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トラック転生

「ただいま」


 学校から返った僕は、誰もいない家の玄関でそう呟いた。


 交通事故で死んだ父さんと母さんの一周忌は昨日済んだ。


 ただいまを言う相手のいない家。



 いってらっしゃいを言ってくれる人のいない家。


 僕はシャワーに入るとてきとうにご飯を食べて、ネットで動物の可愛い動画をいくつか見てから早く寝た。


 両親が死んでから、僕は毎晩九時には寝ている。


 そうすることで、寂しさが紛れる気がしたんだ。


   ◆


「さてと、荷物はこんなもんかな」


 次の日の土曜日の朝、僕はリュックに荷物を詰めて、近所の公園に行くべく軽い足取りで外に出た。


 僕の家の近くには大きな公園があって、休日はペットを連れた人達の散歩コースになっている。


 公園のベンチスペースは、ペットを飼う人達の溜まり場で、いつも色々なペットを連れた人達に会える。


 ペットを飼っていないけど、動物に詳しい僕は、いつのまにかみんなの相談役になっていた。変な話だよね。


 でもそれが楽しくて、毎週楽しみで、僕は上機嫌に鼻歌を歌いながら小走りになってしまう。


 僕がその猫を見たのは、次の瞬間だった。


 大きな道路を挟んだ向こう側の道に行って、左に真っ直ぐ歩くと公園が見えて来る。


 ぼくが信号を待っていると、その向こう側の道を、一匹の金毛の猫が歩いきた。


 なんだろう?


 見たことの無い種類の猫だけど、雑種かな?


 その猫と僕の目が合った。


 猫が僕に向かって走って来るのと、右手からトラックが走って来るのはまったくの同時だったと思う。


「危ない!」


 何も考えてなんかいなかった。


 その時の僕は、ただ衝動的に、勝手に走り出していたんだ。


 視界が真っ白になって、僕の視界には金色の猫しか映っていなかった。


 耳に届くのはトラックのブレーキ音だけ。


 肌には春の風を切って走る感触。


 あとは……全身をまるごと持って行かれる、圧倒的な衝撃だった。

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