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攻撃魔法は苦手ですが、補助魔法でがんばります!  作者: 緋泉 ちるは
第3章 辺境の街 トレンティア編
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シアの攻防

 『シアさん、至急冒険者の援護に向かってください!』


 シアさんを残した事がいい方向に向かいました。

 僕は念話を使い、シアさんにお願いをします。

 

 『ここの守りは?』

 『スノーさんかキアラちゃんを代わりに置きます』

 『わかった』

 『シアさんの防御魔法もすぐに切れてしまいますので、僕がそちらに着くまで無理はしないでください』

 『わかった、ユアン達も無理しない』


 そういって念話が途切れます。シアさんは援護に向かったようです。

 シアさんには無理しないようにと伝えましたが、正直不安です。

 

 「僕たちも急ぎましょう」

 「そうだね、私達が着くころには終わってなければいいけどね」

 

 それもありますね。ゴブリンが変異した程度ではシアさんの相手にはならないでしょうし。

 ですが、僕たち側にオーガが居なかったことを考えると、向こうに行っている可能性は高いです。

 数によってはシアさんでも苦戦するでしょう。


 「シアさん、本当に無理しないでくださいね」


 僕は、一人呟くのでした。


 


 side:リンシア




 ユアンから指示が来た。

 すごく嬉しい。

 本陣の守りは退屈で、やることがない。

 やっと私も戦える。

 ユアンが頼ってくれたから、頑張る。後で、褒めてもらいたい。

 それだけで、心踊る。

 私は走った。ユアンの為に走った。

 私が冒険者の元に辿り着くと、戦況は悪かった。


 「負傷者を下げろ!」

 「解毒薬は余っていないか!?」

 「こっちに俺のがある! 使ってくれ!」


 ユアンの防御魔法が切れたから、前線が崩壊してる。

 ゴブリンと冒険者が入り乱れ、両方に被害が出ている。

 状況は五分?

 違う。人間が押されてる。

 理由は簡単。

 ゴブリンに意志はない。恐怖がない。だから引かない。仲間がやられても引かない。

 人間にはある。一度死にかけた冒険者が前線に戻ろうとしない。

 その差。


 「俺が抑える。その間に立て直せ!」


 一人頑張ってるのがいた。

 確か、この街唯一のBランク冒険者……なんとかって名前。

 戦斧バトルアックスを振り回し、次々にゴブリンを仕留めている。

 だけど、隙がその分多くて、反撃も受けている。

 顔色が悪い、毒に侵されてる。

 あの人が倒れたら、こっちは終わり。

 だけど、終わらせない。


 「下がる」

 

 戦斧バトルアックスを掻い潜り、近くのゴブリンを倒す。1匹じゃない、周りにいたゴブリンを全て。


 「いきなり出てくるな! 危ないだろう!」

 「平気。当たらないから」

 

 ゴブリンの数はまだ沢山いる。だけど、ちょっと余裕ができた。


 「援軍でいいのか」

 「そう」

 「弓月の刻の……」

 「リンシア」

 「一人か?」

 「そう」

 「…………もっと情報はないのか?」

 「本陣に仲間が向かった。だから私が先に来た」

 「ってことは、向こうは片がついたって事か」


 違う。まだ戦ってる。

 だけど、説明するのが面倒だから頷いとく。


 「まぁ、助かった。それで、これからだが……」

 「毒で鈍ってる。邪魔、下がる」

 「女一人に任せる訳にはいかないだろ」

 「そう思うなら、解毒して来い」

 「ちっ……ちょっとだけ任せた」

 「わかった」


 やっと下がった。

 これで自由に戦える。

 

 「ユアンに任された、だから手加減しない」


 ユアンの防御魔法バリアー身体能力向上ブーストもまだ生きている。その間に減らす。

 ゴブリンの攻撃は無視、当たっても無視。

 とにかく、倒す。

 ゴブリンの核の位置は何となくわかった。それを切る。操っている角を切る。ゴブリンは再生しないからどっちも狙えないのは適当に刻む。

 固まってくれてる。好都合。

 ゴブリンの間を駆け抜け、蹂躙する。

 ゴブリンの数が減った。

 やっぱりユアンの魔法は凄い。

 私に力を与えてくれる。

 私に生きる意味を与えてくれる。

 私の全てを捧げられる。

 私の愛おしき主。出会えてよかっ……。


 「ぐっ……!?」


 黒い線が見えた、危険だと思ったから避けた。

 ……避けきれなかった。

 防御魔法で防げなかった?

