表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
攻撃魔法は苦手ですが、補助魔法でがんばります!  作者: 緋泉 ちるは
第3章 辺境の街 トレンティア編
69/690

弓月の刻、平和な護衛を過ごす

 「ふっ!」

 「遅い」


 二つの剣が交差し、甲高い金属音が響き渡りました。


 「てやぁ!」

 「槍の戻りはもっと素早く!」


 スノーさんが槍を紙一重で躱し、相手の無防備な場所を斬りつけます。


 「させません!」

 「くっ!」


 スノーさんがフィオナさんを斬りつける寸前にキアラちゃんが矢を放ち、スノーさんは反撃を諦め、フィオナさんから距離をとりました。


 「しまった!」

 「終わり」

 「させませんよ、防御魔法バリアー!」


 シアさんの剣がカリーナさんに触れる寸前に僕がバリアーでシアさんの攻撃を防ぎます。

 僕たちはほぼ毎日、模擬戦をしています。

 昼間は移動し、野営の準備が終わると模擬戦をする日々です。

 スノーさんとシアさん、カリーナさんとフィオナさんが戦う相手を毎日入れ替え、僕は補助魔法で援護、キアラちゃんは危なくなった方を援護しつつ、戦う4人の間を矢を通す訓練をしています。


 「キアラちゃん、すごいですね!」

 「本当?」

 「本当ですよ。あれだけ密集しているのにも拘わらず、正確に4人の間を矢を通すのは難しいと思いますよ」

 「みんなの動きが読めるようになったからかな?」


 最初のうちは誰かしらに矢が当たる事もありましたが、模擬戦を始めて半月経つ今では、誰にも矢が当たる事がありません。

 むしろ、シアさんやスノーさんの剣を狙い、邪魔する余裕さえありますからね。


 「あー……今日も負けですね」

 「うん。でも、いい動きだった」


 シアさんとカリーナさんはシアさんが勝って終わったようですね。


 「ありがとうございました」

 「こちらこそ、さっきも指摘したけど、槍の戻しを意識するともっと良くなるよ」


 スノーさんとフィオナさんの戦いもスノーさんが勝って終わったみたいですね。

 ここまでは、いつも通りです。


 「さて……シア、今日も勝たせて貰うよ」

 「うん。今日は負けない」


 そして恒例のシアさんとスノーさんの戦いですね。


 「それじゃ、私達も」

 「やりしょう」


 こちらもカリーナさんとフィオナさんがお互いに向き合いました。

 移動中は比較的に平和で、今日まで魔物の襲撃も盗賊の襲来もほとんどありませんでしたからね、みんなのささやかな娯楽となっているようです。


 「頑張ってくださいね」

 「私は、ラディ達を見てくるね」


 この模擬戦に関しては、実力の拮抗した者同士で行われるので僕たちは手だししません。

 なので、僕は観戦しキアラちゃんはラディくんの面倒を見ます。

 さて、今日はどっちが勝つのでしょうか?

 予想はシアさんとカリーナさんです。二人の打ち合ってる感じが調子良さそうでしたからね!

 僕は僕でこうやって模擬戦を楽しんでいるのでした。





 「温度は如何ですか?」

 「うむ、ちょうどいい感じじゃよ」


 模擬戦を行うとどうしても汗をかきます。

 浄化魔法クリーンウォッシュでも体の汚れはとれ、スッキリとはしますが、どうしても物足りなくなります。

 なので、2日目以降から皆も模擬戦を行い始めたので、僕はある提案をしました。


 「毎度思うが、旅の途中でシャワーを浴びれるとは贅沢じゃのぉ」

 「喜んで貰えたならよかったです」


 目隠し用の天幕を張り、袋に小さな穴を幾つも空け、その中にお湯を流しシャワーの代用をしています。

 僕の魔法で水も出せますし、火の魔法も使えます。

 それを同時に行えばお湯を出す事も出来ます。水は旅では必需品で本来ならばとても出来ません、魔力が高く、水がいつでも出せる僕だからこそできるのです。

 もちろん、探せば幾らでも同じことを出来る人はいると思いますけどね。生活魔法くらいの水と火を操れる人は沢山いますので。


 「次はローラちゃんですね」

 「はい、お願いします!」

 

 あと、ここに居る人たちはみんな女性だから出来る事ですね。もし一人でも男性が混じっていたらやろうと思わなかったと思います。

 万が一がありますからね。僕もそうですが、男の人に間違っても裸は見られなくないです。

 

 「ユアンお姉ちゃんありがとう!」

 「しっかり、身体を拭いてくださいね」


 ちなみに他のみんなはしっかりと見張りをしています。

 でないと、襲撃があった時に対応が遅れてしまいますからね。なので、シャワーを浴びるのも一人ずつです。


 『シアさん、ローゼさん達が終わったので、次の人を呼んでくれますか?』

 『わかった』


 僕はシアさんに声をかけます。

 ですが、シアさんは見張りに行っているので近くにはいません。

 ですが、何故そのシアさんと話が出来るというと。


 『フィオナとカリーナが向かった』

 『わかりました』

 『それにしても便利』

 『そうですね、これならシアさんとならいつでも連絡取れますからね!』

 『うん、契約魔法のお陰』


 この間、シアさんとの契約が強くなり手に入れました。シアさんをイメージして会話をすると声に出さなくても声が届くようになったのです。

 念じれば届く事から、僕たちはこれを念話と呼んでいます。

 有効範囲はわかりませんが、シアさんの位置を把握できる場所なら多分届くと思います。

 タンザの街くらいなら……四方3~5キロくらいは大丈夫だと思うのでかなり便利です。


 『2人が終わったらまた呼びますので、それまで見張りをしっかりお願いしますね』

 『わかった』


 こんな感じで僕たちの旅は進んでいくのでした。




 

