知恵を貸しましょう
エマ達四人も戻ってきて、僕らは全員でゼノミラスの元へと戻った。
「というわけでゼノミラスさん、僕らと同盟を結んで下さい。
「……皆の者」
けど、ゼノミラスさんは手を横に振って合図をする。
「王国の害獣を殺して王国の神殿送りにしてやれ」
周囲の爬虫類族の子らが、爪と牙を鳴らし始めた。
「ちょっとあんた、約束が違うわよ! ていうかニンゲン殺したらエデンが滅ぶわよ!」
合わせて、ネイア達も戦闘態勢になる。
「黙れ、無理難題をふっかけるということは断ったという事だ。そんな事もわからないのか? それに、我ら爬虫類族は、幸いオスがいなくとも単一生殖ができる。一生に一度が限度だがな。ダイロの顔を立てて会ってやったが、ニンゲンなど知った事か」
一触即発。そんな空気に、僕は息を飲んだ。
そういえばネイアの言葉、僕は人間だから死んだらそのままなんじゃ!?
エデンの動物が死んでも生き返るのは生命の実を食べたからだ。
僕の心臓が緊張で動悸が激しくなる。
でも次の瞬間、一つの声が割って入った。
「お待ちください」
群衆の中から、一人の女の子がのそのそと歩いてくる。
「ゼノミラス様、ゾウ亀族パスラです。この地で哺乳類族は珍しいので、殺して送り返すにしても、色々と聞きたいことがあります」
パスラはおっとりとした喋り方だけど、知性を感じる、品のある顔立ちの女の子だった。
彼女はこの集落では高い地位にいるのか、ゼノミラスさんはあごに手をあてて一考する。
「よかろう。そのものらは小屋に閉じ込めておけ。そのかわり、逃げようとしたら即刻処刑とする」
それって事態があまり好転していない気がするんだけど。
その時、一人の少女が慌ててゼノミラスの前に走って来た。
「ゼノミラス様! 第一部隊が帝国を衝突! 我が方劣勢です!」
僕は一瞬驚いて声が出無かった。
もしかして。
「ゼノミラスさん。爬虫類族は、もう帝国と戦闘状態なんですか?」
ゼノミラスさんはばつの悪そうな顔をしてから、舌打ちをした。
「前からでは無い。以前ここに来た使者を追い返しただけだ。恐竜族の家臣になるなら住処は奪わないと言うのでな。勝手に宣戦布告していったので、東の方に防衛部隊を配備していたのだが、どうやら今日が侵攻の日だったらしいな」
僕はチャンスとばかりに声をあげる。
「じゃあゼノミラスさん。僕が知恵を貸しますので、それで勝ったら同盟を結ぶ、というのはどうでしょうか?」
「何?」
ゼノミラスさんの目が、不審そうに僕を見下ろした。
僕の知恵で負けたら僕を殺してもいい、そう言おうと思ったけど、ゼノミラスさんの反応は意外なものだった。
「いいだろう。それで作戦は?」
随分あっさりだな。
「はい、まずは戦場の地図、あと敵部隊の情報を下さい」
それから僕の前にはジャングル外、サバンナの東側の地図が広げられて、敵部隊の情報も教えてもらった。
僕は、自信たっぷりに笑った。
「作戦は決まりましたよ」




