爬虫類族ってどんな子?
「そういえば、この中に爬虫類族と会った事のある人っているの?」
僕らは少し開けた場所で地面に座って、それぞれご飯を食べながら休憩をしていた。
草食の子は持って来た野菜を食べて、肉食の子はドードーの刺身を食べる。
僕もせっかくなので、美味し過ぎて絶滅したドードーの味を堪能させてもらっている。
確かにおいしい。これなら何羽でも食べられちゃうね。
ちなみに、僕の肝心な質問には全員首を横に振った。
いつものように、エマが補足する。
「爬虫類族と我々王国の哺乳類はほとんど交流がありません。北方に住む哺乳類達とは交易をしていますが、南方に住む爬虫類族にはついては、今まで話したように、遥か南のジャングルで狩猟生活をしている民族、という認識しかありませんし、互いに関わる理由もありません」
「う~ん、同盟を結ぶには、貿易をするとか、交流を持つのがいいんだけどなぁ」
その時、僕の頭にひらめくものがあった。
「そうだ、じゃあこのドードーは? 狩猟生活って、たぶんこのドードーを食べているんでしょ? こんなにおいしいお肉なら、王国のみんなも食べたいだろうし、爬虫類族にはドードーを獲って貰って、代わりに王国もニワトリや七面鳥をあげればいいんじゃない?」
みんなは感嘆の声を漏らしながら頷いた。
けど、サイ族ノックは鼻を鳴らす。
「ふん、小賢しい知恵を回すのがニンゲンのやり方か? 同盟を結ばぬならば、決闘で決すればよかろう!」
ノックは胸の前で、握り拳を作り僕と視線を交わす。
な、なんていう脳筋思考。
ちなみに、普通の動物は警戒心が強くて良く分からなものには近寄らないのに、サイは良く分からないモノにはとりあえず体当たりをブチカマすという習性がある。
猪突猛進という言葉とは裏腹に、イノシシは正体の掴めぬモノには絶対体当たりをしない。サイのほうがよっぽど猪突猛進だ。
「これだから突撃馬鹿は困る。爬虫類族共戦争に発展したらどうする?」
「ならば帝国共々我がツノの餌食にしてくれる!」
ノックがポーリーを睨んで、ポーリーもノックを睨んだ。
「毎度トリケラトプス族に青天を喰らうツノではニワトリも殺せんぞ?」
青天って、確かアメフト用語で仰向けに倒される事だっけ? ニンゲンが来る度に、地球の言葉も入ってきているんだなぁ。
僕がそろそろ喧嘩の仲裁に入ろうとした時、オオカミ族のローアが口の中の肉を吞みこんだ。
「用があるなら姿を現せ。我々も貴様らに用がある」
僕らが、一斉にローアの方を見る。
三秒後、ローアの背後の木から、裸の少女の姿が浮かんだ。
「おーう、風下から近づいたのに凄い凄い♪ オオカミの鼻が天下一品とは本当のようですなぁ♪」
陽気な口調で歯を見せて笑う少女は、きっとカメレオンだろう。
お尻のあたりから、緑色の尻尾が生えている。
ていうか……
「前隠して前!」
一糸まとわぬ少女に、僕は大声で注意した。
「男? そういえばそろそろ次のニンゲンが召喚される時でしたねぇ、では」
少女は近くの木からてきとうなツルを一本むしり取ると、腰に一巻きする。ツルの葉っぱが股間のところに来るようにして、胸も同じようにして隠した。
露出度がほとんど変わっていないような……
見えそうで見えない、そんなギリギリの格好に、僕は目のやり場に困ってしまった。
ニーナが僕にすり寄る。
「ニンゲン様、目のやり場に困ったら私の胸を見て下さいね♪」
「今はそんな事言っている場合じゃないから!」
ジャガー族のジュリーが、前に進み出る。
「我らは王国からの使節団だ。貴方がたの長と話がしたい」
「ふーん」
カメレオンの少女はあごに手を当てて、僕らをしげしげと眺めた。
「だってさ、どうする?」
少女が背後、風下のほうへ振り返ると、しげみから一斉に女の子達が立ちあがった。
誰もがうちの子達と同じで、腰の辺りからしっぽが生えている。ただし、どれも緑色のうろこに覆われた、爬虫類の尻尾だ。
そのうちの一人が、鋭い目で僕らを見据える。
「いいだろう。ただし話に応じるかは長次第だ」




