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お嬢様はブラコンを目指します(1)

私は最初で最後の「異世界からのプレゼント」を探すべく、街に連れてきてもらいました。






父様とおじい様にも神様との約束について話した。

贈り物に関しては、父様もおじい様も大変喜び、二人もそれぞれ小さな贈り物を同封する事に決まった。




ただもう1つのお願いに関しては父様は悲しそうな顔をして言った。


「アリサ……私は確かにソフィがいなくなり、とても悲しかったし絶望の日々を過ごした。でも彼女と出会わなければよかったなどと思った事は一度もない。今だって後悔はしていないんだ。」


きっとあちらの世界の人々も同じ気持ちを持っているのでは?と言いたいのだろう。


「父様、ありがとうございます。…でも、もう決めたのです。

わたしはこれからアリサ・ローゼンベルクとして生きていきます。

もう前しか見ないと決めたのです!」


改めて決意表明するかのように言う。

わたしはどこに居たとしても私らしく、楽しく、自分の人生を歩むつもりだ。だから周りにもそうであってもらいたい。

父様は切なさげに私を見つめた。


そしてフランツは娘の気持ちを汲むように、わざと明るい声を出した。


「……そうか、それなら……今日は街にでも出てみるか?ソフィへの贈り物を探すのにちょうどいいだろう?」

「え!いいのですか父様!?

あ、でも…お仕事があるのではないですか?」

無理はなさらないでくださいね!」



アリサは今すぐにでも出掛けたい気持ちを必死に隠しているつもりらしいが、目がキラキラと輝いている。

フランツはちょっとくすぐったい気持ちになった。


「くくく、娘に心配されるのもいいものだな。

いや、でもいいのだ。今はアリサと出かける事の方が大事だ。仕事は・・・どうにかなるだろう!」



え、大丈夫ではない気配満載ですよ、父様!!?

でも父様がそう言うなら、わたしは外の世界を見てみたいし。スルーさせて頂こう、うん。

父様の部下の皆さん、ごめん。


「ではエリックにも声をかけて来てもいいですか?」


「ああ、もちろんだ。3人で出かけよう」



わたしはルンルンだった。

この世界に来て2日。

早速外の世界を見れるのだ。


母の故郷であるこの世界に私はとても興味があった。

母が 16 歳まで過ごしたこの地には、どんな物があるんだろう。

どんな事が待っているんだろう。

私は浮かれていた。


浮かれる私とは対照的にエリックは、馬車の中で大人しく座っていた。

まだ5歳のその男の子は、年齢にそぐわない落ち着きを払っていた。



「わああああああ、わぁわぁわぁ!!

あれは何?あれはなんのお店?

わ!あの子が持ってる物は?

え!かわいい!あれかわいい!!

近くで見たいな、あれは一体何なのかしら??!」



中身の年齢が 16歳の私は、明らかにエリックよりも子供じみた反応をしていた。

はっと気がついた時には、父様は笑いを堪えいた。

肩が揺れている。



は、はずかしい!!!



チラッとエリックを横目でみると、驚きを隠すことなくわたしを見ていた。



うううううう、更に恥ずかしい!!


精神年齢逆なんじゃない?

って思うほど落ち着いているエリックに声をかけた。



「えっと・・・エリックはよく街へは来るの?」


「いいえ、僕はあまり外にはでません。アリサ様は外が・・お好きなようですね」


ちょっと!!エリックも笑ってるじゃない!!

あー、もう、ほんと自分のバカ!!


「ちょっとエリック……アリサ様はやめて?

できたら…………姉さまって呼んでくれると嬉しいのだけど……」


「…姉さまですか?」


「だ、だめ?私ずっとずーーっと、兄弟が欲しかったのよ。だからエリックと姉弟になれて本当に嬉しいの。だから……ね!お願い☆」


上目使いできゅるるーんと目を潤ませお願いする。


アリサ必殺!!ぶりっこお願いモード☆☆


中身はこんなだが、見た目はピカイチの美少女である。

エリックは一瞬で赤くなった顔をそらす。


「おねがーい!おねがーーーい!」

しっこく迫る。我ながらあざとい。

が、使えるものは使う!それがわたし。

ふふふふふふ。


「わ、わかりました!わかったから、ちょっと離れてください。ね、姉さま....」



きゃあああああああ!!!

美少年からの姉様呼び頂きましたーーーー!!

いいわーいいわーー!美少年っていいわーーー!!!


きゃあきゃあと歓喜する私とタジタジのエリックを父様が微笑ましく眺めていた。



馬車は街の中心部まで来て止まる。

ここからは徒歩のようだ。


「ふあああああああ。すごい!!」


まるで異世界!いや、異世界なんだけど。

そうじゃなくて、なんていうの?

