表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

59/68

人間無双

 三〇分後。ニンゲンを遥か後方に置き去りにしてエマ達は走り続けた。

 そして疲れがピークに達して、四人はサバンナの樹の下で小休止をする。


「ふー、流石に、かなり疲れたでありますな」


 ローアは肩で息をしながらも、軍人らしく背筋を伸ばしたまま樹の下に座り込む。

 ジュリーとパンリーも頷く。


「しかし往復六時間、普通に考えればとてもではないが無理だぞ」

「船でダチョウを借りても無理ね。ダチョウの足でも四〇キロの距離を三時間でなんて」


 エマが、深刻な顔で指をあごに添える。


「何か良い方法を、伝書鳩を連れて来るべきでした……」


 四人が難しい顔で、休みながら考える。

 走らないと始まらないので走るが、このままでは確実に間に合わない。

 確かに死んでも王国の神殿に帰るだけだが、それまでネイアとノックは何時間も毒の症状に苦しむし、爬虫類族と同盟も結べない。

 そうやってしばらく休んでいると、四人の耳が動物の息づかいを捉えた。


『何だ?』


 自分達が来た方向を振りかえると、地平線の向こうに、小さな影が見えた。

 影はだんだん大きくなってくる。


『!?』


 正体に気づいて四人は目を丸くした。ニンゲンだった。彼が、走り始めた時と全く同じ調子で走って来た。


 訳が解らないまま、ニンゲンが真横を通り過ぎて行った。


 また振り返って、しばし唖然としてから、ようやくエマが口火を切る。


「お、追いますよ!」

「「「はは、はい!」」」


 まだ体力は回復しきっていないが、狼と馬とジャガーと豹の四人は立ち上がって駆けだした。


 四人が走れば、人間の背中はどんどん大きくなる。やがて並んだ、追い抜いた。


 走り続ける事二〇分、また疲れて来て、四人は近くの樹の下に座り込んだ。


 その横を、ニンゲンが追い抜いて行く。


 また四人は立ち上がって走り出す。


 疲れた体に鞭を打って四人は走った。


 ニンゲンの背中を捉えて、並びそうになって、ジャガーとパンリーが倒れる。


 エマとローアはニンゲンの横を走って、でも追い抜かせなくって、やがてローアが倒れた。エマはなんとか食らいつくが胸がどんどん苦しくなっていく。


 心肺機能が限界以上に酷使されてしまい、エマは胸と喉が痛くて仕方ない。


 そのままエマもへろへろになって、サバンナの大地に膝を折る。


 けれど、ニンゲンはスタート時とまったく変わらない調子でみるみる離れて行った。


 その光景を、エマは四つん這いになったままかすれる視界で見送った。


「……ニ……ニンゲン様……は、頭が良いですが……体力はない、はずでは……」


 エデンには、これまで何人ものニンゲンが召喚されている。


 記録では、彼らはエデンに様々な文化や知識をもたらしたが、身体能力に関しては恐ろしく華奢なはずだった。


 今回のニンゲンも、ネイアと戦った時は子供のように扱われていた。


 エマは理解不能のまま、疲れ過ぎて動けなくなってしまう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