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補助魔法使い、やらかす

 搾取ドレイン

 これは相手の魔力を奪う魔法で、色んな事に応用できる魔法で、魔族の間ではどちらの魔力が多いか勝負事にも使われる魔法でもあるみたいです。

 ですが、僕はその使い方を間違えていたみたいです。

 

 「あの……大丈夫ですか?」

 「うん」


 ふわふわの尻尾を振りながら、恥ずかしそうに妖狐族の少女が僕を見てきます。


 「すみません。本当に知らなかったのです」

 「知らなかったなら仕方ないですね。だけど、責任はとって貰いたいです」

 「せ、責任ですか?」

 「うん。私達のお姉様になって頂けますか?」

 「お、お姉様ですか?」

 「うん。あんな事をしたから当然ですよね?」


 僕の勘違い。

 それは搾取ドレインのやり方でした。

 正確には搾取ドレイン勝負のやり方を間違えていたみたいです。

 勝負を仕掛けられたあの時、僕は魔力を抜く側か抜かれる側かを選ぶ権利を与えられました。

 なので、僕は抜く側を選ばさせて頂きました。


 「本当にそっちでいいの?」

 「はい。むしろこっちを選択しない理由がありませんよね?」


 当然ですよね?

 だって、魔力を抜かれるあの感覚は身体がぞわぞわってして変な声が出てしまいますからね。

 わざわざそんな感覚を味わいたいとは思いません。

 僕はトーマ様みたいな特殊な趣味はありませんので。

 ですが、それがそもそも間違いだったみたいです。

 

 「では、始めるわね」

 「え?」


 僕が妖狐族の少女の腕を掴むと少女は驚いた声を洩らしました。

 ですが、僕は勝負なので関係なしに搾取ドレインを始めてしまったのです。

 そして、決着は直ぐにつきました。

 

 「んにゃぁぁぁぁ」


 まるで猫みたいに可愛い声をあげて妖狐族の女の子は身体をくねくねとさせました。

 そして直ぐに降参をして、勝負は決まりました。

 僕の反則負けと。


 「それであの時、僕が抜く側を選んで驚いたのですね」

 

 魔力欠乏と魔力酔いでは魔力酔いの方が辛いようで、一般的に搾取ドレイン勝負は抜く側が不利と言われているみたいです。

 

 「拮抗した勝負になった時、魔力酔いになったら魔法もまともに使えなくなりますからね……お姉様には関係なかったみたいですけど」

 「本当にすみません」

 「謝る必要はないですよ。その……お姉様の事を知る事ができましたし」

 

 なんか意味深な言い方をしていますが、魔力がどっちが上かって話ですからね?

 決して変な事はしていない……とは言えませんね。


 「それで、本当はどうすれば良かったのですか?」

 「本当のやり方は、抜かれる側は魔力玉を作り、それを搾取ドレイン側が吸い続けるのが正しいやり方です」

 「そうだったのですね」

 

 僕が反則負けとなった理由はやり方を間違っていたからでした。

 むしろ、僕のやり方はセクハラにあたるみたいで、訴えられてもおかしくないと言われてしまいましたね。

 実際に僕がやられても嫌ですからね。今思えばセクハラと言われても納得できます。

 それをやってしまったのですから、反則負けと言われても仕方ありませんね。

 まぁ、これを教えてくれた、大精霊さんが元凶なのですけどね。

 

 「そういえば、お姉様方は私達に用があったのではありませんか?」

 「あっ、そういえばそうでしたね。っとその前に、自己紹介が必要ですね」


 いきなり勝負になってしまったので、挨拶がまだだった事に気づきました。

 

 「な、なるほど。どおりで凄いわけですね」

 「一応Bランクってだけですけどね」

 「それでも凄いです。女性だけでそこまで辿り着いたのですから」


 Bランクの冒険者である事を伝えると、それだけで驚かれる事になりました。

 Bランクの冒険者に出会った事がないので、実感が沸きませんが、Bランクってやっぱりそれなりに凄いみたいですね。

 そもそも冒険者の知り合いがほとんどいないので比較する事ができないだけですけどね。


 「それで、フタハちゃんとソウハちゃんは何をここでしていたのですか?」


 二人の妖狐族の女の子の名前はフタハとソウハと言うらしく、しかも二人は双子のようで、僕と話している子がフタハと言い、お姉さんにあたるみたいです。


 「私達は、生活の為に旅をしていてここに辿り着きました」

 「たった二人でですか?」

 「二人しか残らなかったのです」


 俯きながらフタハちゃんはそう答えました。

 これは深刻な事情がありそうな気がしますね。

 

 「もしかして、村を襲われたとかですか?」

 「はい。その通りです」

 「その相手は鼬族だったり……」

 「はい」


 やっぱりでしたか。

 つい最近、同じような話を聞いたばかりでまさかとは思いましたが、そのまさかでした。

 

 「これは深刻な問題ですね」

 「うん。これ以上被害を増やさない為にも早急に対応する必要がある」

 「そうですね」


 鼬族が村を襲ったりしている理由まではわかりませんが、どうにかしないと同じような被害が増えていくばかりです。


 「それだけじゃない。もしかしたら、何処かでサンケと同じことが起きている可能性もある」

 「それはマズいですね」


 サンケで起きていた出来事は、とても酷い事でこの場では口に出来ませんでした。

 っと、この話題はよくありませんね。

 フタハちゃん達にとってもいい記憶ではありませんし、僕たちも嫌な気分になってしまいますからね。


 「それで、二人はここで何をしていたのですか? 冒険者ギルドが出張しているみたいなのですが……」

 

 搾取ドレイン勝負をしたりと、随分と遠回りになってしまいましたが、本来の目的にようやく辿り着けましたね。

 

 「あっ、そうでした! 急がないと!」


 冒険者ギルドの事を尋ねると、フタハちゃんが慌て始めました。


 「えっと、何かあるのですか?」

 「はい! 良かったら、お姉様達も一緒に如何ですか?」

 「何をですか?」

 「来て頂ければわかります!」


 説明している暇はないと、フタハちゃんは身支度を整える為にテントに消えていきました。


 「私も支度してくる」

 「うん。そうするといい」

 「また後で」

 「うん。また後で」


 それに合わせてソウハちゃんもテントへと戻っていきます。

 どうやらソウハちゃんとシアさんはこの短時間で仲良くなったみたいですね。


 「うん。話しやすかった」

 「珍しいですね」

 「嫉妬してる?」

 「してませんよ。僕が一番な事には変わりませんからね! それよりも僕たちも支度しちゃいましょうか」

 

 さっきの口ぶりからすると、一緒に来てほしそうでしたからね。

 それに、何があるのかを調べるのが今の僕に任された仕事でもありますので、いかない理由がありません。

 

 「わかった。スノー達はどうする?」

 「真夜中ですし、本人たちに任せましょうか」


 話を聞いてくるだけなら僕達だけでも十分ですからね。

 という事で、僕たちも一度テントに戻る事にしました。

 まぁ、目の前なんですけどね。

ドレインを使う時は気をつけましょう。

場合によってはセクハラで訴えられます。

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