 違う……魔法、切れてる。

 防御魔法バリアー身体能力向上ブーストがちょうど切れたタイミングだった……失態。


 「大丈夫、問題ない」


 自分に言い聞かせ、立ち上がる。

 それだけで脇腹が熱い……。

 押さえるとぬめっと温かかった。

 手のひらを見ると、真っ赤に染まっていた。

 

 「グギョギョギョ、当たった、当たったぞ!」


 茂みから団子が出てきた。

 どうやらコイツの仕業。


 「ころす」

 「無理無理無理無理!」


 茂みからオーガが飛び出してきた。

 団子を守るように4匹のオーガが立ちはだかる。


 「終わりだ、終わりだ。あの時の屈辱、今ここで果たさせてもらう。全てを奪われる気持ちをお前も味わうがいい!」

 「だれ」

 「忘れたか!」


 団子に知り合い何かいない。どうでもいい、敵は敵。


 「まぁいい、お前を惨めに殺した後、仲間もすぐに後を追わせてやる!」

 「お前には無理」

 「言ってろ……やれ」


 オーガが動き出した。4匹同時に。

 連携がとれている、厄介。

 逃げ場を無くすように、順番に剣が振るわれる。

 避ける、避ける、避ける、避けれない……受け止める。


 「っ……」


 受け止めた衝撃が脇腹に響く。

 大丈夫、痛くない。

 痛みは無視すればいい。

 

 「ほら、避けないとすぐに終わるぞぉぉぉぉぉ」


 私の状況を楽しむ姿が目障り。狂った声が耳障り。

 今すぐ、殺さなきゃ。

 だけど、体が上手く……。


 「ほれほれ、儂も攻撃じゃ!」


 口から黒い何かが飛んでくる。

 さっきの。

 

 「攻撃が見えれば……ぅぁ……」


 避けた筈の攻撃が右肩を貫いた?

 剣を落としそうになる。

 だけど、我慢。


 「どうしたぁ? 見えれば避けれるんじゃないのかぁぁぁぁ?」


 ゲラゲラと笑う団子。

 それを守るオーガ。

 かなり不利。

 だから、楽しい。


 「何がおかしいんだぁぁぁ?」

 「お前には関係ない」

 「そうか、死ぬ!」


 黒い影が伸びた。

 私の心臓に向かって真っすぐに。

 つまりは見えている。


 「見えれば問題ない」


 右の肩があがらない、なら左を使えばいい。

 その為の双剣。

 どちらかやられても、最後まで戦える。


 「汚い舌」

 「よくみょ、わひのひたぉぉぉぉ!」


 何か言ってる。

 黒い影は口の中から飛び出した舌。

 だから、避けても戻るときに攻撃できた。


 「はいへいふるまへ、ひかんをはへへ!」


 まともに喋らない団子が下がり、オーガ再び迫ってくる。

 さっきのでわかった事が一つ。

 

 「魔剣がなければ雑魚」


 前に戦ったオーガは魔剣だった。

 自動防御オートディフェンスの効果があった。

 だけど、こいつらは持っていない。

 だから、私の攻撃は防げない。

 わざわざ、守りに徹する必要もない。

 

 「私が手負いでも雑魚は雑魚」


 オーガは早くない。

 だけど、連携が面倒。

 なら、連携をとるまえに倒せばいい。


 「ん……」


 痛みは無視……。

 先頭にいるオーガの脇をすり抜け、狙うのは3体、4体目。

 こいつらは準備が出来ていない。


 「終わり」


 ユアンのお陰でオーガの核の場所は覚えてる。

 1体は核を、もう1体は角を破壊するが、2体目は失敗。

 片腕じゃ威力が足りない。

 なら、もう一回。

 角を割るために飛び上がり、攻撃した。

 だから、もう一回宙を蹴る。

 これもユアンのお陰。

 驚かせるためにとっておいた。

 こんな所で使わせるとは思わなかった。

 飛び上がった場所に、足場をつくり、それを蹴る。

 

