弓月の刻、召喚獣を紹介する
「はいはーい! オタマジャクシを捕まえた魔鼠くん達は僕たちの背中に乗ってねー!」
「「「ヂュッ!」」」
「それじゃ、移動するよー!」
「落ちないように気をつけてねー!」
リオンちゃん達にお手伝いを頼んで正解でしたね。
サンドラちゃんがやっていた仕事……オタマジャクシを沼から川に移動させる仕事の効率が一気にあがりました。
これをしないと、オタマジャクシ同士が共食いをして、ゲオングの個体数が減ってしまうみたいです。
まぁ、これだけの数がいれば早々減る事はないと思いますけどね。
それでもやっておけば雨が降った時などに再び新たな道が出来て、他の沼で繁殖してくれるみたいなので、やらないよりはやったほうがいいみたいです。
「どうですか? 僕たちの召喚獣もなかなかーー……………どうしたのですか?」
リオンちゃん達の活躍をフタハちゃんに見せ、その感想を頂こうと思ったのですが、何故かフタハちゃんは目の前の事が理解できないといった感じで口をあんぐりとさせていました。
「あの……? 大丈夫ですか?」
「……はっ! だ、大丈夫です」
「本当ですか? 体調が悪いのなら無理はしないで村に戻った方がいいと思いますよ」
「本当に大丈夫です。それより……あの子達は一体どういう事ですか?」
「リオンちゃん達ですか? さっきも説明したと思いますが、僕たちの召喚獣ですよ」
正確にはコボルトのリオンちゃん達はシアさんの召喚獣ですけどね。
僕の事もご主人様と慕ってくれますが、契約で繋がっているのはシアさんだけですので。
まぁ、そのシアさんと契約で繋がっているので、契約の契約みたいな感じで繋がっているといえば繋がっているとも言えますかね?
「あの数、全てと契約しているのですか?」
「そうですよ?」
「そんな事が可能なのですか?」
「可能だと思います?」
「どうしてお姉様が疑問形なのですか?」
「正直、契約魔法の事は良くわかっていないのですよね」
なので、僕たちにとってはこれが普通なのですよね。
ですが、フタハちゃんが驚いているところをみるとこれは異常なのでしょうか?
でも、ナナシキの街の人は普通に受け入れていましたし……。
「正直ありえません……普通、契約できる魔物は一体……召喚士でも数体が限度と言われています」
「そうなのですね」
「それなのに……リンシア姉様はあの数と契約しているなんてありえません!」
「そう言われても……キアラちゃんなんてもっと沢山の召喚獣と契約していますよ?」
「キアラさんもですか?」
「はい。あの魔鼠さん達と警戒で飛んでたり、あそこの木に止まってる鳥さん達もそうですし」
「えぇ……魔鼠たちだけではなく、あの鳥まで……キアラさんもすごいですね」
「そんな事ないよ。私が直接契約しているのは二匹だけですので」
「二匹だけ? 残りはどうなってるのですか?」
「後はうちの子達が従えている子で、私が直接契約している訳ではないですよ」
「魔物が魔物を従えてるという事は上位個体なのですね」
「そうなのかな?」
「そうだと思います。魔物には序列がある事が確認されていますので」
そう言われると納得しますね。
オークで例えるとわかりやすいですが、オークにはオーク、ハイオーク、オークジェネラル、オークキングと上位個体が居る事が確認されています。
シアさんと出会ったばかりの頃に、僕たちはオークジェネラルと戦いましたが、オーク達がある程度ですが統率されていた記憶があります。
それと同じでラディくんも上位個体の魔鼠である事が考えられます。
魔鼠に上位個体が居る何て聞いた事はありませんけどね。
「でも、上位個体ならラディくん達が普通に喋ったり人化するのにも納得いきますよね」
シアさんと一緒に戦ったオークジェネラルは人化はしませんでしたが、カタコトではありますがあの時喋ってましたからね。
しかし、納得している僕の横で、フタハちゃんがまた驚いた声をあげました。
「ちょ、ちょっと待ってください! 人化ってどういう事ですか?」
「どういう事と言われましても、人化は人化ですよね?」
「えっと、つまりは……魔物が人に化けるという事ですか?」
「はい。そのままの意味ですよ?」
「あり得ないです……それではまるで、魔王の誕生ではありませんか……」
「魔王の誕生?」
何だか不穏な発言に聞こえるのは僕だけでしょうか?
「はい。私達の方だけの言い伝えかもしれませんが、魔物を統べる存在を魔王と呼び、その魔王は人の姿をしていると言うのです」
「それは九尾の王様とは違うのですか? 同じ魔王ですけど」
「玉藻様は魔族の王なので、魔物の王とは違いますよ」
同じ言葉でも意味が違ったのですね。
つまりは竜と龍の違いみたいなものでしょうか?
「そのような認識で構いません。しかし……これが広まると大事になりますね」
「そうなのですか?」
「はい。魔王の出現は災いの前触れと言われていますから、討伐しようと言い出す者が居てもおかしくありません」
それはかなりの大事ですね。
下手すればナナシキに討伐隊が押し寄せる可能性もあるという事ですよね。
そうなったらどうなるのか……間違いなく戦闘が起きますよね。
向こうにも言い分があるかもしれませんが、僕たちからすれば大事な仲間を狙われているのと同じですからね。
ラディくんを見捨てる選択肢はありません。
「なので、この事は出来る限り人に広めない方がよいかと思います」
「わかりました。今度から気をつけます」
フタハちゃんとの出会いはとてもいい出会いになりましたね。
もしこの場で知る事が出来なかったらこの先ラディくん達の事で大事になっていた可能性が高いですからね。
そろそろラディ達の秘密を暴く頃合いかと思ってます。
ちょっとしたヒントは何回か出しているので、気づいている人はいますかね?
居たらちょっと嬉しかったりします。
更新頻度落ちてしまいましたが、読んでくださりいつもありがとうございます。
今後ともよろしくお願いします。




