プロローグ
R15は念の為です!
「わぁ~!Berry veryの新作めっちゃかわいぃ~~✩✩
今月すでに金欠なのに、なんでこうゆう時に限ってツボな商品ばっかでるんだろ……」
スマホとにらめっこしながらネットショッピングの真っ最中。
かわいい物好きな私はお気に入りのブランドから発売されたお洋服を見て、頭の中で電卓を叩いていた。
・・・うん、カラオケ2回我慢したらいける!!!!
ポチっとしてしまおうとスマホを持ち直した瞬間、
私を制する声がかかる。
『マテ アリサ!コナイダ オナジモノ カッテイタゾ!』
いきなり上空1mから響いた手痛い意見に私はすかさず反論する。
「こ、こーちゃん!違うよ!全然ちがう!!
こないだのはベージュに黒の小さいドット柄スカート!
これはオフホワイトに黒の大きいドット柄でウエストリボンつきだよ!!!」
『??? ナニガチガウノダ・・・?』
全く分からないといった様子でコテっと可愛らしく首をかしげるのは、我が神社の守り主。狛犬のこーちゃん(♂)
『ワタシ ワカルヨ オナジカワイイ デモチョットチガウ♪』
!!!
「 さすがまーちゃん!女子にはわかるんだよね~~☆」
かわいいデザイン=好きな物 なので似たようなディテールの物が集まってしまう。
こーちゃんの指摘は耳にいたかったが、まぁちゃんのフォローで持ち直す。
ちなみにこちらも我が神社の守り主。狛犬のまーちゃん(♀)
2匹?合わせて通称『コマちゃん』です☆
半分透けてはいるものの、もふもふの毛並みときゅるんとした瞳は愛さずにいられないかわいさ!!
もちろんコマちゃん達はかわいいもの好きな私の愛でる対象です!むふふふふふ。
あー、癒し♪
そんな会話をしていると今度は下の階から怒号が聞こえる。
「有紗――!!!
いいかげん起きてきなさーーーーーい!!!」
うっ!!やばい!!お母さんおかんむり!!!
今日は日曜日なので(っていう理由をつけて)私は10時になってもベッドでごろごろしながらスマホをいじっていた。
うちは神社なので、みなそれぞれお勤めがあり、早朝から忙しい。
休日とかそういうのは関係ないのだ。
(むしろ土日祝日の方が忙しい気がする)
特に最近は時期的な物で神前式や新車のお祓いなどが多くバタバタしていた。
「有紗っ!もう10時よ!!!」
「10時・・・あ!!そうだ!!!見たかった番組あるの忘れてた!!」
見たかったアニメを見逃した事に気がつき落胆する。
「っ!………そうじゃないでしょ…」
あ、やばい、地雷ふんだ。
母をこれ位以上怒らすのはやばい。
そう思いながら、録画予約してなかったかどうか念の為確かめる。
「ちょっと、!有紗!!きいてるの!?」
「あ、ごめんごめん!なんて???」
「はぁぁ~~もう~~~!!! 今日は午後も何件かご祈祷の予約が入ってるから、社務所を任せたいのよ。」
「えええええ!社務所~~!?
また変なやつ来るかもしれないしやだよ~~~・・・」
有紗はうなだれる。
母は少し申し訳なさそうな顔をしたが、本当に忙しかったのだろう。そのまま社殿へと戻ってしまった。
社務所とは神社の中にあるお守りなどを販売している売店のことである。
いきなりですが、わたし!
こう見えてなかなかの美少女なのである!!!(ビシッ)
ただの怠け者のヲタク少女かと思ったでしょう?
いいえ、中身はヲタク!見た目美少女☆
その名も、 神木神社の跡取り娘!
神木有紗、16歳!!!(本日2回目のビシッ)
先程鬼のような登場を果たした母も実は超美形!
