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4.俺の結婚相手は一体だれになるのか

「これなら現実世界にいてもよかったかもな」

 こんなに俺を好きでいてくれる子がいたなんて全く気が付かなかった。

 そんな顔をしないでいいんだ。だってそう思ってるけどお前が俺のことを連れてきてくれたんだからな。


「それじゃあ帰っちゃうの……?」

「いやサリーがいないところに帰る意味もないだろ」

 俺を慕ってくれる王女様に可愛い魔王の娘が好意を寄せてくれてるなんて現実ではありえないことだったからな。

 それに俺の容姿もこんなによくなっちゃったんだから帰るほうが勿体ないってもんだ。


「和也様はそういうところがちょっとずるいんだから」

 そんなことをサリーは頬を真っ赤に染めながら言った。えっと、俺いまなんかずるいことなんてしたかな。


「こうしてサリーの愛の告白を聞いたのはいいんだが現状は全くよくなってないんだよな」

「そっか、ウチはいま告白をしちゃったんだ」

 おいおい大丈夫か。サリーが太陽の如く赤くなっていくのが分かった。


「和也様の頭を思いきり殴ってもいい?」

「ちょっと待て、痛い痛いから」

 サリーにかなり強い力でポカポカと殴られる。


「だって恥ずかしいから忘れてほしい忘れてほしい忘れてほしい!」

「それにとりあえずいまは現状を打開するのが最善策だろ?」

 とにかく顔を真っ赤にしているサリーをなだめながら現状をどうするか考える。

 まず城の中に入るのはあまり得策ではないだろう。ミリアがまだ怒ってたらさらに状況が悪化しかねないし俺が国から追い出されるかもしれない。

 それよりもこの世界のお金ってどうやって稼げばいいんだろうか。


「なぁサリー、この世界でお金ってどうやって集めているんだ?」

「お金はクエストとかでみんな集めてるよ、ウチみたいな魔王がいるってことは他にもいろいろ問題を起こしてるやつらが存在するってことだから」

 なるほど、要するにゲームのクエストみたいなものなのか。それに一度行ってくるのもありかもしれない。


「それじゃあクエストとやらに行ってみるかな」

「クエストを受ける場所を和也様は知らないでしょ? ウチが連れて行ってあげるよ」

 俺がありがとうとお礼を言う前にサリーは俺の手を引いて目的の場所へと歩き出した。



「いらっしゃい!」

 集会所の受付から元気な挨拶が飛んでくる。


「突然申し訳ないんだがクエストを受けにきたんだが」

 そうしてクエストとやら受注しようとすると受付の人間が驚愕で声もでない状態なようだった。


「た、旅人様が帰っていたぞ~っ!」

 集会所の中は大騒ぎになってしまった。

 なんで俺はさっきからこんなにトラブルばっかりに巻き込まれなくちゃいけないんだ。




「いい和也、あなたはこの国ではすごい有名人なんだからむやみやたらに動き回ったらダメなんですからね」

「はい気を付けます……」

 サリーと俺は騒ぎを聞きつけたミリアによってどうにかことを収めてもらってから城に連れ戻されてしまったんだ。

 この国では俺は英雄みたいなもので全員が俺の存在を知っていて魔王を討伐した功績も知っているらしい。

 困ったな、下手に動き回れなくて城に我がもの顔で居座るのも少し居心地が悪い。


「それなら私と結婚すれば全て解決ですね」

 いまミリアは俺の心を読んだよね? それとも顔に出てたのかな。

 いや多分サリーも隣で絶句してるから俺の気のせいじゃないのかもしれないな。


「和也様はウチと結婚するからごめんね」

「絶対に私と籍を入れるんです」

 また修羅場が始まったよ、一体どうすればいいんだ。

 やれやれと頭を抱えているとミリアがとんでもないことを言い出したのを俺が聞き逃さなかった。


「それなら誰が結婚できるか勝負で決めましょう」

「おいちょっと待ってくれよ、俺の決定権はどうなるんだ」

「決定権なんていうものは国の王にあるに決まってるでしょう?」

 笑顔が怖い、この笑い方をしているってことはきっと本気なんだろうな。

 というかこの人王女様っていう立場を利用してやりたい放題やりすぎだろ。国民もこの人についていくのが大変だっただろうにな。


「そうと決まれば即行動、私は国民全員に旅人様と結婚する人を募集してきます」

 そういってミリアは走っていってしまった。

 なにやらよんでもないことに巻き込まれる予感がするが止めることもできない速度で走り出してしまったんだから仕方ない。


「なぁサリー、すごいことになってきちゃったな」

「和也様と結婚したいのはウチなのに」

 頬をむぅっと膨らませている、可愛い。指でつついてやると口の中から空気が漏れだした。


「なにするのよ!」

「ごめんごめん、可愛かったからついな」

 そう言うと「可愛い、可愛い……」と何度も小さな声で復唱していた。

 少しでも喜んでくれているならよかったな。

 そんなことをしてサリーと少しじゃれているうちにミリアはすぐに帰ってきてしまった。


「私は和也の影響力を侮っていたのかもしれません」

 そんな風にとぼとぼとミリアが王女様がしてはいけない顔をして帰ってきた。

 例えるなら梅干しみたいに萎れて生気を失った顔をしている。


「ミリア、さっきまで意気揚々と告知をしに行くって言っていたのにどうしてそんな顔をしてるんだ」

「ごめんね和也、私はとんでもないことをしてしまったの」

 そういって窓に視線を向ける。どうやら外を見てみろと言っているようだ。

 俺とミリアが窓から外を見るととんでもない光景が俺らの目の中に飛び込んできた。

 城の前にいるのはおばさん、女の子、お姉さん、おばあちゃんの女性がひしめき合っていた。


「な、なんじゃこりゃ~!!」

 俺の叫び声が城中にエコーのように広がっていった。

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