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子作りがんばってください

「ん、ちょっと待って。人間しか男の子を作れないって事は……」


 頭の中でイケナイ想像が広がって、僕は頭を振るって想像を打ち消した。

 まったく駄目だぞ僕。そんなはしたない事を考えるなんて。


「ニンゲン様におかれましては、絶滅種を出さぬよう、全種族の男子が生まれるまで励んでいただきたく思います」

「何を!?」


 せっかく打ち消した妄想が一〇〇倍になって返って来て、僕はカウンターパンチを喰らった気分だった。


「何をって当然、こう」

「言わないで!」


 最後まで言い切られる前に、思わず声を張り上げた僕とは対照的に、ファノビアさんはクールな表情を崩さない。


「地球の言葉でセック」

「だから言わないで!」


 僕はビシッと、手の平を突き出した。


「解りました」


 ファノビアさんは、また気持ち良く手を叩いた。


「皆様、今回のニンゲン様は大変オクテでピュアな方です。以後、気を付けるように」


 ファノビアさんの良く通る声。


 各々の種の子達や、近衛兵であろうライオンの少女達は頷いたり、隣の人と目配せをしたり、何かを囁いたり、それぞれの反応を見せる。


 一応、みんな納得した様子で、謁見の間は静寂を取り戻した。


 すると、今度はお姫様のレオナが話し始める。


「ニンゲン様、畏れ多いですが、お名前を聞いてもよろしいでしょうか?」

「名前、ああ、そういえばまだ名乗っていなかったね僕は日本から来た」


 僕は名前を告げて、するとファノビアさんがポケットから取り出した紙に何かをメモすると、近くの兵士に渡した。兵士は紙を持って、謁見の間から走り去った。


 多分、僕の名前が書かれているんだと思う。


「ありがとうございます。ではニンゲン様。早速で申し訳ないのですが、我々の願いを聞いて頂けるでしょうか?」

「お願い?」

「はい」


 言うやいなや、レオナは僕の前に膝を折った。その後を追う様に、僕以外の全員が僕に対してかしずいた。


「現在、我が王国は存亡の危機にひんしております。どうかアダム様と同じく、全動物を統べる統一王の座に就き、この世界を平穏に導いて下さい」


「そ、存亡の危機!?」


 まるでRPGゲームの勇者みたいなシチュエーションに、僕はようやく落ち着きかけた混乱にターボがかかる。


「存亡の危機って何? サタンでも攻めて来るの? だったら僕には何もできない気がするんだけど」

「いいえ、違います」


 レオナは顔を上げて、僕を真摯な眼差しで見つめる。


「敵は帝国軍です!」


 僕は、今日何度目になるか解らないフリーズを起こした。


「……へ? ……て、帝国軍?」


 また安直な名前だな。映画とかアニメとか、なんで悪の国っていつも帝国なんだろう?


「はい。我が王国は哺乳類族の住む平和な国でした。ですがある日、東の山脈を越えて、帝国を名乗る種族が攻め込んできたのです」

「それって、戦争って事?」


 少しショックを受ける。いくら人化したとは言っても、動物が人間みたいに戦争をするだなんて、僕は信じたくなかった。


「確かに、我々も戦いをしなかったわけではありません。歴史書によれば、かつては群れのボスをめぐって多くの決闘が行われましたし、多くの群れが出来ると今度は土地一帯のボスを決めるための決闘が行われました。群れが大きくなると、縄張り争いとして戦遊戯も行われました」


「戦遊戯?」

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