お嬢様になりましてよ!(2)
イケメンパラダイスなので、神様もイケメン。
威張ってるようで、とっても優しい神様。
先程の部屋に戻ってきたわたし。
どうやらここがわたしの部屋になるらしい。
やっぱり広いな…。
1人だとちょっと怖い。
そういえば、神様がまた来てくれると言っていた気がする。 話したいことがあると。 一体なんだろう。
わたしも聞きたい事が山ほどあり、早く来ないかなとそわそわしていた。
すると見計らったかのように神様が突如現れた。
「わあああぁぁぁ!!!」
突然の事に驚いたが、神様の
「来てやったぞ!」
といつもと変わらない一言に気が抜けた。
「急に現れないでくださいよ!!!」
「いいのだ、神だからな!」
いや、そうじゃなくて。
常識的な問題を…あぁ、神様には人間の常識なんて関係ないのか……
ま、いいや。それはさておき…
神様に改めて問いただす。
「なんでわたしこんな小さくなっちゃったの?!」
「まずそこか」
「そこです」
………。
「ん“ん”、まあいい。
お前ここに落ちてくる間に何かに触れたりしなかったか?」
「落ちてくる間………
あ!!?触れました!!なんかふわっと光る何かに!で、わたしの周りがぽわ~~っとなって…」
「それだな」
「それですか」
………。
「え、いや、結局あれなんなんです?」
「あれは時の光と言って、どの世界にも共通する時間軸を管理している光だ。それを掴んだから、お前の時間軸がおかしくなったのだろうな」
「な!!どうにかならないんですか!?」
「ならん」
「ならんですか・・・」
………。
「で、じゃあ今の私は一体何歳なんでしょうか?」
「調べてやろう。」
神様は私の頭に手を置いた。
「・・・・6歳だな」
「ろ、6歳・・・!!?…マイナス10歳。」
予想通りっちゃぁ、予想通りなんですけど。
やはりショックが大きい。
人生10年もやり直しだなんて!!
はああああああああああ。
「じゃあ次いいですか?」
「いいぞ」
「私ってこの世界で魔力って使えるんですか?」
「ああ、使えるぞ。手を出してみろ」
「解除」
え???
解除???
その瞬間ぶわああああああっと体の中に何かが巡った。
もしかしてこれが魔力!!?
神様を見つめる。
神様は何も言わず頷いた。
そして私はふと感じた疑問を口にする。
「神様今「解除」っていいましたよね?私の魔力は封印されていたんですか?」
「ああ、その通りだ。お前の母ソフィに頼まれて、幼き頃に封印した」
「え?!お母さんが!!?」
神様の説明ではこうだ。
私は生まれた頃から魔力持ちだった。
しかも母も見たこともないほど膨大な魔力。
成長するにつれその魔力が器から漏れ出すようになった。
私の世界で魔力は希少。よからぬ物を寄せ付けることになる。
見かねた母が神様に頼んで封印してもらったらしい。
「そ、そんな事が……」
「お前の魔力は両親以外には巫女の力の再来として伝えられていたが、あちらの世界ではそれも限界に近かった。魔力がほとんど存在しない上にその量だからな…。恐らくこの世界に置いても強力な力となりうるだろう」
「は、はぁ」
頭がついていかない。
こっちの世界で魔力ないと不便だなぁ、位に思っていたのが、たった今とんでもない量の魔力を持っている事がわかったのだ。
でもこれでこっちでの生活も楽になるかも?
自分で電気すらつけられないと思っていたけど、なんとかなりそうだし!
………ってゆーか、魔力・・・魔法?
………つかってみたい☆☆(キラッ)
巷で流行りの魔女っ子にも興味があったし、必殺技に名前とかつけてチュドーーンと派手にやってみたい!!!
決め台詞決めて、かわいいミニスカ衣装に変身☆
きゅわわわわわーーーーん☆
え、どうしよ、何色がいいかな。
やっぱここは主人公カラーのピンク!?
いや、この見た目にピンクはそれっぽすぎるかな?
