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弓月の刻、双子と共にギルドへと向かう

 支度を終え、みんなでテントを出ると、そこには沢山の人が溢れていました。

 

 「すごい人ですね」

 「これ、全部冒険者なんだよね?」

 「びっくりですね」


 どうやら僕たちが支度をしているうちに、他の方達も起き始めたみたいですね。

 いかにも冒険者という格好をした方達がテントから出て身支度を整えています。

 

 「でも、魔族の冒険者といっても、僕達とあまり変わらないのですね」

 

 冒険者の集まりと聞いていたので、どんな人達なのか興味がありましたが、案外普通だと思いました。


 「ユアンはどんな想像していたの?」

 「えっと、頭に生えた角を活かした武器とか、かぎ爪みたいな武器を使っている人とかを想像していました」


 ですが、その予想とは裏腹に冒険者の方達の手には剣や槍など至って普通の武器が握られていました。


 「流石にそれはないと思うの」

 「そうですかね? でも、かっこよくないですか?」

 「かっこいいかな?」

 「微妙だと思うの」

 

 自分の特徴を活かした武器ってかっこいいと思いましたが、スノーさん達はそう思わないみたいですね。

 

 「でも、ロマンはある」


 スノーさん達とそんな話をしていると、シアさん達も支度が終わったようで、テントから出てきました。


 「そうですよね!」

 「うん。一度くらいは面白い武器も使ってみたい」

 「わかります! 使いこなせない自信はありますが、珍しい武器って憧れますよね!


 流石はシアさんです!

 シアさんだけは僕の考えと同じでした!

 あっ、まだもう一人居ましたね。


 「サンドラちゃんは、どう思いますか?」

 「そうだなー…………」

 「サンドラちゃんも僕と同じ意見ですかね?」

 「そうだなー……」


 んー……。

 テントから出てこれたみたいですが、半分寝ちゃってますね。


 「サンドラ。眠いなら無理しなくていい」

 「大丈夫ー」

 「わかった。でも、辛かったらいつでも言う」

 「うんー……」


 時刻は日が変わった深夜。

 流石にこの時間に起きるのはサンドラちゃんにとってまだまだ辛いみたいですね。

 それでも以前とは違って起きてこられるようになっただけ成長しているとは思いますけどね。

 ですが、これで全員揃ったので、ようやくみんなを紹介できますね。


 「すみません。お待たせしました。こちらも全員揃いました」

 「問題ありません。ソウハの方も今しがた支度終わったばかりなので」

 「そう言って頂けると助かります。とりあえず、一人ずつ紹介しておきますね」

 「そうして頂けると助かります。そんなにお仲間の方がいらっしゃるとは思っていませんでしたので」


 テントから僕たちが出た時、ソウハちゃんは凄く驚いていました。なんでも、僕とシアさんの二人パーティーだと思っていたらしく、まさか人族のスノーさんとエルフのキアラちゃんが出てくるとは微塵も想像していたかったの事です。

 

 「わかりました。スノーさんに気をつければいいのですね?」

 「はい。後ろに立とうとしたら逃げてください」

 「任せて。逃げるのは得意」

 「うん。一応、私も注意しておく」

 「あのさ、その説明はないんじゃない?」

 「事実だからしょうがないと思うの」

 「日頃の行いだなー」

 「流石に初対面の子にモフらせてとは言わないよ。二人とも凄く綺麗な尻尾で魅力的だけどね」


 そういう所なのですよね。

 はっきりいって、スノーさんの発言はセクハラに当たると思います!

 なので敢えてソウハちゃん達にスノーさんには気をつけるように言ったのですが、これでは台無しです!

 まぁ、スノーさんはスノーさんで分かっててそう言っていると思いますけどね。

 フタハちゃんは普通ですが、ソウハちゃんは結構緊張しているように見えましたので。


 「それで、これからどうするのですか?」

 「まずは依頼を見に行きましょう」

 「依頼をですか?」

 「はい。えっと、お姉様方も冒険者ですので、依頼を受けたりはしますよね?」

 

 実はあまり受けた事はない……とは言えませんよね。

 嘘ではありませんが、ソウハちゃんにはBランクと伝えてしまってありますので、下手な事を言うと、嘘をついていると思われてしまいそうですからね。


 「えっと、依頼は受けた事はありますが、流石にこの時間に受けるのは流石に初めてです」

 「そうなのですね」


 驚いたように僕の話を聞いているという事は、こっちでは夜に依頼を受けるのが普通なのですかね?

