ウシ少女クリーヌ・ホルスタイン
「…………ん?」
僕は熱に浮かされるような感覚の中、目が覚めると脱衣所の天井が広がっていた。
「目を覚まされましたか、ニンゲン様?」
首を横に倒すと、浴衣姿のエマがうちわで僕をあおいでくれていた。
メイド姿じゃないエマって新鮮だな。
上半身を起こすと、どうやら僕は背もたれが倒れた椅子に寝かされていて、首から下は浴衣姿だった。
エマさん以外にも、マワリちゃんやムチポ、キャロやニーナ、やさしくうちわであおいでいる。
もちろん、みんなも浴衣姿だ。
倒れる直前の事を思い出して、僕はますます熱っぽくなって、ぼーっとしてしまう。
「エマ、あんまり聞きたくないけど、あれから僕はどうなったの?」
「はい、全員でニンゲン様の体を洗い尽くし、さらに全員で一人ずつニンゲン様に抱きつきながら入浴しました。そのせいでニンゲン様がのぼせていると思い、こうして涼を取っております。お飲み物も用意しました。クリーヌ」
エマが二度、手を叩いた。
するとのんびりした、間延びした声が聞こえてきた。
「は~~い」
「が!?」
脱衣所の奥から現れた女の子を見て、僕は熱暴走を通り越して朦朧とした意識が一瞬で覚醒した。
二つのスイカだった。
じゃなくて、いやでも本当にスイカだった。
僕は近づいてくる二つの大きなおっぱいに脳味噌の処理が追い付かなくて、目を血走らせてしまう。
なんとか理性を総動員して現状を把握。
エマみたいに体型の女の子が、なぜかチューブトップのセクシーな水着姿で登場してきた。
ただしおっぱいのサイズはエマよりずっと、遥かに大きい。
頭から生えているのは牛のツノ。
セクシーなヒップから顔を出しているのは、同じく牛の尻尾だ。
ウシ族の女の子。
元になっている動物の特徴をしっかりと受け継いで、彼女は本当に、スイカ大のおっぱいの持ち主だった。
どれくらい大きいって、ゾウ族のファノビアさんよりも大きい。
そんな彼女が、牛乳の入ったガラス製のコップをお盆に乗せて運んでくる。
「ノドカちゃんと一緒に厨房で働いている、ウシ族のクリーヌ・ホルスタインだよ。よろしくね、ニンゲンちゃん♪ はい、フルーツ牛乳」
ずいっと差し出されたフルーツ牛乳を手に取って、僕は何も考えずに飲んだ。飲みながら、クリーヌのおっぱいから目が離せなかった。
氷入りの冷たいフルーツ牛乳が僕の体に染み割って、熱の冷める心地よい気分の中、頭だけは火であぶられたように熱い。
「おいしい?」
ノドカ同様、とってもほんわかした、可愛らしいお姉さんのクリーヌ。
彼女に問われて、僕はすぐに返事をする。
「うん、凄くおいしいよ。晩御飯でも飲んだけど、この国の牛乳っておいしいね」
確かに、この国の牛乳はおいしい。
地球で飲んだどの牛乳よりも味が濃くて、まろやかで、飲みやすくて。飲んだことがないから想像だけど『しぼりたて牛乳』っていう感じだ。
「ん?」
その瞬間、僕はある事を思い出す。
エデンって、鳥が家畜なんだよね? でも、牛とか山羊みたいに、母乳をたくさん出す鳥っていたっけ?
それに今、クリーヌは『牛』乳と言った。




