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転生遺族の循環論法  作者: はたたがみ
第1章 民間伝承研究部編
130/165

転生遺族と少女の覚醒20

 きっかけは瀕死のイデシメたちを介抱していた時だった。自分たちの世界の道具を使えば手当てが楽になったりしないだろうかと縦軸なりに考えたのだ。

 こちらの世界へ転移してくる直前の出来事から考えるに、自分たちが転移できたのは〈転生師(トラックメイカー)〉が理由だ。おそらくあの時転移の能力が覚醒し、ディファレがそれを何らかの方法で発動させたのだろう――縦軸は己の考察を検証することにした。

 イデシメたちの容体がある程度落ち着いたのを見計らって〈転生師(トラックメイカー)〉の転移の能力が発動するよう念じた。するといつの間にか元の世界の自分の部屋に帰ってきていた。

 既に日は暮れており両親も帰ってきていたため、今までどこにいたとかいつ帰ったとかしつこく訊かれたが、友達の家で勉強していたと言って誤魔化した。

 虚家に居候中の音についても自身と同じ言い訳を使い、今は部屋で寝ていると告げた。

 その後軽いシャワーと着替えを済ませてから再び彼にとっての異世界に転移。この時点で縦軸は魔力の消費が想像していたより遥かに少ないことに気がついた。2つの世界を毎秒転移し続けても1日程度では魔力を使い切ることなど不可能なくらいの消費量だ。

 ちなみにこの後縦軸を見つけたていりからどこで何をしていたのかについて両親以上に厳しい追及を受ける羽目になり、何故か悪いことをしてしまったような気分で一連の出来事を説明することになったのは別の話である。

 とにかくこのことがきっかけとなり、縦軸たちは頻繁に元の世界へ帰っては準備が整い次第異世界へ一旦戻ることを繰り返すようになった。おかげで縦軸は転移の能力もすっかり使いこなせるようになった。


「脱出成功……」

「虚〜でかした〜」

「いやぁ助かったよお兄ちゃん。音ちゃん守りながらだとキツイからね」


 3人は縦軸の部屋に戻っていた。ディファレと音が

縦軸のベッドを占領し、弾き出されるような形で縦軸が床に転がっている。


「これからどうする?」

「ワタシとお兄ちゃんはもっかい向こうに行くよ」

「え、私は?」

「危ないから待機」

「何でよ。魔法あるじゃない」


 縦軸が1人で世界間を行き来した際、魔力の消費は微々たるものだった。数人転移させた程度で魔力切れを起こす筈が無い。にも拘らず縦軸たちが初めて異世界を訪れた時、彼は気を失ってしまった。一見矛盾が生じている。

 ていりに問い詰められて転移に成功したことを話した直後、縦軸はこの矛盾の答えをディファレに訊ねた。その結果、現在の縦軸たちはディファレがかけた防御の魔法により大抵の攻撃では傷ひとつ負わない状態になっていることが判明した。微が本気で殴っても多分耐えられるとのことだ。

 どうやら縦軸たちを転移させると同時に縦軸の残りの魔力を全て費やし、これが縦軸が気を失った原因となったらしい。ディファレ曰く彼女は魔法の才能を全くと言っていい程持っていなかったそうだが、防御の魔法だけは血の滲むような努力を重ねて会得したそうだ。

 つまり今なら音が戦場に顔を出してもリスクは無いということになる。


「最悪私を盾にして敵に突っ込むなんて手もあるわよ」

「良心が痛む。それとさっきから微が危ない場所に後輩を連れて行かないでって駄々こねてるんだよ。ワタシやお兄ちゃんが行くのでさえ渋々受け入れてなくもないなんだから、音ちゃんは流石に無理」

「なら仕方ないか」


 音は諦めざるを得なかった。


「虚、先輩とディファレを頼んだわよ」

「任せろ。ディファレ、行くよ」

「いつでもどうぞ」


 縦軸はその場で姿勢を正し、合掌した。


「〈転生師(トラックメイカー)〉」


 2人は再び、向かう。




 この身体になってから分かったことがある。

 微は足が速かったり力が強かったりするだけじゃない。目もいいんだ。自身が出せる限界のスピードで動いても自分の位置を正確に把握できるくらい、物を見る力に優れている。新幹線やジェット機ぐらいならカタツムリを眺める感覚で視認できる。


