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攻撃魔法は苦手ですが、補助魔法でがんばります!  作者: 緋泉 ちるは
第3章 辺境の街 トレンティア編
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弓月の刻、久しぶりの依頼を探す

 トレンティアに着き、早くも2週間が経過しました。

 

 「今日はどうしますか?」

 

 この2週間の間にやった事といえば、寝て、起きて、ご飯を食べて、釣りをして、ご飯食べて、お風呂に入って、寝てばかりと、ぐうたらする日々の繰り返しです。


 「いつも通り」

 「ダメですよ、僕たちの仕事は冒険者ですからね。たまには働かないといざっていう時に身体が動きませんよ?」

 「そうは言っても、ギルドに依頼がないのがね」


 初めの一週間はギルドに顔を出しました。ですが、僕たちが受けれる依頼があまりないのですよね。

 僕の好きな薬草採取の依頼などは、低ランク用の依頼として出されているので、僕たちが仕事を奪う訳にはいきませんしね。

 

 「まぁ、のんびり出来るのもあと一週間だし、のんびりするのも悪くないよ」

 「そうですけど……」


 あと2週間後にはタンザから旅立ち、2か月が経過します。

 つまりは、その頃には僕たちに国外追放の処分が下る事でしょう。

 なので、あと一週間後にはトレンティアを離れ、国境を目指す予定になっています。


 「だからこそ、そろそろ体を動かさないとダメだと思うんですけど」

 「うーん、そうだねぇ」


 そういいながらも、スノーさんはソファーでごろごろしています。

 スノーさんは小さいころから訓練訓練でここまでのんびりできる機会がなかったみたいなので、その反動が出ているのかもしれません。


 「キアラちゃんも何か言ってあげてください」

 「私ですか?……えっと、スノーさん最近お腹のお肉が増えた気がします」

 「うそ……だよね?」

 「本当」


 キアラちゃん容赦ないですね、女性が気にする所をズバリと攻めました。

 そして、否定したいスノーさんにシアさんが現実を突きつけると。


 「シア達だって、私と同じ生活してたし、私だけじゃないよね?」

 「私、太らない体質」

 「僕もですね」

 「人ってどうして太るんですかね?」


 僕たちの言葉にスノーさんが項垂れます。


 「女の敵だらけだとは思わなかった」


 といっても、スノーさんは太ったようには全く見えませんけどね。けど、本人からしたら気になるみたいですけどね。


 「さぁ、ギルドに行こう」

 「でも、朝食がまだですよ?」

 「そうね。だけど、依頼は早いもの勝ちだからね、悠長に朝食をとってる暇なんてないよ」


 めちゃくちゃやる気に満ち溢れているように見えますね。


 「違う、ご飯食べたくないだけ」

 「そんな事ないし」

 「なら、食べる」

 「私は依頼を見てくるから、シア達は食べてていいよ」

 「わかった」

 「なら、僕もついていきますので、二人は朝食を食べてから来てください」

 「わかりました」


 僕も朝はあまり食べたくないので、スノーさんについて行くことにしました。

 そろそろタンザで貰った朝食用のチェリーの数も心もとないので補充したいところです。


 「いい依頼があるといいですね」

 「そうね、討伐依頼があればいいんだけど」

 「なかなか見ないですからね」


 トレントの生息する森まで行けば、ゴブリンなどの魔物は若干いるようですが、危険度の高い魔物はこの辺りには生息していません。

 ここの冒険者達はどうやって生計を立てているのか不思議ですよね。


 「あれ、ギルドで何かあったのでしょうか?」

 

 街に入り、ギルドに向かっていると、ギルドの方から慌てて何処かに走り去る人が見えました。

 冒険者の格好をしているので、冒険者だと思いますが、街の中で慌てるくらいです。何か問題があったのかもしれません。


 「ちょっと、急ごうか」

 「はい」


 僕たちは早足でギルドに向かう事にしました。


 「まだか!」

 「今出たばかりです!」

 「くそっ!」


 ギルドに近づくと、開けらたままのドアの中から大きな声が聞こえました。


 「頼む、このままじゃ、仲間が死んじまう……」

 「慌てるな、きっとすぐに」


 ギルドの中に入ると、倒れた女性の周りに人が集まっていました。


 「あの、どうかしたのですか?」

 

 声をかけるべきか悩みましたが、倒れた女性の顔は青白く、ぴくぴくと痙攣し、まずい状態だと察しました。


 「すまんが、今は説明をしている暇は……」

 「待て!」


 女性を介抱する男性に、追い払われそうになったので、その場を離れようとしましたが、僕は肩を掴まれました。


 「ユアン、だったな?」

 「グローさんでしたね。どうしたのですか?」

 「説明している暇はない。単刀直入聞くが、ユアンは回復魔法以外に解毒魔法は使えるか?」

 「使えますよ」

 「そうか! すまないが、そこの冒険者を助けてやってくれ!」


 やはり毒の症状でしたか。

 元より手助け出来る事があればと声をかけたので、僕は頷き、女性に状態異常を解除します。


 「トリートメント!」


 淡い光が女性を包みました。

 依然、少しだけ顔に生気の色が戻り、苦し気な呼吸が次第に落ち着いていきます。


 「後は、自然回復促進エマーシェンシー!」


 文字通り、体力を微量ながら徐々に回復させる魔法です。いつぞやシアさんと出会った街のギルドマスター、ナノウさんに使った以来の魔法です。


 「解毒はできましたが、毒によって低下した体力はすぐに戻せないので、ゆっくり休ませてあげてくださいね」

 「わかった!」


 倒れた女性を仲間の男性が抱き上げ、ギルドから出ていこうした時。


 「すまない!どこの商店も解毒薬は……?」

 

