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エピローグ

 リベラート様が戻って来てからちょうど一か月の月日が経った。

 相変わらず、彼の周辺はバタバタと慌ただしかった。リベラート様は無事に見習いから昇格したため、期間限定の騎士をやめ、公爵家を継ぐための準備に入ることに。

 しかし、すっかり騎士団に愛着が湧いてしまったのか、リベラート様は騎士団を離れることをずいぶんと抵抗していた。

 ただリベラート様は魔法の才もあり、騎士としても優秀だったため、時間がある時に騎士団に参加することは許されたという。

 

 既に将来公爵という大きな爵位を継ぐことが決まっているリベラート様が、騎士としての称号も得るなんてことは異例中の異例だ。

 しかしリベラート様は『魔法も二種類使えるんだから、称号も二種類あったっていいよね』と軽快に笑っていた。……自分がどれだけすごい人間なのかを、いちばんわかっていないのではないか。そしてそんな彼と近い未来結婚を控えている私はというと、今も変わらず、土魔法の研究に励んでいる。

 だけど、そんな私の周囲にも変化はあった。


 まず、お姉様は前よりも活発に婚活に励むように。リベラート様より権力のある男性はもう王族しかいないと思ったのか、今では近隣国の王族にまで目を付けているらしい。

 ……まだ人を地位や権力でしか見られないのかと悲しくなるが、お姉様はリベラート様よりいい男性と結婚することが今のモチベーションになっているため、もうなにも言うまい。

 ティオもそんなお姉様を見て、夢から覚めたように呆れていた。

『アリーチェ様の美しさも、一種の魔法だよな。必ず解ける時がくる』とティオが呟いていたが、一理あると思ったり……・

 ティオとは同僚として、いい友人関係を築いている。ティオはここの職場が好きらしい。これからも実家に戻る気はないらしいが、リベラート様は私のそばにティオがいることは若干気に食わないようだ。それでも本気で帰らせようとしないのは、心のどこかで信頼しているからではないか? と私は推測している。


 そして今日は、リベラート様が戻ってきてから初めての夜会が開催される。

 今回は、私は個人で参加ではなく――リベラート様の婚約者として、ふたりで参加する予定だ。誰かにエスコートされながら、あんな煌びやかな場所へ顔を出すことになるとは……。少し前なら、自分のそんな姿は想像もできなかった。


 夜会には、ルーナとカイルさんも顔を出すと聞いた。

 カイルさんはリベラート様から全部聞いていそうだが、ルーナとはなんだかんだ会うのが結構久しぶりになってしまった。

 私がリベラート様とまた一緒にいるところを見られたら、『どういうことか説明しなさい!』って迫られるのが目に見えている。だけどルーナなら、私がリベラート様が一緒にいることを喜んでくれるだろう。

 

「フランカ、入ってもいいか?」


 コンコン、とドアがノックされ、リベラート様の声が聞こえた。

 屋敷まで迎えに来てくれたリベラート様が、私の準備が終わるのを待ってくれていたようだ。

 お姉様は一足先に夜会へ出かけたため、鉢合わせしないで助かった。未だにお姉様とリベラート様の仲は最悪だ。リベラート様はなにも気にしていないようだが、お姉様は人生で初めて自分をフッたリベラート様を見ると、フラれたトラウマが蘇るみたい。


「どうぞ」


 返事をすると、完璧に準備を終えた正装姿のリベラート様がひょっこりと姿を現した。

 いつも下りている前髪がセットで上げられ、額が露になっている。色気と男らしさが増しているような……こんな素敵な人の隣を歩くのかと思うと、改めて緊張しちゃう。


「お嬢様も準備が終わりましたので、なにか気になるところがありましたらお呼びください。私は一度失礼いたします」


 そう言って、準備を手伝ってくれていたメイドは足早に部屋を出て行った。私とリベラート様をふたりきりにしようと、気を遣ってくれたのだろう。


「フランカ……すっごく綺麗だ! こんなお姫様をエスコートできるなんて鼻が高いよ」

「それはこちらのセリフです。……かっこよすぎてずるいです。ほかのご令嬢に言い寄られたらどうするんですか」


 まだ言い寄られてもいないのに、嫉妬心丸出しで拗ねる私を見て、リベラート様は驚いた顔をみせた。


「びっくりした。君からそんなかわいい言葉が聞けるなんて」

「……どうせいつもかわいくないことばっかり言ってますよ」

「はは。拗ねてもかわいいな」


 私の膨らんだ頬を人差し指でぷにぷにと押しながら笑うリベラート様を見ていると、私まで自然と笑顔になった。


 ――誰かに注目されたい。見つけて欲しい。愛されたいし、愛したい。

 それがきっと、幸せの道に繋がる。だって、お姉様はいつも幸せそうだから。

 幼い頃、私はそう思って魔女に〝恋がしたい〟とお願いして、〝魔性の女〟にしてもらった。


 時が経ち、その肩書を手放して、私はただの子爵令嬢に戻った。


 そして今、私は幸せかと問われると――答えはイエスだ。

 

 〝魔性の女〟にはなれなかったけど、それでいい。

 たくさんの愛を得ることはできなかったけど、それでいい。


「フランカ、俺たちはいつ結婚パーティーを開こうか? 明日? 明後日?」

「結婚にはいろいろ準備が必要だから、そんなすぐには無理かと思いますけど」

「準備なんてお互いの心の準備さえできてればいいのさ。俺は今すぐでも構わないよ」

「もう。また無茶なこと言って。リベラート様ったら。……ふふっ!」


 たったひとつ、本物の大きな愛を手に入れたから。


「フランカ、俺は君を死んでも離さない。来世でも必ず結ばれよう。未来永劫に、俺の愛は君の魂を追い続けるよ」


 ……ちょっと重いけれど、愛に飢えていた私には、これくらいがちょうどいい。


                               END


昔書いたものを大幅改稿しました 2024.1/5完結

お読みいただきありがとうございました!


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