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ライガーVSクロコダイル2

「ぶざまだな珍獣野郎! やっぱ同じ肉食動物つっても哺乳類と爬虫類とじゃ天地の差だなぁおい!」


 ライオン族やトラ族に仕える、ジャガー族であるジュリーが歯を食いしばる。


「何故だ、ノック殿はワニ族に勝ったのに……王様の娘であらせられるネイア様が」

「クロコダイルだからだよ」


 ジュリーの驚きに満ちた顔が僕を向いた。


「同じワニでも、アリゲーターとクロコダイルじゃ大きく違う。大きさも、凶暴性も、運動性能も全てクロコダイルが上なんだ。それに、ただでさえ強い種族なのにダイロは族長。たぶん、クロコダイルの中でも特別に強い固体のはずだ……」

「そんな……ではネイア様は……」

「勝敗は僕にも解らないよ、でもジュリー……」


 僕は、王家の剣である彼女に、大切な質問をした。


「ジュリーは、ネイアが好きなんだね」


 ジュリーの頬が、一瞬だけ赤く染まった。


「私は、バーバリー王家に仕えるジャガー族筆頭。王族の方には絶対の忠誠と崇拝を誓う身です。ましてネイア様は、アムール公爵家の血も引く高貴なお方……ですが」


 ジュリーの顔が、辛そうに曇る。


「アムール家次期当主であるティア様の手前、また、次期玉座は純潔のライオン族であるレオナ様に決まり、私は幼い頃よりレオナ様の近衛隊長として将来を任された身です。王族貴族の方々の目を気にし、表だってネイア様をお守りすることができませんでした」


「…………」


 僕はジュリー以外の子らの表情を見回した。


 みんな、ネイアの事を心配そうな目で見つめている。


 手に汗を握ったり、息を吞んだりする子もいる。


 誰も『いい気味だ』『役立たず』と言うような感情は持っていないのは明白だ。


 それで解った。


 ネイアを嫌いな子なんていないんだ。


 僕は小学生のクラスの雰囲気を思い出す。


 例えばクラスの中心的人物が、特定の子を嫌いだと強く主張したら、他の子も、その子と仲良くしにくいと思う。


 ティアは、トラ族じゃないと解ったネイアに素直になれず突き離してしまった。


 アムール公爵家次期当主であるティアがそう言った以上、他の子も、ネイアとは仲良くしにくくなっちゃったんだと思う。


 僕は考える。


 なら……大丈夫だ。


 僕はあらためて、ネイアとティアを仲直りさせようと誓った。


 その為にも、ネイアに手柄を立てさせてあげたい。


 そう思って、僕はダイロに勝つ方法を考えた。


「ぐあっ!」


 ダイロのしっぽがネイアをはね飛ばす。ネイアはちょうど、僕のすぐそばまで転がされる。僕はチャンスとばかりにネイアへ指示を出した。


「あんた、それ本当?」

「うん、だってダイロは元クロコダイルだもん」

「何ごちゃごちゃ言ってんだゴルァ!」


 喉を鳴らすダイロ。ネイアは口から血を吐き捨てながら毒づく。


「ちっ、それが本当でも、あんたも難しい事言ってくれるわね。そんな簡単に言ったら」


 ネイアが跳んだ。


「世話ないっつーの!」


 ネイアは上段からおおぶりに右手の爪を振り下ろす。


「学習しねーやつだなぁ!」


 ダイロは反転、背中で受け止めようとする。ネイアはすぐに手をひっこめて、着地と同時にダイロの腹に両手を添える。


「あん?」

「ふん!」


 ダイロの腹に、ライガーの鋭い爪が突き立てられる。


「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああ!」


 ダイロは腹から血を噴き出させながら、まるで断末魔のような悲鳴をあげて、しっぽで強引にネイアを振り払う。


 ネイアはバックステップで距離を取ると、歯を鳴らして挑発。


 動物界トップクラスの噛筋力を持つワニのプライドだろう。ダイロは血まみれのお腹を両手で押さえながら牙を見せた。


「野郎。ナメてんじゃねぇぞ!」

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