。
けど、すんでのところでトリケラ族に服を掴まれる。
「逃がさんぞ!」
「しまっった!」
鉄砲水に気付いたトリケラ部隊の悲鳴と、僕の視界が水にさらわれるのは、ほとんど同時だった。
僕の意識は、そのまま水にさらわれた。




