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ネイアについて

「話ってなんですか?」


 南方行きの船に乗って出発してから数時間後。


 日の沈むころに、僕はシロユキさんの執務室に呼ばれていた。


 執務室には、シロユキさん一人だけだった。


 椅子に座るシロユキさんは、紙に万年筆で書類を作っていた手を止めて僕を見上げた。


「呼びだしてごめんなさい。ねぇ、ニンゲンさんはネイアちゃんの事、どう思っているの?」

「どうって……それは……」


 単純に、すごくキレイな子だなって思う。


 あと、ティアとか仲良くして欲しいとか。


「ネイアちゃんの事、どこまで知っているの?」


 その問いで、シロユキさんが呼びだした理由になんとなく察しがついた。


「ライオン族の王様と、トラ族の当主との間の子供で、レオナとティアのお姉さん。あとティアと仲が悪いって……」


「結構知っているのね。でもそれだけじゃなくて、あの子、ニンゲンさんと子供を残す事に悩んでいるのよ。あの子は、ライガーだから」


「なんでですか? ライガーだからってそんな……」


「あの子がライオンでもトラでもない存在とか、王族の第一子でありながら純潔のライオンじゃないから玉座に就けないとか、そんな事を気にするのはごく一部の人だけよ。ほとんど人は、本当にただ混血の子供っていうだけ。けど一部の人からでも、心無い事を言われて育てば、子供にとっては世間から拒絶されたと思うわ」


 それを聞いて、僕は学校の授業で聞いた話を思い出した。


 心理学の先生のもとに『みんなが自分の悪口を言う』と主張する患者が来て、具体的に誰が言っているのか名前を書きだしてもらうと、意外と少ない。


 けど、これは決して被害妄想とか自意識過剰とか非難するわけじゃない。


 学校のクラスや、会社の職場にいる数十人の人間のうち数人に非難されて、他の人が誰も味方になってくれない状況に置かれたら、人は周りは敵だらけだと感じてしまう。


 特にネイアは、妹のティアに拒絶されて、長女なのに、トラ族の長にもライオン族の長にもなれない身の上だ。


 きっと子供の頃から、色々と思うところがあったと思う。


「エデンの女の子はね、みんなニンゲンさんが召喚される日を夢見るの」


 シロユキさんは、穏やかな表情で僕に語りかける。


「おじいちゃんのニンゲンさんから、そしてお父さんから、いつかまた新しいニンゲンが召喚されて、その人との間に可愛い赤ちゃんを産んでママになるんだよって、みんなそう言われて育つし、みんなその日を楽しみにしている。ネイアちゃんも、昔は他の子と同じようにまだ見ぬ未来の王子様に夢を見る女の子だったわ。でもライガーである事に負い目を感じるようになってから、だんだんニンゲンの事を口にしなくなったわ」


 僕は、今までのネイアの言葉を思い出す。


 自分は子供なんていらないっていうネイア。


 自分みたいな子を増やしたくない。そう思っているのかな?

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