「スノーさん、前方からゴブリンの群れです。足止めをお願いします!」

 「任せて!」


 馬車が止まり、馬車の中からスノーさんが飛び出し、それに続いて僕たちも馬車から降ります。


 「フィオナさんとカリーナさんは馬車を守りつつ抜けてきたゴブリンをお願いします!」

 「「はい!」」


 タンザの街を離れるにつれ、魔物との遭遇も増えてきました。

 ようやく僕たちが護衛をしている意味が出てきたと思います。


 「シアさんはスノーさんが止めれなかった敵を討ってください。キアラちゃんは二人の動きをみつつ、自由に援護をお願いします!」

 「わかった」

 「やってみます!」


 魔物の討伐は僕たちがメインで動きます。

 

 「一応、防御魔法バリアーは張りますね」


 そして、僕がするのは防御魔法のみにしています。

 付与魔法エンチャウントを使えばもっと楽に戦えますが、それだと模擬戦をやってきた意味が薄れ、付与魔法エンチャウントに慣れた戦いばかりになってしまいますからね。

 僕が援護できない時も想定しています。もちろん、上位の魔物が現れた時は惜しみもなく使いますけどね。

 ゴブリンの群れは10匹ほどでした。


 「まずは私が数を減らします」


 バシュンッ、バシュンッ、バシュンッ。

 キアラちゃんが連続して弓を放ちます。弓を番え、とても狙ったようには見えない一撃が3回放たれ、ゴブリンの頭を撃ち抜きます。

 しかし、仲間のゴブリンがやられても止まらないのはゴブリンの性質でもあります。

 キアラちゃんが一度に弓矢を片手に持てるのは3発なので、次を番える間にゴブリンがスノーさんへと接敵します。


 「来なさい」


 スノーさんは気負った様子もなく、迫りくるゴブリンを迎え討ちます。


 「はっ!」


 先頭のゴブリンを一薙ぎし、胴体と頭が別れました。その間に、別の2体が横からスノーさんをほぼ同時に攻撃を仕掛けました。


 「シアの攻撃に比べると、止まって見えるね」


 ほぼ同時、ですが若干のズレがあります。

 スノーさんはそのズレを見極め、1体を受け止め、もう1体はスレスレで回避します。

 

 「はい、次!」


 スノーさんはわざとスレスレで避けたようです。大きく動作すると、次の行動が遅れるので攻撃に移るまでの時間をそこで稼いだようです。

 回避をしたと同時に、受け止めていた剣を弾き、続けさまに2体を葬りました。


 「私も」


 残るはシアさんの蹂躙です。

 契約魔法が強くなったお陰か、シアさんの身体能力は更に向上しました。

 戦う者にとって、基礎能力の上昇は根本的な底上げとなるため、単純にシアさんは強くなったと言えます。

 何の苦労もなく、一瞬で残る4体を仕留めゴブリンの襲撃を終わらせました。


 「シアとの差が広がる一方ね」

 「そんな事ない。スノーとは本気でやらないと負ける」

 「私も負けるのは嫌いだからね。今日は勝つよ」

 「受けて立つ」


 今から夜の模擬戦の事を話しているくらい余裕ですね。

 ちなみに、今日までの成績はシアさんの9勝6敗で勝ち越しです。

 最初の数日はシアさんがまだ契約魔法による身体能力で感覚が掴めてないようで連敗してましたが、そこから一気に巻き返しました。

 それでも、一昨日はそのシアさんにスノーさんは勝っていますし、シアさんに連敗するまで制限有りの戦いをして勝っていたくらいです。

 二人間には圧倒的な差はないと思います。


 「お疲れ様でした」


 戦闘が終わり、後片付け……ゴブリンの死体処理を終え、僕たちはローゼさん達の元に戻ります。


 「お主たちなら安心してられるのぉ」

 「お姉ちゃん達、強いですね!」


 戻ると開口一番二人から褒められました。


 「次は、私達にもやらせていただけませんか?」

 「模擬戦での経験を試したいです」


 フィオナさんとカリーナさんは馬車の護衛だったので少し残念そうにしていますね。


 「ローゼさんの許可が得られたら構わないですが……」


 こればかりは僕の一存で決める訳には行きませんからね。


 「うむ、二人がやりたいのなら好きにするが良い。その時は、リンシアとスノーに護衛を任せるがな」


 そう言って、ローゼさんは二人を見ました。


 「構わない」

 「うん、二人の実力はわかってるからね。ゴブリン程度なら遅れはとらないと思うよ」

「「ありがとうございます!」」


 シアさんとスノーさんの言葉に二人は嬉しそうに笑いました。

 元々、騎士の二人は強かったですからね。それに加え、スノーさんとシアさん、皇女様直属の騎士と冒険者の戦いを身をもって経験したお陰か、更に戦い慣れたと思います。

 何しろ、防御魔法があるとはいえ、真剣をお互いに使って本気で戦っているのです、実戦とまでは行きませんが、普通の模擬戦に比べても身のある経験となっていると思いますからね。

 こんな日を過ごしながら、僕たちはトレンティアに向かい、大きな問題も起こらず、旅は終わりに向かいました。

 充実したあっという間の1ヶ月でした。

 僕は、ほとんど何もしていないのはきっと気のせいですからね?

トレンティアに向かうまでの道のりでした。

トレンティア編はここからが本番です。

その前に、ユアンとシアの契約魔法の効果を書いておきたかった為でもあります。

もしかしたら、念話が活躍するかも!?……未定ですけどね!

流れは決まっていますが、内容は気分で変更しますので、自分でもわかりません。


いつもお読みいただきありがとうございます。

今後ともよろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