「ありがとうございますキナさん。すごいんですね。最近の回復魔法って」

「ふっふっふ。名付けて未来回復(アンゴルモアヒール)。予めかけておくことで大きな傷を負った時に自動で治してくれる魔法よ。首を刎ねられたって関係無い。全員無事よ」


 普段は周りのスピードが普通と認識して生きてるから、きっと他の人と同じように世界が見えている。


「あいつら全員、倒したらあなたに預けるってことでいいんですよね」

「ええ。この国の憲兵じゃ持て余すかもだし、私たちも訊きたいことが山程あるから」

「了解です」


 微は今までずっと力を抑えてきた。自分が加減しないと人を傷つけてしまうと自覚できるようになった頃から、学校の運動会でもほとんどの力を出さなくするようになった。父さんと遊んでいて怪我させてしまったのが大きかったのだろう。


「カール・ツインステアーズ。スキル〈交渉〉。相手に言うことを聞かせやすくなる。貴族の生まれだが、能力を悪用されそうになり嫌気がさして家出」


 ワタシはずっと奥に潜んでた。だから成長して大人と大差がなくなった彼女の体がどんななのか、今ひとつ分かっていなかった。


「ゴードン。スキル無し。純粋に肉体を鍛えて強くなった。セシリア。スキル〈命魔変換〉。自身の生命と魔力を双方向に交換できる。他人に触れれば生命や魔力の一方的な吸収も可能。スキルを利用すれば見た目をある程度若返らせることもできる。年齢不詳」


 修学旅行の時、この子から主導権を無理矢理奪って出てきたけど、正直困惑した。戦って戦場を生き抜いた前世のワタシの体が、まるで赤ん坊か何かのように感じられたから。


「コヨ。スキル〈筋力増強(ブースト)〉、〈望月之神獣〉。前者は身体強化、後者は詳細不明。上位の魔物フェンリル」


 この体は、暴れさせてはいけない。ワタシが扱ってはいけない。人を殺す方法を知っていて、躊躇わずに殺すことができて、それでいてこの体の力を上手く抑えられないワタシには、明け渡されてはいけない代物だった。


「エーレ。スキル〈強制詠唱〉、〈情報公開〉。前者は他人がスキルや魔法を使う時に必要無くても無理矢理呪文を唱えさせる。後者はスキルや魔法を使うとその内容を勝手に話してしまう。昔はどちらも常に発動していたが、訓練の末に制御可能となった」


 ワタシが持ってはいけない力、微にしか許されない力。


「それで敵はえーっと……適当に拾った人間とドワーフ、自分の力で自分をエルフの英雄だと自身や周りに思い込ませてるエルフの子供――がおかしくなったやつ。それと生前のノヴァが遺した研究成果を利用して作った上位のスライム侵略種(ショゴス)のニコラか」


 本来ワタシが出る(誰かを傷つける)ことは御法度だけど、今だけは別だ。


「ふむふむなるほど。スキル〈理想論(プラトニック)〉。2人以上で挑まないと倒せない。しかし侵略種(ショゴス)は大量の小さな個体が集まった群体生物であり、要するにあいつを作るパーツ1個1個が同じスキルを持ってるせいであり得ない人数を揃えないと倒せないようになってるんだね。だから不死身か」


 この子の安全を守るため。そしてお兄ちゃんたちを助けるため。特別にワタシが参戦する。


「〈連星〉解除っと。うん、大体分かった」


 こいつらは敵だ。おまけにワタシの味方にはとっても凄い回復魔法の使い手がいる。手加減はいらない。


「ふぅ――お姉ちゃん、いける? ……うん、打ち合わせ通りにいくね。ディファレも気をつけて。……分かってる」


 5秒後に愛お姉ちゃんと先生が転移(テレポート)してくる。それまでにこいつらを全員倒しておくのがベストだ。


「グァァ……アアアアアア」

「ゲヒェ、ゲ、ゲヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェ!」

「グゥゥゥ、ヌゥグァァアアアアアア!」


 怪人プリンキピアが無数のうねる触手をこちらへ伸ばし、怪人ロウソクが大顎をガチガチと鳴らしながらワタシ目掛けて突っ込み、怪人クロイ=ヌハルが我を忘れて適当に突進してきていた。