 息を切らした男性がギルドへと入ってきました。


 「大丈夫だ、回復魔法の使い手が来てくれた」

 「そうか……嬢ちゃんか?助かったよ」


 僕に向かって勢いよく頭を下げました。


 「いえ、間に合って良かったです」

 「それで、何が起きたの?」


 状況を見守ってたスノーさんが男性に事の発端を聞きます。


 「それは、俺から説明しよう。今は、そいつらは休ませてやりたい」

 「わかりました」

 「すみません、このお礼はいずれ」

 「冒険者は助け合いも必要ですから、気にしなくていいですよ。僕たちはたまたま居合わせただけですからね」


 何度もお礼を言う、冒険者を見送り、僕たちはギルドの食堂へと移動しました。

 騒ぎが治まり、今はギルドは元通り営業しています。


 「まずは俺からも礼を言わせてくれ」

 「いえ、本当にたまたまですからね」

 「そうかもしれんが、あいつらの面倒を俺が見てきたからな、こんな所であいつらが終わってしまうとなると、俺も悔やみきれん」

 

 グローさんはトレンティアの冒険者を纏めていると言っていましたね。

 さっきの人達はグローさんが面倒を見て、育ててきた冒険者達だったみたいです。

 

 「それで、何があったの?」

 「あぁ、トレントの森で冒険者が襲われたらしい」


 湖の先に広がる森にトレントが沢山居るので、トレントの森と呼ばれているみたいですね。

 ですが、そこで冒険者が襲われたのですか。


 「やっぱり、トレントも危険って事なのですね」

 「いや、襲われたのはゴブリンにだ」

 「え、ゴブリンですか!?」


 ゴブリンといえばFランクに分類される魔物で初心者用の魔物とされています。


 「さっきに人達ってFランク?」

 「いや、Dランクだ。最近あがったばかりだがな」


 それでもEランクであればゴブリン相手に不覚をとることは早々ないと思います。


 「しかし、ゴブリンにですか」

 「恥ずかしい話だ……とは言えないがな」

 「え、どういう事ですか?」


 ゴブリンに後れをとるのは冒険者にとって恥ずかしい事です。

 攻撃が苦手な僕でゴブリンと戦っても負けない自信はありますからね。


 「あいつらの話が本当ならば、戦ったゴブリンは普通のゴブリンとは違ったらしい」

 「上位種って事ですか?」


 ゴブリンにも上位種は存在します。

 魔法を扱うゴブリンメイジ、弓を使うゴブリンアーチャーなどが有名で、ランクがE、場合によってはDランクまであがる事があります。


 「いや、上位種ではないようだ。やつらは変異種と呼んでいたが……」

 「変異種ですか?」


 聞いた事の無いワードですね。


 「ゴブリンといえば、緑色の肌で小さな角が生えている事で知られているが、やつらが見たのは灰色の肌にオーガの角を持ったゴブリンだと言っていたな」


 ゴブリンは別名、小鬼と呼ばれ、オーガは大鬼とも呼ばれています。

 どちらも角が特徴で、その角が討伐証明になるくらいです。


 「オーガの子供という可能性はないのですか?」

 「ゴブリンとオーガの見た目は全然違うからな、流石に間違えようはないだろう」

 「確かに」

 「だとすると、あの人たちが見たのは何だろうね」

 「さぁな。あいつらの言う通りゴブリンの変異種かもしれないし、全く違う魔物と勘違いしたのかもしれないからな」

 

 自分たちの目で見ない限りはわかりませんね。


 「それで、あの毒はゴブリンにやられたのですか?」

 「そうらしいな。ゴブリンと戦闘になり、その時に爪で引っかかれたと言っていたからな」


 ゴブリンは討伐したものの、女性が直ぐに体調不良を訴えた為に、街へと戻ったようですね。

 

 「何にしてもユアンたちが居合わせてくれて助かったよ」

 「お待たせしました」


 そんな会話をしていると、テーブルの上に突然料理が運ばれて来ました。


 「えっと、これは?」


 スノーさんが驚いた、いえとても困った表情をしています。


 「本来ならばあいつらはユアンに謝礼を払う必要がある。だが、ユアンはそれを断ったからな。まぁ、礼の代わりだと思ってくれ。もちろん俺も頂くけどな」


 えっと、僕たちは朝食を食べたくないのでギルドに来たのでしたよね。

 スノーさんと顔を見合わせます。

 どうしますか?と目で訴えると、スノーさんは断れないと首を横に振りました。


 「どうした?」

 「いえ……なんでもありません」

 「有難くいただくよ」


 好意を無駄に出来ない僕たちは大人しく料理を頂くことに。

 グローさんが注文したのは朝なのに肉料理ばかりでした。

 朝からそんな重いものを注文するところは流石、男の冒険者と言った所でしょうか。

 ですが、僕たちは女性冒険者ですからね、冒険者でも女性ですからね!

 そんな思いで肉を少しずつ口に運ぶのでした。

ようやく本編に入れたと思います。展開が遅くて申し訳ございません。

これからがトレンティア編の本番なので楽しんでいただければ幸いです。


いつもお読みいただきありがとうございます。

今後ともよろしくお願いします。


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