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ライガーVSクロコダイル

「ちっ、なら、次はアタシの出番だな!」


 アイラーが負けて、族長のダイロが力強い足取りで前に出た。僕らを見回しながら相手を選び始める。


「今度は肉食動物だ。そうだな、じゃあ、ん?」


 ダイロの視線が、ネイアで止まった。


「シマシマ尻尾に金色の耳? おい、そこのライオンかトラかよくわからねぇの。お前肉食のわりにいい体格してんな」


 ネイアは女の子にしてはやや背が高めで、体の発育もいい。


 そっか、ゾウとかサイとかカバとか、超大型動物ってみんな草食だから。この世界だと肉食哺乳類で長身爆にゅ……背が高くて発育のいい子って珍しいのか。


 ライガーの体格はヒグマ並だ。


 実際、ライガーのネイアと、ヒグマのメイプルは背格好が似ている。


「おもしれぇ、次の相手はてめぇだ。かかってきな!」


 ダイロの挑発に、ネイアが腰の剣を鞘ごと抜いた。


「……いいわ、ニンゲン、これ持ってて」

「う、うん」


 剣を僕に預けて、ネイアは肩を回してダイロと対峙した。


「行くぜ! クロコダイル族ダイロ! テメェを祭殿送りにしてやるぜ!」

「王国の騎士ネイア! こっちこそ、神殿送りにしてやるわ!」


 自分をライガーと名乗らないネイアに、僕は下唇を噛んだ。


 ノック達の名乗りを聞いても、エデンの人達は種族に誇りを持っているように思える。


 なのにネイアは、自分の種族に抵抗を感じている。


 僕にはそのことが悲しかった。僕はネイアの勝利を願った。


 同盟を上手く行かせる為、というのもあるけど、それと同じくらい、ネイアに自信をつけて欲しかった。



 無冠の王ライガーVS水辺の覇者クロコダイル 開始



 二人の喉から『カロロ』っという特有の音が鳴った一秒後。二人を隔てる距離は無くなっていた。


 ライガーとクロコダイル。


 おそらくは現代の地球なら哺乳類と爬虫類最強のツメが交差した。


 互いに引かず、真っ向からツメの応酬で相手を殺しにかかる。


 一瞬の隙をついて噛みかかれば、音速の反応で上半身を引いて回避。



 普通に考えればツメならライガー、牙ならクロコダイルのほうが上だろう。


 でもクロコダイルの方が肉体強度は圧倒的に上で、切り裂き合いで互いに与えるダメージは互角だった。


 ネイアが跳んだ。


 ダイロの頭上を飛び越えて背中に回り込む。ダイロは尻尾で迎撃、ではなく、柔軟性のある捻体で対応。反手したダイロ相手に、ネイアは再び壮絶な切り合いを再開する。


 跳んだり跳ねたり、三次元の動きは猫科動物であるライガー、ネイアが優勢。


 反転、旋回、二次元の動きは爬虫類であるクロコダイル、ダイロが優勢。


 ライガーのデータはないけど、地球だとよくライオンVSワニは『水辺ならワニ、陸上ならライオンの勝ち』と言われていた。


 ここは陸、だからネイアが優勢のはず……だけど僕はライオンVSワニの見解に一つ問いたい。


 そのワニって言うのは『アリゲーター』と『クロコダイル』のどっちだい?


「おらぁ!」


 ダイロが、鋼の尾でネイアを容赦なく叩き伏せる。



 息が詰まるネイアの肩に噛みついて、ダイロは真っ赤な鮮血をすすった。


「アァアアアアアアアア!」


 ネイアは悲鳴を上げてから、苦痛にゆがんだ顔で爪を振るった。


 ダイロは離れながら反転。背中で爪を受け止めながら、回転力をそのままにまた尻尾でネイアの顔面を叩き飛ばした。


 ネイアの細い体が回転しながら吹っ飛び樹木に激突。ダイロは嗜虐的な顔で笑った。


「ぶざまだな珍獣野郎! やっぱ同じ肉食動物つっても哺乳類と爬虫類とじゃ天地の差だなぁおい!」


 ライオン族やトラ族に仕える、ジャガー族であるジュリーが歯を食いしばる。

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