 彼らが暴れた衝撃で、石畳や辺りの建物が瓦礫と化して宙を舞った。

 間も無く彼らはワタシに届く。

 だけど関係無い。


「……!」


 目を見開く。


 息を吸い込む。


 意識を研ぎ澄ます。


 この子の足は速い。おまけに目もいい。だから今のワタシには、意識を多少集中させてしまえば――こいつらはおろかこの世の全てが、()()()()()()()()()()()()


 瓦礫が宙に浮いている。


 音が聞こえない。


 ワタシだけが動ける。


 世界の時間を、ワタシが置いてけぼりにしたみたいだ。


 ワタシは全てが停止した世界を闊歩するかのように奴らの横を通り過ぎ、ついでにガラ空きの胴体をぶん殴った。隙があったので何度も殴った。

 そして始めは目の前にいた奴らがいつの間にやら後ろにいるようになった頃、ワタシは意識を通常の世界へ引き戻した。音が鳴り、瓦礫が落ちる。背後で敵が倒れた。

 まだ時間があるようだ。


 再び意識を集中させる。


 また世界が止まった。


 もう1回彼らの横を通り過ぎ、今度は思いっきり蹴りを入れた。余裕があったのでカッコつけて頭に回し蹴りをしてやった。


 集中終わり。世界が普通に動き出した。

 怪人たちは倒れた。


「ああ……最っ高」


 初めてちょっぴり本気を出した。相手が死なない範囲で、初めて全力でこの子の体を使った。

 本当に、すっごくすっごく最高だ! 何なんだこの並外れた身体能力は!

 前世のワタシはどれだけ鍛えても後もう少し力が強ければ、もうちょっとだけ速く動ければって思い悩んでばかりだったのに。この体のスペックには何ひとつ文句がつけられない。

 心臓が信じられないくらいドキドキしてる。本気を出したからかな? ワタシの感情のせいかな?

 ねえ微、ワタシ、あなたの体が大好き!


「――はあああああああ!!!」

「うおっ、やめろバkぎゃああああ!」


 お姉ちゃんと先生が現れた。5秒経ったようだ。


「ディファレ! 怪我は無かった?」

「うん。お姉ちゃんも大丈夫そうだね。じゃあ後は」

「愛ィ……親友に手加減無さすぎじゃないかい?」


 たった今お姉ちゃんに殴り飛ばされた原前先生とスライムのニコラが立ちはだかっている。


「親友だから、最小限の怪我で済ませるために全力で倒そうとしてるんです。抵抗してるあなたが悪い」

「おうおう溜まってんね。12年間不自由な思いしてきた反動かな?」


 先生、所々火傷の跡があるし服もボロボロになってるな。お姉ちゃんの得意な魔法は空間と雷だっけ。まあ空間ごと歪められて捩じ切られないだけ優しい方か。

 何はともあれ後はあいつらをやっつけるだけだ。


「お姉ちゃん、剣無い? 剣」

「剣?」

「そう。素手で多少暴れてみたんだけどさ、やっぱり得物があった方がいいなって」

「分かった。じゃあこれ」


 お姉ちゃんから丁度剣と同じぐらいの長さがあるヒノキの棒を渡された。お姉ちゃん愛用のヒノキの棒シリーズが一角、ヒノキの棒・長剣だ。本物の剣を握る前はこんなので鍛えてたっけ。


「いいね。軽いし落ちない」

「スキル〈絶対装備〉だよ。ディファレの意思以外で手放すことはできないから安心して」

「わーいありがとう! 宝物にするね!」

「あ、もらうんだ……うん、大事に使ってね!」


 ニコラは何だかんだいって殴ってくるだけだ。不死身なせいでどれだけダメージを与えてもすぐに復活するっていうのは厄介だけど、この王都ならとっておきの手がある。

 問題は先生だ。記憶魔法とかいう訳の分からない魔法のせいで何をしてくるか予想できない。またちょっと集中して気を失うくらいタコ殴りにしてやるのが最善策だろう。最善策だろうけど……。