(ついでに父も)
母はシンデレラもびっくりな典型的ヨーロッパ系美女。
そしてその容姿をそのまんま受け継いだわたし。
父のタレ目もプラスされたせいか、更に拍車がかかったかわいい系プリンセス顔のハーフに。
自然と波打つ薄い茶色の髪を腰あたりまで伸ばし。ぱっちりだがタレ目の大きい瞳、目の色は色素の薄いライトブラウン。ハーフ顔にありがちな高めの鼻にふっくらとした小さな唇。
悪いけど、自画自賛したくなる出来栄えなのだ。
そしてその容姿のせいか変なやつに付け狙われる事が多い。
子供のうちは明らかな幼児趣味の変態。
小中学生になったら、同級生・先輩・先生ですら警戒対象に入る事となり。
高校生になりこれまた自慢したくなるプロポーションを手に入れた今、大半の男は『敵』だ。
それなりに護身術を身につけている私は、自分の身は自分で守れるくらい強くなった。
それでも気持ち悪いヤツは嫌なのよ~~!!!!!
お仕事中だと邪険にできないでしょ!?
それをいい事に何回も何回もお守りくださいって並ぶのよーーー!!
しかも恐ろしいことに恋愛成就のお守りばっか...。
おぇぇ、気持ち悪い・・・・。
両親も美形だから実は同じような目にあっている。
無駄にご祈祷しにくるおばさま集団。
参拝ついでに記念写真を撮ろうとする必死なおじさま。
そんな変なご利益?もあって、うちの神社は大変賑わっている。
数年前にたまたま旅行番組かなんかで
「美男美女が神主の縁結びの神社」
なんて紹介された時にはとんでもない人が押し寄せた。
あれはもう勘弁だ。それ以来我が家は取材 NGとなっている。
そしてそんな忙しい我が家は、おじいちゃん・おばあちゃんも現役で働いていて、それでも人手が足りず、アルバイトさんも雇っているんだけど、お察しの通り…気軽に他人を雇うこともできない。
なので結局わたしが駆り出される事も多いのだ。
ちなみにだけど。
そんな忙しい家族に変わって家事もこなしているし、母の謎の教育のおかげでいろんな事ができる。容姿だけではないという部分をいつかお見せしたい!!
さて、すごく嫌だけど、人手がないんじゃどうしようもないので早速巫女装束に着替えて社務所へ向かう。
「アリサ ダイジョウブ ワタシタチ アリサマモル」
「ソウダ ワレラガイル アンシンシロ」
「コマちゃん達ありがとね」
かわいい2匹に励まされながら、神社の裏にある自宅を出た。
玄関の鍵をかけ、すこし歩いた先にある家の表門に向かおうと向きを変える。
すると、これまたよく見知った半透明の人物が私を制止する。
「神様、どうかしましたか?」
「有紗、お前はここから出てはならぬ。門の外によからぬ者が隠れておるぞ」
「え ・・・・また?」
こちらは我が家がお祀りしている神様。
わたしは巫女の血が濃く現れているせい?とかなんとかで、神様の姿もコマちゃん達の姿も見ることができる。
私の理想を具現化されているのか、本当にこういう姿なのかは分からないけど。
神様は少し長めの黒髪に灰がかった透けるような瞳、切れ長の目が凛とした端正な美男だ。
しなやかなようでガッシリした体をしていて、もしみんなに神様が見えようものなら、うちの神社は毎日長蛇の列ができる事間違いなしだ。
そして以前にも同じようなことがあり、神様に助けられた。
その時は警察のお世話にもなってしまい、とてもいやな記憶となった。
「わたしが惑わせているうちに裏門から出ろ。お前一人では危険だ。」
「ありがとうございます!」
そう短くお礼をすると私は裏門へ駆け出す。
本来裏門の方が神社からは近いのだけど、昔ながらの古い家屋の為、裏門の扉は木でできていてちょっと重い。
そして忙しさにかまけてあまり手をつけていない裏庭はあまりよろしい状態とは言えなかった。
「イソゲ アリサ アレハヨクナイ ケハイガスル」
「アリサ イソイデ ジンジャツケバ ダイジョウブ」
「うん!!!」
そして裏門の扉に手をかけようとして、私は何かに足をとられた。
え???
足を取られたと思ったのもつかの間、私は何故か垂直に落下した。
きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
「「アリサァァァァァ!?」」
コマちゃん達の声が遠くから響いた。
処女作ゆえの拙さ…お許しください!