ペット
飼っていたペットが死んだ。
もう年で目も悪く、よく吐いたりしていて長くはないだろうとは思っていた。だがそれはあまりにも突然だった。
「おいで太郎」気分が悪そうでふらふらとしていた太郎を姉が呼ぶ。太郎はおぼつかない足で彼女の腕の中に入り、コテンと倒れ込んだ。
「〇〇。太郎死んじゃった。」彼女は太郎を抱きながら絞り出すように僕にそう言った。
姉が泣いていたのに僕は泣けなかった。それがなんだかとても恥ずかしくて「塾があるから行くね」とそこから逃げるようにして家を出た。
家に帰ってきた。もしかしたら帰ったら前みたいに吠えながら走り寄ってきて顔を舐めてくるかと思ったが、太郎は死んだままだった。触ると冷たく、硬かった。
そこで初めて涙が出た。ああ、太郎は死んでしまったんだと納得してしまったい、そこからはもう涙が止まらなかった。
それから数日はひどく家が静かだった。口うるさい母も、クソ犬呼ばわりして太郎を煙たがっていた父も、僕を奴隷のように扱う姉もなんだか元気がなかった。
太郎はみんなの中で確かに家族だったんだ。