「ディファレ、姉さん。作子は僕に任せて」


 そういえばここにはお兄ちゃんもいたんだった。さっきまでみたいに大人しく身を隠してて欲しかったんだけど、まあこうなるか。

 お兄ちゃんは賢い。テストでいつもていりちゃんに次いで2位を獲ってるぐらいには賢い。きっと大丈夫。


「「分かった」」


 息が合った。ちょっと嬉しい。


「お姉ちゃん、ニコラを王都(ここ)()()()に」

「え……? まさか!」

「分かったんなら早く。ついでにワタシたちも行くよ」

「かなり怖いけど分かった!」


「ニコラ、やっちまえ!」

「こんどこそぉこ〜ろ〜してやるぅ〜!」


 ニコラが迫る。でも遅い。


「はっ!」


 詠唱をすることも無く、お姉ちゃんはワタシたちを転移(テレポート)させた。




 お姉ちゃんたちが暮らすエウレアール王国ではある昔話が語られている。この国の始まりにまつわる物語だ。

 元々は小さな村しか無かったこの場所に、ある日突然『聖女』と呼ばれる人物が現れ、とても強い加護の力を残していったのだという。そして村はやがて大きな国へと発展し、元々村があった場所は王族や貴族が住まう地域となった。

 貴族街と呼ばれているその地域では未だに加護の力が健在であり、平民は近づくことさえ恐れ慄いている。

 聖女の加護――この力が及ぶ範囲に悪人が入り込んだ場合どうなるか? 簡単だ。とても苦しむ。


「うあ……あああああああ…………」

「作戦成功」

「ふぅ……私たちは何とも無いみたいだね」

「当たり前じゃん。悪人じゃないんだから」


 ニコラは喉を抑えてもがき苦しんでいる。今なら殺すことはできなくても無力化くらいはできるだろう。

 王様が住むお城のど真ん中に転移したせいでさっきから周りが騒がしい。さっさと終わらせよう。


「お姉ちゃん! お願い!」


 ニコラの頭を掴んで天高く放り投げた。城の天井を突き破ったようだ。


「任せて!」


 お姉ちゃんは跳躍した。そしてたった1回のジャンプでニコラの高度に追いついた。あの高さなら被害も出ないだろう。


「はあああああああ!!!!!」


 とどめだ。


「空間魔法 重力波(ユガミカグラ)!」


 お姉ちゃんの拳がニコラの腹にめり込む。次の瞬間、空間が歪に歪んだ。ワタシの立っている場所も少し揺れた。周りの連中はひたすら混乱している。

 ニコラはバラバラに引き裂かれ、その破片があちらこちらへ飛び散った。


「空間魔法 転移(テレポート)


 すかさずお姉ちゃんは魔法で飛び散った破片を全て回収し、ワタシの足元へ積み上げた。ニコラだった物は一応生きているらしく小刻みに震えている。


「キナさーん、いますか?」


 いないみたいだ。まあ流石に瞬間移動したワタシたちに数秒で追いつけるような距離でもないし、あの人でも限界があるか。


「ディファレ様」

「おん?」


 逃げ惑ってるその他大勢の中から1人のメイドが近づいてきた。どこかのお姫様かと思うくらい整った顔立ちで、まさしく雪のように白い肌をしている。おまけに一見普通のメイドと大して変わらないお淑やかな所作をしているが、明らかに只者ではないと分かるぐらい動きが洗練されていた。歴戦の兵士か暗殺者がメイドのコスプレをしていると言われた方がしっくりくる。


「お初にお目にかかります。私の名はオキシー。魔王様の使いです」

「ふうん。もしかしてリリィお姉ちゃんが前に会ったってメイドさんかな?」

「ご明察の通りです。私は雪と氷を操る魔物ウェンディゴが進化した氷嵐種(イタクァ)という種族であり、魔王様のメイドとして働く傍ら人間の国への潜入も担当しております」

