アリゲーター少女アイラー
サバンナの重戦車サイVS水辺の処刑人アリゲーター 開始
なんか凄い普通な流れで決闘することになっているけど、この世界では普通の事なのかな? まぁ、死んでも生き返る世界だし……
「エマ、この戦いってどっちが優勢かな? 向こうは自信あるみたいだけど」
「そうですね、私も爬虫類族の事は良く知りませんが、それは向こうも同じはず。意外とサイ族の戦闘力を知らないだけかもしれません。ワニは半水棲と聞いた事がありますし、陸上の戦いではノックに分があるように思います」
「なら、いいんだけど」
僕が視線を決闘に戻すと、戦いは動いた。
「いくぜぇ!」
最初にしかけたのはアイラーだった。
ノック相手に真正面から駆けて来るアイラー。
対するノックは、自慢のツノを前に突き出して同じように走った。
「オラッ!」
アイラーは、ノックのツノに触れる寸前、体をひねって回避。かわりに長い尻尾をノックの足にひっかけた。
「ぐっ!」
バランスを崩して、立て直そうとするノック。アイラーは有り得ない柔軟性で、走りながら反転、一瞬でノックの背中に爪を突き立てた。
陸上では鈍重なイメージがあるワニだけど、実際は並外れた柔軟性と機敏さで、真後ろにいる飼育員に一瞬で噛みつけるらしい。
「ふんっ!」
ノックは振り返りながら裏拳を叩きこむ。けどアイラーは裏拳を背中で受けて、余裕の表情だ。ワニは全身の皮膚が硬いウロコに覆われているし、背中は皮骨板ていう骨で守られていて、亀の甲羅に近い。生半可な攻撃は効かないだろう。
アイラーはそのまま一回転、遠心力をつけたしっぽでノックの顔面を叩き打った。
「負けるか!」
ノックはツノをかざして、アイラーに立ち向かう。でもノックがスピードが乗る前に、アイラーはそのツノに自ら噛みついた。
『な!?』
僕らの口から一斉に驚愕の声が漏れた。
だって、サイのツノに噛みつくなんて。
アイラーは噛みついたまま、流暢に話す。
「知ってるぜぇ。てめぇらサイのツノは骨じゃなくてツメと同じなんだってな。強度が劣るかわりに折れても生えて来るが、決闘じゃ致命的だぜ!」
「なめるな!」
ノックが全身を使い大きく頭を振ると、反動でアイラーが大木に吹っ飛んで顔面を強打した。
「ぺっ、やるじゃん」
アイラーが口から吐いた何かが地面に転がった。
それは歯だった。
顔面を強打したことで、アイラーの牙が折れてしまったらしい。
「残りの牙も全てをへし折ってやろう!」
ノックの突進。に、対してアイラーが、綺麗な歯を光らせて噛みかかった。
「何!?」
急停止して、ノックは身を逸らす。
さっきまでノックの顔があった空間にアイラーが噛みついた。
「驚いたかよ? アタシらワニの歯は常に予備があるのさ!」
僕は思い出す。
ワニの歯は例えるなら、コーンを重ねたような構造になっている。歯が折れて抜け落ちても、そのすぐ下にはもう次の歯が用意されている。
「アタシの歯は骨のように硬く、爪よりも早く生え変わる! テメェのツノとは出来が違うんだよ!」
アイラーは歯を鳴らしながら爪を掲げてしっぽを立てた。
「抜群の柔軟性に瞬発力! 他の追随を許さない肉体強度! 鋼の尾で背後からの攻撃にも対応できるし武器の歯は無限に再生! これがエデン最強種! ワニの力だ! 喰らえよ、いやアタシが食らうぜ! 一トンの咬筋力でなぁっ!」
「ぬっ」
アイラーがノックに跳びかかる。ノックは咄嗟に左腕でガード。アイラーの口が、ノックの左腕に噛みついた。




