ジャガー少女ジュリー・アリゾナス
「ついたぜ、ここがシロナガス家領地の首都、シロナガス港だ」
「おぉ」
僕の口から感嘆の声が漏れる。
あれから二日後の朝、爬虫類部隊への使節団を編成した僕らは、シャチ族レギーの案内で鳥車を乗り継いで、次の日の午前にはこの首都に到着した。
随分と短時間で着いたけど、これは王国が狭いんじゃない。
これも今まで召喚されたニンゲンの知恵なんだろうけど、王国の道路は不自然なくらい整備されていた。
それにモアやダチョウが疲れる頃には乗り継ぎ駅に到着。まだ元気な、新しいダチョウやモアに替えるから、常に高速移動が可能だった。
そして太陽が真上に近くなる今、僕は鳥車の中から、港街の発展ぶりに感心してしまう。
王都も立派だけど、クジラ族シロナガス家の首都も負けないぐらい発展している。
白を基調とした建物はどれも立派で、中世から近世レベルの文明を考えれば、どれもそれなりに身分のある人の別荘みたいだ。
地面は全て石畳みで舗装されて、道路を通る荷車や鳥車の数、人口もかなり多い。
事前にレギーから聞いていた事だけど、人口の多くはイルカ族、シャチ族、クジラ族のようだ。
水色のヒレみたいな耳をした、中学生ぐらいの女の子達。黒いヒレみたいな耳をした、高校生くらいの女の子達。そして紺色のヒレみたいな耳をした、大人の女性達の姿が目立つ。
水色の耳をしたイルカ族の子達はみんなとっても可愛らしくて、黒い耳をしたシャチ族の女の子達はちょっと目付きが怖いけど、凛とした美少女達だ。紺色の耳をしたクジラ族の女性達は、みんな男の僕よりも背が高くて、外人モデルでも見たことがないぐらい、グラマーな体付きだった。
レギーの操る鳥車に乗る僕は感想を漏らす。
「すごいお洒落な街だね」
「はん、これも全てはアタシらの偉大なビッグママの威光の賜物なのさ。行くぜ、ハトで手紙は出してある。こっちだ」
レギーの操る鳥車を先頭にして、後ろから他のメンバーが乗った鳥車が続く。
しばらく乗っていると海が見えて来て、この港街の港に着いた。
洋館風の立派な建物の駐車場に、鳥車を駐車させると、全員が次々降りる。
メンバーは僕とレギー。メイドの中で戦闘力のあるシャイヤーウマ族のエマと、フレミッシュウサギ族のニーナ。
カバ族のポーリー。
サイ族のノック。
オオカミ族のローア。
コウモリ族のクロナ。
ゴリラ族のハナミ・マウンテン
クマ族のメイプルとノドカ姉妹。
意外だけど、ライガー族のネイアも来てくれた。
他にも肉食獣の戦士として各隊の隊長が来てくれた。
「ニンゲン様。此度は我らを同行させていただき、改めてお礼を致します。ありがとうございました」
そう言うのは、ジャガー隊隊長のジュリー・アリゾナスだ。
高校生ぐらいの美少女で、ライオン族のレオナ程じゃないけど、スタイルも抜群だ。
パット見の印象は、高潔な騎士様だ。
代々バーバリー王家の懐刀として仕え、普段は王の警護を、戦時は戦場で常に最前線を張り続ける一家の長女らしい。
ジュリーの背後左右にも同じようにして騎士然とした美少女が二人立っている。
「ヒョウ族の威信に賭けて、この使節、成功させて見せます」
やる気に溢れた、というよりも、少し気負った表情を浮かべるのは、とってもとってもスレンダーな美少女、ヒョウ隊隊長パンリーだ。
「もしも帝国からの刺客が現れたら、私がお守りしますよ」
爽やかに笑う美少女はチーター族のリーベル。彼女もスレンダーだが、ヒョウ族のパンリーと違って、しっかりと女性的な体のラインをしている。
ファノビアの話では、爬虫類族と交渉が決裂、場合によっては戦闘になる可能性もあるらしい。けど。
猫科の猛獣ではトラ、ライオンに次ぐ体格で北南米大陸では食物連鎖の頂点に君臨するジャガー。
猫科の中では最も木登りが得意で身軽なヒョウ。
猫科どころか、全哺乳類史上最速の猛獣チーター。
それも各部隊最強の隊長が僕の護衛のために着いて来てくれた。
戦闘になった場合、戦うのはおそらくワニ、ヘビ、オオトカゲだろうけど、この猛獣オールスターなら、戦力的には五分だろう。
何よりも……