 

 「普通なのかはわかりませんが、少なくともここのクランでは夜に活動していますね」

 「ギルドではなくて、クランですか?」

 「ギルドはギルド。クランはこの集まりの事で、チームみたいなもの」

 「パーティーとは違うのですか?」

 「それもまた別」


 どうやら、冒険者の在り方も僕たちとはかなり違うみたいですね。


 「でもそれはそれで面白い」

 「それに仲間意識は高そうだよね」

 「そうですね。でも、チームでまとまって移動するのは大変ですよね」

 「だけど、これだけ人が居るのなら安全に色んな場所に行けるなー」

 

 

 話を聞いていくと、まるで遊牧民みたいだなと思いました。

 特定の場所に暮らすのではなく、住みやすい時期に住みやすい場所を暮らしている民族の事ですね。


 「でも、その分大変な事も多いのですよ」

 「依頼をしっかり受けていないと追い出さられる」

 「追い出されたら私達には行き場がありませんからね」

 「それは大変ですね」


 冒険者とは自由気ままに生きる職業なんて言われたりしますが、魔族領の冒険者はそうもいかないみたいですね。

 まぁ、働かなかったら食べていけないのはどの冒険者も同じですけどね。

 

 「でも、その割にはみんなのんびりしていますよね」


 僕たちは体験した事はありませんが、依頼は基本的に早い者勝ちなので、依頼がが出された直後のギルドは凄く混雑するらしいです。

 ですが、周りの様子を見る限り慌てた様子の人は全くいません。

 実際にソウハちゃん達も急がないとと言っていた割にはのんびりしているくらいです。


 「みんながみんな依頼を受ける訳ではないからですよ」

 「でも、依頼を受けないと下手すると追い出されるのですよね?」

 「チームに貢献していないと断されたらそうなる。だけど、別の方法でも貢献はできる」

 「別の方法ですか?」

 「はい。あっ、ちょうどあそこで始まりましたね」

 「あれは……魔石ですか?」


 ソウハちゃんの指さした先を見ると、そこには簡易な露店らしき場所があり、机の上には魔石が並べられていました。


 「そうです。あのように商品を販売する事も許されているのです」

 「それが別の方法なのですね」

 「うん。ベテランなんかは狩りと露店を繰り返して路銀を稼いでいる」

 「私達にはまだ難しいですけどね」


 魔族領の冒険者は逞しいですね。

 面倒なのでやりませんが、今の僕達であれば魔物を狩ったらそのまま冒険者ギルドに渡し、解体などは冒険者ギルドに任せてしまいますが、魔族領の冒険者は全て自分でやっているみたいです。

 もちろん解体までやる冒険者は人族でも獣人でもいますけどね。

 ですが、流石に狩った魔物の素材を売っている所までやっているのは初めて見ました。


 「これは僕たちも学ぶことが沢山ありそうですね」

 「そうだね。だけど、私は解体はやりたくないかな」

 「私も汚れるのはやだ」

 「燃やすならいいけどなー」

 「出来るのは私とユアンさんくらいになりそうですね」

 「そうなりますね。やりたくはないですけどね」


 解体は時間がかかりますし、汚れますのでやらなくていいのならやりたくないのが本音です。

 

 「それで、依頼はどうする?」

 「折角なので、僕たちも受けれそうなのがあったら受けてみましょうか」


 支度までしたのに寝るのも変ですからね。


 「それでしたら、お姉様達も受けれる依頼があった筈です」

 「むしろ今はその依頼ばかり。リン姉が良ければ一緒にやろ?」

 「私は構わない。ユアン、どう?」

 「僕も構いませんよ。みなさんはどうしますか?」

 「やるなら私もやるよ」

 「パーティーですからね」

 「目は覚めたから大丈夫だぞー!」


 サンドラちゃんも問題なさそうですね。

 

 「わかりました。では、良ければ一緒に依頼を受けましょうか」

 「ありがとうございます。では、まずは依頼を確認しに行きましょう」

 「わかりました」


 まさかこんな夜中に依頼を受ける事になるとは思いもしませんでしたが、中々ない経験なので少しだけワクワクするのは僕だけでしょうか?

 でも、油断はいけませんね。

 どんな依頼が待ち受けているのかはわかりませんが、気を抜いて失敗する訳にはいきません。

 これでもBランク冒険者ですし、何気に依頼成功率も百パーセントですからね!

 今回もどんな依頼だろうときっと達成してみせます!

 そんな気持ちを胸に、僕たちはソウハちゃん達と共にギルドへと向かうのでした。

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