この世界の女の子がスケベ過ぎる!
「あたし!?」
ネイアが、フォークを止めて、レオナに渋い顔をする。
「なんであたしがこいつの面倒看なきゃいけないのよ」
「だってもしも城下町に帝国軍が紛れこんでいたら……護衛は必要です。肉食動物は最低一人はつけないと」
またエマが、僕の耳元で囁く。
「身体能力は大型草食動物の方が上ですが、肉食動物の方が戦闘センスが高いのです」
「へぇ」
続いてレオナがネイアを説得する。
「メイドのみんなだけじゃ、エマとニーナのキックアーツならディノニクスに対抗できるかもしれないけど」
レオナの視線が動いて、僕も同じ方を見た。
僕の専属メイド、残りの三人はネズミのマワリちゃんと、ウォンバットのムチポと、ロップウサギのキャロだ。
三人とも自然界では完全に捕食される側。生体ピラミッドの低階層者だ。
幼稚園児みたいなマワリちゃんと、小学校低学園みたいなムチポが、きょとんとした顔で僕とレオナの視線を受け止めている。
その姿が可愛くって、僕は二人を手招きで呼んだ。
「二人ともおいでおいで」
マワリちゃんとムチポは幼い笑みでちょこちょこと駆け寄ってきて、僕の腰やふとももに抱きついて甘えて来る。
そんな二人に僕は、
「いいこいいこ」
と、頭をなでさせてもらう。
うーん、やっぱり可愛い。
「ニンゲン様危ない!」
その時、小柄なロップウサギ種、キャロがタックルのように駆けこんできた。
一瞬でマワリちゃんとムチポを抱えると僕から引き離し、僕を守るようにして立ちはだかった。
「騙されてはいけませんニンゲン様! 今この二人はその愛くるしい見た目を利用し、ニンゲン様に近づきながら己が肢体で誘惑し! 取り入り! 人気の無い所へ誘い込み! ニンゲン様を裸にして二人で立ち替わり入れ替わりめくるめく3Pワールドへと!」
「それは……」
キャロが真っ赤な顔で言いきる前に、エマが長い足を振り上げた。
「貴方の願望です」
「ふぎゃん!」
エマのしなやかな脚が、キャロの延髄を蹴り折った。
キャロは魂が抜け出たような顔で絨毯の上に倒れ、手足を痙攣させた。
「まったく ? どうされましたか?」
「いや、なんでも」
僕は誤魔化すようにしてエマから視線を逸らす。
実はエマがキャロを蹴った時、スカートが大きくめくれて、エマの太ももとか、ショーツの一部が見えてしまった。
「ニンゲン様」
今度はフレミッシュウサギのニーナが僕にすり寄る。
むっつりスケベなキャロと違って、ニーナはストレートスケベだから僕は警戒してしまう。でもニーナは優しい笑顔で僕に言う。
「マワリちゃんとムチポちゃんは甘えたいだけだから、変に警戒せず、いっぱい可愛がってあげてくださいね」
「う、うん」
その時のニーナの表情とか雰囲気がすっごく、優しいお姉さん、っていう感じで、僕はおっぱいをおしつけられた時以上にドキッとしてしまった。
元からニーナは美人でスタイルも良くて、とっても魅力的な子だけど、それを差し引いてもドキドキしてしまう。
「はいはい、発情したなら食事が終わり次第メイドと子作りすれば?」
ネイアが不機嫌そうにから揚げを食べる。
僕も反省して、話を軌道修正した。
「確かにマワリちゃんやムチポの事を考えると、強い人が二人だけっていうのは問題かな」
アムール家のお嬢様であるティアが前のめりになる。
「じゃあトラ族だしアタシが」
「護衛対象が増えちゃうでしょ!」
レオナは妹を叱りつけるお姉さんみたいな口調でティアをたしなめる。
「というわけだからネイア、お願いね」
「要人警護ならジャガー族かオオカミ族がいるじゃない」
「まぁまぁ、それにニンゲン様と最初に会ったのはネイアだし、この城に連れて来たのもネイアでしょ? これの何かの縁ってことで、お願い」
姉妹とはいえ相手は姫殿下。ネイアも不満そうな顔でステーキを口に含み、もごもごしながら頷いた。
「……わかったわよ。じゃあニンゲン、ご飯食べ終わったらさっさと行ってさっさと済ませるわよっ」
「うん」
僕はちょっと不安に感じながらも、ティアやレオナとの関係を聞くチャンスだと思案を巡らせた。




