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サイVSアリゲーター

 アイラーがノックに跳びかかる。ノックは咄嗟に左腕でガード。アイラーの口が、ノックの左腕に噛みついた。


 普通の女の子同士でも目を背けたくなるような残虐ファイト。なのにアイラーはワニ娘。このままじゃ、ノックが大けがをしちゃう。


 そう確信して、僕は焦った。


「どうしよ、何か助言しないと! でもどうすれば」

「うろたえるなニンゲン」


 僕の隣で、ポーリーが驚くほど冷静にノックを見守っていた。


「落ち着けって、でも」


 人化したとはいえ、彼女達は動物時代の力を使える。これは草食動物であるサイが、肉食動物であるワニに捕食されているシーンでしかない。


 けどポーリーは、呆れたように息を吐いた。


「ニンゲン、あそこにいる我々の仲間は誰だ?」

「誰って、ノックじゃない!」


「そうだ。奴はシロサイ族最強の戦士ノック。王国最強の突撃部隊隊長であり、今まで帝国軍との戦いではトリケラ隊相手に幾度となく勝負を挑み、その数だけ打ちのめされては立ち上がって来た女だ。だがそれ以上に……私の朋友だ」

「ポーリー?」


 その時、アイラーが苦悶の声を上げた。


「な、なんなんだ……噛みちぎれねぇぞ……」


 自分の左腕に噛みついて、爪を立てるアイラーを見下ろして、ノックの目は紅蓮の炎を宿したまま冷徹に見下ろす。


「残念なことに、我がサイ族は体格も体重もリーチも筋力も、ゾウ族に負けている。永遠の二番手と自虐する者もいるが、こと体の丈夫さにかけてはゾウに劣らぬ、そして……」


 ノックの全身から、空気越しでも強い意志がびりびりと感じられる。


「爆発力ならば、我らこそが最強!」


 ノックが加速。


 人一人に掴まれたまま、またたくまにトップスピードまで加速。踏みしめられた地面は抉れて、空気が揺れるほどの重量感があった。


「木と挟んで潰そうってか?」


 アイラーはノックから後ろに飛びのいた。でもノックも同じ方向に走っている。二人の距離はあまり開かない。次の瞬間にはノックの突進がキマりそうなタイミングで、なおもアイラーは余裕の顔だった。


「ツノへし折って自爆しな!」


 反転。アイラーは自慢の背中でノックの突進を受け止める気だ。ワニの体は硬くて分厚いウロコと皮膚、そして皮甲板という板状の骨が敷き詰められた鎧で守られている。


 その体はライオンの爪も牙も通さない――


「ぐぁああああああああああ!?」


 アイラーの背中がくの字にへし折れた。


 そのまま、砲弾みたいにカッ飛んで行くアイラーの体。


 ダンプカーにはね飛ばされたってあそこまではぶっ飛ばないだろう。


 ジャングルの奥地へと姿を消して、木々を叩き折る騒音が聞こえ続ける。


 爬虫類の女の子達は、打楽器を鳴らすのも忘れてその様子に唖然とした。


 アイラーの悲鳴が消えた……木々がへし折れる音がやんだ……コモドオオトカゲの少女が走って確認しに行った。


 やがて戻ってきた少女が叫ぶ。


「アイラー様死亡! 私は祭殿へ向かいます!」


 祭殿。爬虫類族は死ぬとそこで復活するらしい。


 他の子らは、まだ信じられないという様子だ。


 無理も無い。


 確かにワニの背中はライオンの爪も牙も通さない。


 けど、こっちはサイの突進。


 ノックの言う爆発力、筋肉に搭載しているエンジンがサイは並外れている。


 サイは体重四トンで最高時速五〇キロで走るサバンナの重戦車だ。


 その四トントラックに激突される衝撃が、ツノって言う狭い面積に集中するんだ。一撃の威力なら、サイの突進は全哺乳類中最強の一つに数えられる。


 アリゲーター程度の防御力でどうこうできるシロモノじゃない。


「ちっ、なら、次はアタシの出番だな!」

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