知的系ブルーが?性格からしたらイエローでもいけそうじゃない?
あれ、なんだろ、急に創作意欲が。
さすが中身は隠れヲタク!!!
妄想がとまらない!!
そんな思考を読んだであろう神様が呆れる。
その痛いしい視線に気がつき、思考を2次元から3次元に引き戻す。
「神様、そういえば。神様も私に話したい事があるって言ってましたよね?」
「うむ、ようやく我の話を聞く気になったか」
「う…すいません」
「そのことなのだが、通常時空の歪みに落ちた者には、残念ボーナスとして願いを1つ叶えてやれることになっている。だがお前は親子2代でこのようなことになってしまったからな。残念ボーナスを通常1回の所を3回にしてやろうと話し合いで決まったのだ!!」
え、ドヤ!!って感じの顔してますけど。
人生大きく狂わせておいてボーナス3回……。
「え……少なくない?てかなんて残念なネーミング」
「そ、そうか?これでもかなりの高待遇だぞ??」
「いやいやいやいや!今回の件で私の人生大変なことになっちゃってるんですけど!!?」
神様を思いっきり睨む。
「ま、まぁ確かに…そうではあるが…これでもかなり譲歩した内容であって…しかもこれぶっちゃけ、われのせいではないし…」
私の勢いに押されて神様はボソボソとつぶやく。
「10回!!」
「10回!!?それは多すぎだ!!」
「じゃあ8回!!」
「8回だと!!?」
「ちっ、じゃあ5回」
「それもまだ…」
「5回」
「いやさすがに…」
「5回!!!!!!」
「うっ…一度持ち帰らせてくれ……」
心の中でガッツポーズ!!
絶対押し切ってやる。
「じゃあさ。1個目のお願い☆
あっちの世界から私の記憶消してきて下さい!」
沈黙する神様。
「……いいのか?確かにお前は元の世界には戻れない。
だが、お前はあの世界で16年生きた。その全てが消える事になる。」
「正直迷いはあるよ。でもこの話って基本的に話しちゃいけない事なんでしょ?
そしたら残された人は急に私が消えた記憶……事実しか残らない」
わたしは父様やおじい様が抱えた傷を見て、残された人達の傷は到底癒せる物ではないと知った。
父と母は…知っていてもいいかもしれない。
でも友達や…他の人はダメだ。
自分が居なくなった事で、みんなの心に傷を残してはいけない。
わかってる、自分が正しい事を言ってるって。
でも寂しい、悲しい、苦しい。
覚悟を決めてもやっぱりどうしようもなく、心が痛む。
決死した心に残った僅かな灰汁を吐き出すかのように、自然と涙が流れた。
呻くように泣く私を影から見守る人物がいた事に、私はその時気がつかなかった。
ひとしきり泣いてから、神様に改めて言った。
「父と母の記憶は本人達に任せます。でも他の人の記憶は消して。よろしくお願いします……」
「……引き受けた」
神様は短く返事をした。
きっと母は私が異世界にいることを知っている。
いや、感づいているはずだ。もちろん父も。
だが、まさか元々自分がいた世界に飛ばされたとは思っていないだろう。
「じゃあ2個目のお願い!!
父と母に届け物をしてほしいの!」
神様は少々渋い顔をする。
「本来であれば、断る所だが……今回だけだ」
私も難しいかな?と思いながら、頼んだお願いだったから嬉しくて思わず微笑んだ。
「……ようやくその顔が見れた」
神様はボソっと言った。
わたしは目を見張る。
神様は言う。
「我はお前のその顔を気に入っている。この世界でもお前が笑っていられるように、我も見守っておるからな。大丈夫だ。悪いようにはならない。」
とても優しい…慈しむような笑顔だった。
そうだよね、私は一人じゃない。
私には父様、おじい様、それにエリック、マリンもいる。
ずっと後ろを向いていても仕方ない!!
私は誰!アリサよ! !
あのソフィア・ローズベルトの娘!!
前を向いて生きていくわ!!!
そう気合いを入れ直し、神様と別れた。
エリックフラグを立て始めます!