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特殊能力課捜査班  作者: 東雲杏
1章
2/3

1章─2

「お世話になりました。」

白坂は思ってもいない言葉を口にした、理由を挙げるとするならば『社会人としての義理』といったところだろうか。彼女は、この会計課からの移動が決まった。

厄介払いが出来たと、喜々とした表情で見送る上司、アイツの厳しい目から逃れられると安堵(あんど)の表情をうかべる同期、怖い先輩がいなくなると聞いて胸を撫で下ろす後輩。白坂は、改めて見ると酷い職場だ。と悪辣(あくらつ)さを再確認し今の課を後にする。


その白坂が建物から出ると、目の前に車が止まっていた。車から降りてきたのは彼女に封筒を渡した男だった、本部まで送ると告げられ、白坂は車に乗り込む。車内の気まずい雰囲気に呑まれつつも、何も話さないまま本部に着いてしまう。感謝の言葉を述べその男はまた車を飛ばし去って行く。


本部の入口から歩くこと数分、彼女は西棟へ到着した。

「ここが、西棟…?」


彼女のこれからの職場となる西棟はかなりボロボロだった。蜘蛛の巣が張ってあり手入れもされていない様子だ。その事に驚いたが、気にしていても仕方がないと(かぶり)を振る。そして白坂は、西棟の扉をゆっくりと開けた。

ギィィ・・・と錆びているのか扉を開閉すると金属が擦れる音が響く。屋内は思ったよりも暗かったらしく自身のスマートフォンのライトで照らす。1階は使われておらず、人もいない。あるのは書類の山々だけだった。ふと、好奇心で足元にある紙を拾って読んだ。


「解決済、50年前の記録…?」


記されていた日付は今よりも50年も昔のものだった。

解決済とかかれているその紙には、事件の概要も書かれていた。


「い、異能力者(いのうりょくしゃ)発火能力(パイロキネシス)?」


連ねられているのは、全くもって理解し難い内容だった、異能力者だの、発火能力だの見慣れない言葉が目に飛び込んで来たので驚いたのだろう、白坂は自分の目が可笑しくなったのかと目を擦った。

だが、そこに書かれている文字が変わる訳もなく、白坂は頭を抱えた。変な所に来てしまった、と。

深く溜息をついて、持っていた紙をそっと足元へ戻すと、自分の所属する部署へと歩みを進める。

2階、3階へと上がり地図に記された、部屋へと到着した。


これまで通ってきた部屋とは違い、部屋の中のライトは明々(あかあか)と点いていて人の話す声も聞こえる。

少し安心したようにホッと一息おき、今度は真っ直ぐその部屋をみつめノックをする。そのノックから数秒後、柔らかい声で『どうぞ。』と声がかかった。

引き戸を引くとそこには、8人分のデスクとソファ、そのソファに座る男性達、自身のデスクであろう場所で寝ている男性、そして一つの扉の前に居る、彼女を招き入れたであろう男性が立っていた。


「初めまして、本日からこちらに配属となりました、白坂氷織と申します。」


白坂は、そう挨拶し軽く頭を下げた。すると一人の男性が声を上げる。


「白坂さん、だね。ようこそ特殊能力課へ、ここは捜査班。ボクは副班長の、紅井火月(くれないかづき)


柔らかく笑い自己紹介をする男は辺りを見回しデスクで寝ている男に声をかけた。


「班長、新人さん来られましたよ。」


声をかけられた男は寝ぼけ(まなこ)でこちらを見て、にへらと笑い呂律(ろれつ)が回っていない状態でこう言った。


「班長の、蒼野(あおの)トキ…よろし…く…ぅ。」


そう言うと、またそのデスクに倒れるように寝てしまった。紅井は苦笑しつつ、彼女にごめんね。と謝った。

白坂は頭を横に振り、気にしていないことを告げる。すると彼は、また柔らかく笑いソファに座っている男たちにも自己紹介をするよう促した。

すると1人の男が自分からと手を挙げた。


「僕は、黄宮飛斗(おうみやひゅうと)です、よろしく。」


そう言って黄宮という男は手をヒラヒラと振り、次はあなたどうぞ。と隣の男にバトンタッチする。


「はーい!俺は、草葉翠(くさばみどり)でっす!よろしく!」


白坂は、その名に聞き覚えがあったが今は自己紹介中ということもあり発言を控えていたが、その事を向こうから話し始めてくれた。


「俺は、陰陽師(おんみょうじ)で有名な草葉一族の生まれなんだー。」


なるほど、と白坂は合点がいったような表情をした。

草葉一族・・・陰陽術(おんみょうじゅつ)で世界で3本の指に入る有名な一族だ。なにせ、草葉に教われば陰陽術の全てが解るとまで言われ今や、世界で知らない者はいない程である。


そして、次は俺な。と声を発したのは草葉の隣に座る男だ。


藤谷剛(ふじやつよし)だ、よろしく頼む。」


3人の男がそれぞれ自己紹介を言い終えると、これで全員かな?と紅井が話し出す。すると黄宮は、まだ1人来てないんじゃないですか?と紅井に問う。


「あぁ、そうだった。」

紅井は、思い出したようにハッとした顔をした。失敬、失敬。と苦笑いを浮かべる紅井に白坂は問いかける。


「まだ来られててない方が?」


紅井はあぁ、君と同じ今日移動して来るんだ。と言い時計を見る。


「んー、集合時間はとっくに過ぎてるはずだけど…」


と次の瞬間、大きな扉を開く音と遅れてしまってごめんなさいっ!と言う女性の声が聞こえた。

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