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補助魔法使い、依頼を終えて村に戻る

 「ちなみにですが、二人はアーレン教会からその街の事をどんな風に聞いているのですか?」

 

 二人がアーレン教会の関係者からナナシキの事を聞いているのはわかりましたが、どんな風にナナシキの事が伝わっているのか凄く気になりました。

 少なくとも、ナナシキを目指そうとしてくれている事からナナシキを魅力に感じてくれているとは思いますが……過剰に期待されても困りますからね。

 自分たちの街なのでとてもいい街だとは思いますが、トレンティアのように観光地ではありませんし、農業は盛んではありますが、今の所は特産品と呼べるものもありません。それなのにナナシキを目指してくれているのにはきっと理由があるだろうと僕は思いました。


 「実は、街の事は詳しくは聞いてはいません」

 「そうなのですか?」


 ですが、返ってきたのは意外な答えでした。


 「それなのにナナシキを目指すの?」

 「うん。アーレン教会の本部があるならそれだけで十分目指す理由になる」

 「二人にとってアーレン教会はそれだけ大事なのですね」

 

 僕たちはアーレン教会の信徒ではありませんのでわかりませんが、人によってはそれだけ宗教を大事にするみたいですね。

 もちろん、それを否定するつもりはありませんよ?

 むしろ、何かを信じられるのは良い事だと思います。

 ただ、僕たちはヤオヨロズですからね。

 一人の神様を崇拝するのではなく、色んな神様に感謝したいと思っているので、アーレン教会の信徒にならないだけです。

 実際に、ナナシキに……というよりも僕たちのお家に龍神様だったり女神様だったりと神様と呼ばれるような人たちが入り浸っている訳ですしね。

 そこで一人の神様を崇めてしまったら大変な事になりそうで怖いです。


 「そうですね。確かにアーレン教会は私達にとっては大事かもしれません」

 「だけど、それだけじゃない。私達は新しい聖女様に興味がある」

 「新しい聖女様ですか?」

 

 それは初耳ですね。

 セーラが聖女様を引退してから、後任が出来たという話は今の所聞いた事はなかった筈です。


 「はい。どうやら新しい聖女様は黒髪の狐の姿をしているらしいのです」

 「く、黒髪の狐……」

 「うん。黒髪の狐。これはかなり珍しい。噂によれば九尾クラスだとも言われている」

 

 九尾というのは妖狐族の王様ですね。

 それと同じくらいの力があると思われているのですね。

 と、問題はそこではなくて!


 「その話は本当ですか?」

 「本当ですよ?」

 「本当に本当ですか?」

 「うん。村から逃げ延びてから幾つか教会に寄ったけど、どこもその噂で賑わってた」


 それは流石に広まり過ぎじゃないでしょうか?

 というか、そもそも僕はアーレン教会の聖女になった記憶が微塵もないんですけど……。


 「お姉様、どうなさったのですか? 随分と顔色が優れないようですが……」

 「だ、大丈夫ですよ! ちなみにですが、その黒髪の狐の聖女様の特徴って、どんな感じですか?」


 もしかしたら、僕が知らないだけで黒髪の狐族、または黒髪の妖狐族が存在して、僕たちが魔族領で旅をしている間に、新しい聖女様になった方が居るのかもしれませんしね。

 望みを捨てるのにはまだ早い筈です。


 「特徴ですか?」

 「そうです。きっと聖女様ですし、背が高くて胸も大きかったり……」


 したら間違いなく僕ではありませんからね。


 「そんな話は聞いた事ない」

 「むしろ、背は小さい方で胸もぺったんこだと私は聞きましたよ」

 「ぺったんこではないですよ!」

 「うん。ユアンは小さいけどちゃんと胸はある」


 そうです。

 僕はこれでもささやかながら膨らみはありますからね。

 ぺったんこというのはラインハルトさんくらいの事をいうのです!


 「どうしてお姉様が張り合っているのですか?」

 「もしかして、ユン姉達は聖女様に会った事がある?」

 「ナイデスヨ」


 むしろ本人とは言えませんよね。

 いや、まだ僕が聖女と決まった訳ではありません。情報からすると限りなく僕である可能性が高いというくらいです。

 でも、勝手に聖女として扱われるのは困りますよね。

 これに関しては今度ダビドさんと話す必要がありそうですね。

 ダビドさんとは親しい仲というほど接点はありませんが、教皇様という立場であるくらいですし、何らかの思惑があっての事かもしれませんからね。


 「んー……それにしても、疲れましたね」

 「うん。やっぱり徹夜は疲れる」

 

 帰り支度をしながらフタハちゃん達からアーレン教会の事を聞いたりしていると、すっかり朝を迎えてしまいました。


「でも、朝日っていいですよね」

 「うん。一日が始まった感じがしていい」


 まぁ、村に戻ったら寝るんですけどね。


 「なんだか、こうして朝日を迎えると、朝まで仕事しちゃった時を思い出して、凄くやってしまった気がするのは私だけかな」

 「そんな事ないよ。私も同じ気持ちだよ」

 「今日は向こうの仕事はなかったよね?」

 「確か大丈夫だと思うの。一応、もう一度後で確認してみるけど」

 

 スノーさんとキアラちゃんが朝日を眺めて、遠い目をしていましたが、あれは見なかった事にした方がいいですね。

 

 「それで、これから二人はどうするのですか?」

 「この後は村へと戻り、ゲオングを納品する予定でいます」

 「その後はどうする?」

 「その後は未定」

 「他に簡単な依頼があれば受けますし、なければまた夜に備えて眠るかもしれません」


 魔族全員がそうなのかはわかりませんが、やっぱり主な活動は夜になるのですね。


 「それなら、報告が終わったら一緒に食事でもどうですか?」

 「食事ですか?」

 「はい、昨日の夜から何も食べてませんよね?」


 僕たちは合間合間に軽い食事……干し肉を食べたりしていましたが、二人は何も口にしていなかった筈です。

 

 「食べてはいませんが、正直あまりお腹は減っていないのですよね……むしろ、搾取ドレイン勝負の後にお姉様から魔力を余分に返して頂いたのでお腹いっぱいなくらいです」

 「私も今はそうでもない。ここは魔素が安定してる」

 「そういえばそうでしたね」


 オメガさんも言っていましたが、魔族の人は魔素があれば食事はほとんど必要ないと言っていましたね。

 

 「でも、食べれるには食べれるでしょ?」

 「うん。嗜好品程度には食べる」

 「なら暇なら一緒に食べるといい。食事のコミュニケーションは大事」

 「そうですね。折角なのでご馳走しますよ」


 僕たちは食事を必要としますので、お腹が空いたらご飯を食べる事はどうしても必要となってきます。

 それに、二人にはまだ話したい事がありますからね。

 しかも、これからに関する事でかなり大事な事を。


 「わかりました。ご迷惑でなければご相伴にあずかります」

 「うん。私もリン姉と話したい事がまだあったから助かる」

 

 そうと決まれば長居は無用ですね。

 若干一名、ほぼ夢の中に旅立ち、スノーさんの背中でなーなー言っていますしね。

 という事で、僕たちは食事をみんなでとるために村に戻るのでした。

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