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オオカミ少女ローア

「暑い!」


 クマ族のメイプルが叫んだ。


 船で丸二日。僕らの現在地は目的地である南方のジャングルの中。


 高温多湿。


 と言っても日本の夏に比べれば、それほどでも無かった。


 けどジャングルに適した動物じゃないクマ族のメイプル、オオカミ族のローアを中心に、みんなだらしなく口を開けて、辛そうな顔をしている。


 僕はシャツ一枚の涼しい格好で、汗で濡れたシャツが体に張りついて少し気持ち悪い。けど体が辛いという事は無い。


「あれ?」


 良く見ると、みんなは全然汗をかいてなかった。


 髪も服も、全然濡れていない。


 メイド服をミニスカノースリーブへそ出し生足という、ジャングル仕様にしているエマとニーナのうち、ニーナが気付いた。


「あれ? ニンゲン様すごい汗ですね。エマよりかいてますよ」


 見ると、確かにエマは少量ながら汗をかいている。


「あーそっか、みんなは元動物だから汗をかかないのか」


 僕は納得して手を叩く。


「汗をかくっていうのは体温調節能力に優れた人間固有の能力なんだよ。動物は口からの呼吸のみで放熱をするからね。人間以外で例外的に汗をかくのは馬ぐらいだよ」


 知能の進化をした人間は、脆弱な体というイメージが強いけど、実は全生物ぶっちぎりナンバーワンの環境適応能力を持っている。


 皮下脂肪で寒さから体を守る保温体質でありながら、暑くなれば大量の汗をかいて瞬間冷却する。


 現に、北極圏から赤道直下、砂漠からジャングルまで、人類は地球上の全地域に定住している。これは他のどの動物にも見られない特徴だ。


「ふーん。人化しても動物時代の能力は使えるけど、弱点も引き継いじゃうんだ……」


 その時、カバ族ポーリーとサイ族ノックのお腹が同時に鳴った。


 エマが荷物の中から野菜類を取り出す。


「ニンゲン様、そろそろ食事休憩にしましょう」


「そうだね」


 周辺を見回してから、僕はそう答えた。


 ジャングルに入ってからかれこれ二時間。



 僕らは爬虫類族にはまだ会えていない。


 何せちゃんと地図もないのだ。


 王国で把握しているのは、ただこのジャングルにいくつもの部族がそれぞれ集落を作っているらしい、という事だけなのだ。


「じゃあエマ、野菜とお肉を」


 その時、僕らの目の前を一羽の鳥が横切った。


 ニワトリみたいに足で地面を歩く鳥。それは……


「ドードー!?」


 それは、紛れも無く地球では絶滅した飛べない鳥、ドードーだった。


 お肉が美味し過ぎたのと簡単に捕まえるられるからという理由で乱獲され、絶滅してしまった鳥だ。


 そして僕がそのドードーをどうこうしようと考える前に、もうジャガー、ヒョウ、チーターの猫科三人娘があり得ない俊敏さでドードーに跳びかかっていた。

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