異世界へようこそ!(2)
主人公が奔放に生きていく為に重要なターンです。
今しかないであろうシリアスシーンが続きます。
うっすらと意識を取り戻すと、いつの間にかベッドに寝かされていて、近くで話声が聞こえた。
「なんだあの娘は!!?まるでソフィの生き写しではないか!!本当にあの娘がソフィの娘だとそう言ったのか!!?」
話の内容が自分の事だとわかりドキリとする。
「いいえ、正確には。あの娘の母の名がソフィだと言っただけです。それに彼女は…何故か空から降ってきました…」
「なんだと!?どういう事なんだ…」
大声に驚き、思わず布団の中で肩がビクっと揺れる。
「…起きたか」
その一言に、さっと顔が青ざめるのが自分でもわかった。
「あの…わたし……」
先程の男性とは別に、白髪の老人と この屋敷に仕えているのであろう人達の姿が数人あった。年齢的にはおじいちゃんと言っていい年齢なんだろうけど、ピンと伸びた背筋、品と威厳を兼ね備えたその立ち姿がおじいちゃんとは言わせないような何かがあった。
老人と視線が交わる。
見知らぬ場所で、見知らぬ人と目が合う、正直怖かった。
かすかに体が震える。
しかし向けられた眼差しは私の想像とは違い、温かくも悲しげなものだった。
「ああ…本当にソフィではないのか………」
その老人は苦しげに母の名を呟いた。
その瞬間有紗には全て分かってしまった。
ここがどこで、この人が誰なのか…
その事を確認する様に私は問う
「あの…あなたは………ベルナルド・ローズベルトさん…でしょうか?」
彼は目を見張る。
表情はなぜ知っているといった物だった。
「わたし、ソフィ……いえ…ソフィア・ローズベルトの娘。神木有沙と言います」
そう言って私は胸元にぶら下げていた物を差し出した。
銀で作られた薔薇のつたのような波打ったデザインが一周したそれに一粒の大きな石が埋
め込まれた指輪だ。これは母から持たされていたお守りである。
差し出した瞬間、これは運命であり。
抗うことが出来ない真実なんだと告げられたような気がした。
そして、その指輪をみて口を開いたのは、この世界にきて初めて目にした男性だった。
多分この人の名前は、フランツ。
フランツ・ローズベルトだ。
この世界で母の夫となった人。
「ああああああああああ、ソフィーーーーー!!!!」
苦しげに呻きその指輪を抱きしめ、膝から崩れ落ちた。
その様子を見て、老人も口を開く。
「……間違い…ないのだな」
苦しげに顔を歪める彼は無言で頷いた。
「……有紗といったな?話を…話を聞かせてはもらえないだろうか?」
私も無言で頷いた。