 「割れろ」


 空中から地面に向かって足場を蹴る。

 加速する。威力も上がる。

 剣が角にあたり、割れた。

 後は着地……。

 足が地面に触れ、そのまま残り2体を……。

 

 「ん……」


 ぐらっと、視界が傾く。

 感覚が、へん。


 「効いたか? ようやく効いたか?」

 「…………毒」

 「せいかーい! だが、安心するがいい、その毒には致死性はないからな!」

 「致死性の毒、作れなかっただけ」

 「……だから、どうした?」


 図星。

 

 「別に」

 「まぁいい、時間をかける必要もない、やれ!」


 狂いっぱなしだったら、楽だけど、たまに冷静な判断する。面倒。

 足の感覚がずれる、視界がぶれる。

 まずい?

 オーガが来た。

 剣を振るった?

 

 「っ……」


 体が宙を舞った?

 衝撃がきた、気がする。

 毒が回ってきたから?

 血を流しすぎたから?

 それすらもわからない。

 防がなきゃ。

 今、できるのは、それだけ……。


 「じゃない」


 オーガがぶれ、幾重にも増えて見える。

 だけど、感覚でわかる。

 

 「もう1匹、仕留める」


 考える必要はない。

 ただ、敵を倒す。

 それだけ。

 

 「…………っ!」


 今ある全ての力を左手に握った剣に込め、地を蹴り、振るう。


 「………………」


 音が聞こえない。

 霞む目に、倒れるオーガを見た。

 そして、もう1匹のオーガは……。

 衝撃がきた?

 剣で防いだ?

 限界?

 剣が、手から離れ……さない!

 私は、剣をぎゅっと握る。

 この剣はユアンに捧げた。

 ユアンと繋がった剣。

 死んでも、離さない!

 地面を転がりながら、剣を抱え込む。

 刃が体を傷つけようが構わない。

 この剣は、私の全て。


 「…………」

 「まずは、一人……まずは一人やったぞぉぉぉぉぉ!」


 まだ。

 終わって……。

 ないのに。

 音が、光が、世界から消えていく……。


 『ユアン……』


 闇に沈むように、ゆっくり……。


 『ゆあん……』


 その前に、最後だとしても、ユアンの声、聴きたくて……私は、愛する主の名を呼んだ。


 『ゆあん!』

 「シアさん!」


 光。

 これは光。

 暖かい光。

 初めて、愛した光。

 ユアンの光。

 私の目にも光が宿る。

 

 「シアさん、もう、大丈夫ですよ」

 「うん、わかる」

 「無茶、しましたね?」

 「してない」

 「嘘です」

 「うん……あの時と一緒」


 オークの集団と戦った時も、ユアンに助けられた。

 これで2度目。


 「そうですね、ですがあの時と少し違います」

 「違う?」

 「はい、僕、今までで、一番、怒ってます」

 「ごめん……」

 「違います、シアさんに、じゃなくて…………私のシアにこんなことをしたあいつらに……」

 「ユアン?」


 ユアンの雰囲気が変わった。

 泣きそうな笑顔が消え、目が紅くなる。

 

 「キアラ、シアを連れて下がりなさい!」

 「は、はぃぃぃ!?」


 キアラの手を借り、私はユアンから離される。キアラもユアンから鬼気迫るものを感じた。

 近くに居たい、だけど、できない雰囲気がそこにあった。


 「私の仲間に、シアに手を出した事、後悔させてあげる」


 私はただ、ユアンの背中を見守るしかできなかった。


初めてのシア目線になりました。

シアの活躍を期待した人はすみません。

ですが、シアは強いかもしれませんが、完ぺきではありません。

ユアンもスノーもキアラもです。だからこそのパーティーです。

これを機に戦い方も少し変わるかもしれません。シアも学ぶことが沢山あったと思いますので。


そして、ユアンの変化は何度かありましたね?

今回は露骨にでました。条件があるかもしれませんので、考察してみると楽しめるかも?


いつもお読みいただきありがとうございます。

感想新たにありがとうございます。励みになります。

今後ともよろしくお願いします。


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