あの千葉にある某有名テーマパークに一歩踏み入れた時のような感覚っていったらいいのかな?

違う世界に迷い込んだような。。

あのワクワク感だ。



「アリサはどんな物が見たいんだい?」


「母へのプレゼント探しもしたいですが、まずは街を見てみたいです」


「よし、じゃあまずはフラフラ見学してみるといい。裏道に入ると治安が悪くなるからね、大通りから外れてはいけなよ。ジェラルド、君に二人を任せよう。わたしも用があって少し外すよ?その間ジェラルドが君たちについているから、彼になんでも聞くといい。欲しいものがあれば彼に買ってもらいなさい」


「はい、分かりました父様」


「はい!父様、気をつけます!ジェラルドさん、よろしくお願いします」


「お嬢様、私の事はジェラルドとお呼びください」


彼は昨日、私が失神から目覚めたとき、脇に控えていた無表情の従者だった。


歳は・・13歳くらいだろうか?

まだまだ若い大人とは言えない彼に子供2人を任せるなんて、彼はよほど信頼されているらしい。


見た目は母そっくりな私なので、この街にとても馴染んで見える。

でも私から見た世界はヨーロッパの国にタイムスリップしてしまったかのようで、何となく歩いているだけでちょっと緊張する。


でもそんなのは一瞬だった。


私は見たこともない売り物、食べ物、とにかく見るものすべてに夢中になってしまった。

そしてお決まりのアレをやらかしてしまう。


そう、迷子だ。


昔から迷子の天才と両親に呆れられていた。

だって気になるものは、手にとって見てみないと気がすまないんだもーん!!


来た道を引き返すか悩んでいると、ふと、叫び声にも似た痛々しい声が耳に入った。


なんだろう?


多分こっちから聞こえた気がする。

わたしは声が聞こえた方向に体を向ける。

どうしよう。父様に裏道には入ってはいけないと言われた。

今はエリックもジェラルドもいない。

元の16歳の体なら、私もそれなりに護身術で対応できる自信がある。

でも、今の私は6歳。

思いっきりグーパンをかましても猫パーーンチくらいの威力しかないだろう。


よし、急いで2人を探して、ついて来てもらおう。

そう決めた瞬間。

いやな物が目に入った。



私と変わらないくらいの歳の男の子が、如何にも悪そうな顔をした男に踏みつけられている。しかも男の子は怪我でボロボロだ。血も滲んでいるように見える。


なんてことを!!!!!


私はさっき決めた事など忘れ、男の前に飛び出していた。


「あなた!!小さな子供に対してなんてことをするの!

これは立派な虐待よ!!足をどけて!!!」


男は何事かとわたしを振り返った。


しかし相手がただの子供だったので、安心したのか私を睨みつける。


「お嬢ちゃん、身なりからしてどっかの貴族か?余計な口は出さない方が身の為だぜ?

こんな獣人なんかの為にな!」


「獣人???」


「お嬢ちゃん獣人しらねーのか?ほら、これだよ、獣の耳と尻尾。みえんだろ?」


そう言って男は少年の狐のような尖った耳を引っ張る。

少年の表情が歪む。


「ちょっと!やめてあげて!!痛がってるじゃない!!」


「いいんだよ、こいつは獣人のくせに力がなくて全然役にたたない!無駄な金使わせやがって!せめて払った金の分だけでもこき使ってやるからな!!」


男は少年を蹴り上げた。


「な!!あなたはこの子をお金で買ったの!!?ここでは人身売買が認められているの?!」


「お嬢ちゃんなんもしらねーのな。…………本気のお貴族様ってことか」


私を見る目が変わる。やばい。

これは私を狙っている目だ。

このまま自分も売り飛ばされるんじゃないかと言う気がした。

もしくは父様に身代金でも請求するのだろうか。

その考えが正しいかのように男が距離を詰めようとしている。

男の顔が卑しい笑を浮かべて近づいてくる。


いや!!気持ち悪い!!近寄らないで!!こないでよ!!!!!


そう思うのだが、声がでない。怖い!!!!!

腕を掴まれそうになり、私は思わず目をつぶる。

足元に転がる傷だらけの少年を必死に抱き寄せ。

そして心の中で叫んだ。



こないで!!!!!!!!!!



すると、何故か目の前が一瞬ピカッと明るくなった。

そしてドーン!!と大きな音がして黒煙があがる。

恐る恐る目を開けるとあの男は黒焦げになり失神していた。

な、なに!?一体なにが起こったの!!?

呆然としていると、後ろから私を呼ぶ声がした。


「アリサお嬢様!!!」

「姉さま!!!」


振り返るとジェラルドとエリックがいた。


わたしは安心したと同時にまた意識を失ってしまった。



この世界でもいろんな事件に巻き込まれる、引き寄せ体質の主人公です。


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