「それで今はこのお城に忍び込んでたと」

「ええ。魔王様は人間との友好関係を築きたいと望んでおられるので、私が自主的に下見をさせて頂いております」


 自主的にって……。つまり主に黙って勝手に動き回ってるの? 魔王は思ってるより怖い人じゃないってお母さんが言ってたけど、いくら何でも怖くなさすぎるんじゃ……。


「キナは既にあの3人の拘束を済ませたそうです。そちらのスライムは私が引き受けます」

「あ、うん。よろしく」

「では失礼して――氷魔法」


 ニコラの破片たちが一瞬にして凍りつき、一塊の氷となった。

 オキシーさんはその氷を軽々と担いだ。


「またお会いしましょう」

「はーい」


 そこそこ大きな氷を担いだメイドは走り去っていった。


「あの人も魔王の手先だったんだね」

「お疲れ様お姉ちゃん。もしかして嫌だった?」


 お姉ちゃん――正確にはリリィお姉ちゃん――が以前キナさんと戦って殺されかけたという話は聞いている。キナさんによると元々殺すつもりは無かったらしく、その場で倒れていた村人たちもキナさんが襲ったのでは無く寧ろ保護して治療していたという事は既にお姉ちゃんに伝えてあるが、それでも死ぬかもしれないという恐怖を1度与えてきた存在に協力するのは気が乗らなくてもおかしくない。

 オキシーさんだって正体を隠してお姉ちゃんに接触してきた存在だ。信じろという方が無理な話だろう。

 まあ妹のワタシとしては、お姉ちゃんが死にたくないとか怖いとか思ってくれることは嬉しいんだけど。何せ前世の死因があれだったから。


「確かに全く怖くないとは言えないかもしれない。でも、今はあの人たちと力を合わせることがディファレや縦軸たちのためだと思うから」


 全く不自然じゃない。心からの笑顔だ。


「だからお姉ちゃん、全然平気だよ」

「……やっぱりほっとけない」

「何で⁉︎」


 戸惑うお姉ちゃんを引き連れ、ワタシは帰ることにした。




 キナは縦軸からここは任せてくれと言われてあまりいい顔はしなかったが、それでも最後は彼を信じて撤退することにした。既に捕縛したプリンキピアたちを連れてどこかへと姿を消している。


「作子、お前何がしたいんだ?」

「愛を助けたいんだよ。決まってんだろ」

「リリィ姉さんの呪いを何とかしようとしてるのも?」

「おう……って姉さん⁉︎」


 作子は仰天したが、一方の縦軸は何をそんなに驚くと言わんばかりに首を傾げていた。


「だって姉さんの記憶を持ってて中身もそっくりなんだろ? 本人も僕を弟って思ってたし」

「いやいやそうだけどさ。いいの?」

「姉さんが2人に増えるんだろ。お得じゃん」

「あーりゃりゃりゃ」

「まあそれは今関係無いとして……」


 縦軸は何も警戒していないかのように作子の元へ平然と近づき、左腕を彼女の後頭部に回すと互いの鼻が触れ合いそうな距離まで引き寄せた。


「お前一旦帰れ。お前のお母さんとお父さん心配してたぞ」

「へ……あ、うん」

「適当に誤魔化してあるから話合わせろよ」

「わ、わかった」

「〈転生師(トラックメイカー)〉」


 作子はいつの間にか縦軸の部屋にいた。


「おーい虚帰ったー? って、先生!」


 部屋着の音がノックもしないで入ってきた。作子に驚いて携帯電話を落としてしまったようだ。

 彼女の「先生」という言葉に反応したのか縦軸の母素子(もとこ)もやって来た。


「まあ作子ちゃん帰ってたの? 出張って聞いてたけど連絡取れなくて心配したのよ」

「あ、あはは……どうも」


 作子はどうしようもなくいたたまれない気持ちになった。




 辺りがすっかり寝静まった深夜、誰かがドアをノックした。


「むにゃむにゃ……んん誰っすかこんな時間に」


 安眠を妨害されて不機嫌気味の少女が玄関のドアを開けた時、そこには全身傷だらけの高校生ぐらいの少女が立っていた。


「は、初めまして……」

「うおっ声可愛いっ。じゃなくて誰っすか? てか大丈夫っすか?」

「あなたに……助け……」

「ちょっと? しっかりしてください! ちょっと!」

本作を読んでくださり誠にありがとうございます。

次回からついに第2章が始まります。

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