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補助魔法使い、妖狐たちの目標を聞く

 「えっ、本当によろしいのですか?」

 「はい。僕たちは実績だけで十分なので、報酬はフタハちゃん達で貰ってください」

 「でも、私達だけ報酬を頂くのは……」

 「気にする事ない。私達は手伝っただけ。そもそもフタハ達が誘わなかったら、依頼を受けるつもりはなかった」

 

 僕たちは興味本位で依頼を受けただけですし、贅沢な事をいいますが、お金に困っていないのですよね。

 

 「でも、それだと流石に申し訳ないです」

 「うん。私達ばかり得するのは良くない」

 「それなら、僕たちに魔族領の情報をくれませんか?」

 「情報ですか?」

 「はい。僕たちはまだ魔族領に来たばかりで、全然魔族領の事を知らないのですよね」


 流石に向かう先はわかりますけどね。

 ですが、それまでの間の情報はさっぱりだったりします。


 「特に魔物の情報とかは欲しい」

 「後は盗賊とかが出る場所も知ってれば教えて欲しいですね」


 討伐できる魔物であれば討伐しますが、迷い込んでしまった先が魔物の住処だったりしたら面倒ですし、盗賊や山賊といった輩が住み着いてる場所にわざわざ足を踏み入れるのも出来る事なら避けたいですからね。


 「私達が知っている限りの事であれば構いませんが、本当にそれだけでよろしいのですか?」

 「構いませんよ。むしろそれが一番の報酬ですからね」


 情報の大事さは良く知っています。

 タンザの街で、もしルリちゃんと出会えていなかったら今の僕たちはこうしていられなかった可能性だってあるくらいですからね。


 「わかりました。そういう事なら私達の知りうる限りを提供させて頂きます」

 「はい。では、今日は村に戻りましょうか」


 既に陽が昇り始め、辺りは少しずつですが明るくなりはじめていますし、ゲオングの鳴き声もすっかり聞こえなくなってしまいましたからね。

 探そうと思えば探せますが、そこまでする必要もなさそうなので、僕たちは揃って村に戻る事にしました。


 「ところで、フタハちゃん達はどうして冒険者を選んだのですか?」

 「それが一番稼げるだろうと二人で話し合ったからです。実際にはそんなに甘くはありませんでしたが……」

 「そうですね。ランク上がるまでは簡単な依頼しか受けれませんし、大金を稼げるようになるまでは大変かもしれませんね」


 今でこそ運が良くてBランクにまで上がりましたが、村を出てから最初の一年間はずっとEランクでしたからね。

 

 「大変。だけど、目標には少しずつ近づいている」

 「それは大事。目標を定めないと、いつまでも上には上がれない」


 目標があればその為に頑張れますからね。

 実際に僕も、孤児院を出てからシアさんと出会うまでの一年は本当に大変でしたが、アルティカ共和国でお家を買って、のんびりと過ごすという目標があったからこそ、忌み子と呼ばれたり、バレないように姿を隠しながらもめげずにやって来れたのだと思います。

 それにしても、二人は本当に偉いですね。

 村を襲われ、たった二人でこんな状況に陥りながらも落ち込まず、前を向いて頑張っているのです。

 もしかして、それだけ大きな目標があるとかですかね?

 それなら、二人が頑張っているのにも納得がいきます。

 なので、僕は二人の目標を聞いてみる事にしました。


 「目標ですか?」

 「はい。僕たちに話しづらいなら無理に言わなくても構いませんけど」

 「別にそういう訳ではありませんが、笑わないで頂けますか?」

 「笑いませんよ」


 人の目標を笑うなんて最低ですからね。


 「お姉様達は、アルティカ共和国に行った事はございますか?」

 「はい。ありますよ」

 

 というか、そこが僕たちの街ですからね。


 「そうだったのですね。てっきり、ルード帝国から来られたと聞いたので、そちらでご活躍されている冒険者なのかと思いました」


 そういえば、僕たちはルード帝国から依頼を受けてこっちに来ていると伝えていましたね。


 「流石、ユン姉たち。色々な場所を旅しているのは凄腕の証拠」

 「たまたまですよ。それで、アルティカ共和国がどうしたのですか?」

 「そうだった。私達はアルティカ共和国を目指している」

 「アルティカ共和国をですか?」


 魔族の方が魔素の薄いアルティカ共和国を目指すのは珍しいですね。

 それだけ特別な理由があるのでしょうか?


 「はい。どうやらアルティカ共和国には魔族でも暮らしやすい街があるみたいで、私達はそこを目指そうと思っているのです」

 「魔族でも暮らしやすい街……」

 

 そう聞いて真っ先に思い浮かぶのは……うん。言うまでもないですね。

 ですが、その情報はどこから流れたのでしょうか?

 魔族の方にそう思って頂けるのは嬉しいですが、もし間違った情報が流れているとしたらそれは大問題ですからね。

 例えば、ナナシキの街の人々は戦いに優れ、好戦的だとか……今でも鼬族の人達はナナシキに近寄ってこないみたいですし。


 「情報はアーレン教会の関係者から聞きましたよ」

 「アーレン教会ですか?」

 「はい。何でも、アーレン教会の本部がその街に移動したみたいなのです」

 「そうだったのですね」

 「はい。なので、魔族でもその街を目指そうとしている人は少なくないみたいです」

 「そんな事になっているのですね」


 それは知りませんでした。

 となると、これから魔族の方の訪問や移住者が増えてくる可能性もあるかもしれませんね。

 僕たちとしては悪い人が増えなければ歓迎ですけど、前もってある程度準備はしておいた方がいいかもしれませんね。

 

 「ですが、問題があるのですよね」

 「問題ですか?」

 「はい。その街はナナシキというみたいなのですが、その街に行くまでの間、魔素が持つかどうかが問題なのです」

 

 魔族の方は魔素がないと生きていくのが辛いと聞きますが、確かに魔族領からナナシキに到着するまで半年以上はかかりますからね。

 でも、その解決策はある筈です。


 「魔素を生み出すペンダントですか?」

 「はい。確か、そういったものがありますよね」

 「確かにあります」

 「私達もそれが欲しくて依頼を受けて、お金を貯めてる」


 オメガさんも身につけていましたが、魔族領では普通に売られていると聞いた覚えがあります。


 「でも、これがまた高価でして……」

 「私達のペースだと、あと数年はかかる」

 「そんなに高いのですか?」

 「はい。確か、一つ辺り白金貨はすると聞きました」

 「そ、そんなに高いのですか!?」


 普通に売られていると聞いたので、もっと安い物かと思いましたが、そんな事ありませんでした。

 それなら納得です。

 そんなに高いのなら駆け出しの冒険者が手を出せないのは当然です。

 

 「なので、当面の目標は、お金を貯めつつ依頼をこなし、二人分のペンダントを手に入れた後に、そのナナシキへと向かうのが私達の目標ですね」

 「出来れば五年以内には頑張りたい」

 

 思っていたよりも壮大な目標でしたね。

 でも、それだけ話に聞いただけのナナシキに魅力を感じてくれているのは嬉しいですね。

 それと同時に、アーレン教会からの情報がそれだけ魔族の方達を動かす力がある事も今後はいい意味でも悪い意味でも気をつけなければいけませんね。

 

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