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補助魔法使い達、炊き出しをする

 『ユアン。一通り配給は済んだみたい』

 『わかった。報告ありがとう』

 『うん。無理はしないで?』

 『これくらいなら平気だよ』


 リコ達を連れて村へと戻った私達はみんなと共に炊き出しを行った。

 しかし、そこで問題が起きた。

 オメガとラインハルトから、炊き出しをするよりも魔力を供給した方がいいとアドバイスをされてしまったのだ。


 「オメガとラインハルトを連れてきて正解だったね」


 その結果、搾取ドレインを組み合わせた防御魔法を展開しているせいで、私はまともに身動きできなくなってしまったけどね。

 しかも、私の周りは極端に魔素が高い状態になっているせいで、シア達も近づけないし……ちょっぴり寂しい。

 

 「その代わり、私がいるよ」

 「ありがとう。だけど、ラインハルトは平気なの?」

 「これでも一応は魔族だからね」


 私を中心に魔族の集団が集まり、私の護衛としてラインハルトが傍に居てくれることになった。


 「そういえばそうだったわね……ちなみにだけど、ラインハルトってどんな魔族なの?」

 

 獣人にも狐族や虎族など様々な種族がいるように、魔族にも様々な種族が存在する。

 しかし、ラインハルトはパッと見た限り、魔族の特徴がないように思える。

 唯一の特徴は綺麗なオッドアイくらい?

 

 「笑わないでくれるかい?」

 「笑う? そんな事しないよ」


 種族を聞いて笑うなんて失礼だからね。

 

 「本当に?」

 「本当だよ」

 「わかった……私は一応なんだけど、サキュバスなんだよね」

 「サキュバス……ふっ」

 「わ、笑わないって言ったじゃないか!」

 「ご、ごめんね?」


 だけど、流石にそれはズルい。

 サキュバスで有名な話は、身体を使って男性を魅了して、性行為をし、魔力などを奪う事かな?

 だけど、ラインハルトはぱっと見……。


 「なんなのさ!」

 「ううん。何でもないよ」


 うん。やっぱり、ぺったんこだね。

 今はメイド服を着ているから女の子ってわかるけど、メイド服を来ていなかったら男性と間違えてしまいそう。

 実際に私は間違えていた訳だし。


 「お姉様、他にお手伝いすることはございますか?」

 

 ラインハルトの意外な種族が発覚したタイミングで忙しそうに動き回っていたセーラが戻ってきた。


 「今は平気かな。それよりも働きすぎてない? あまり無理しては駄目だよ」

 「大丈夫です。慣れていますから」

 「そうなの?」

 「はい。あまり良い記憶ではありませんが、これでもアーレン教会の聖女でしたので、各地で信仰を集めるための炊き出しには参加していましたので」

 「そうだったのね。ごめんね、嫌な事を思い出させてしまって」

 「いいんです。今は楽しく暮らしていますから。それに、こうしてお姉様に気を遣って頂けましたし」

 「私が気を遣う?」


 何の事だろう。

 

 「こちらに来るとき、私に声を掛けなかったのは私が聖女としての過去を思い出させない為ですよね?」

 「……そうよ」


 思わず目を逸らしてしまった。

 実の所、セーラの事は忘れていた。

 もちろん、存在を忘れていたわけではないよ?

 だけど、どうしてもラインハルトやオメガに比べると印象が薄くて、連れて行くという選択肢の中に含まれたなかったの。

 もし、オメガとラインハルトを誘うタイミングで現れなかったら、声を掛けなかったと思う。


 「だけど、セーラにも来てもらって正解だったわね」

 「そうかもしれないね。セーラは嫌かもしれないが、これでもセーラはそれなりに有名人だしね」


 元とはいえ、セーラはアーレン教会の聖女で、ルード領だけではなく、魔族領でも聖女として活動をしていたようで、今回の難民の中にもセーラの事を知っている人が結構いた。

 まぁ、セーラがメイド服を着て居る事に驚いていたけどね。

 それでも、セーラが配給をしてくれる事によって、警戒心はかなり薄れたみたい。

 最初はいきなり私達が炊き出しをすると言っても、困惑していたしね。


 「それだけ酷い目にあってきたって事だろうけど」

 「すまない」

 「なんでラインハルトが謝るの?」

 「こうなった原因はサンケにあるのだから」

 「ラインハルトもセーラもナナシキの一員だよ。だから、気にする事はないよ」


 配給をしながら、私達は難民から事情を聞くことにした。

 そして、わかったのは今回の出来事にサンケが関わっている事だった。


 「これは早急にエメリアとエレンに動いて貰わないといけないかな」

 「そうだね。このままだと国際問題に発展するよ」

 「現状でもかなりマズい状況だと思うけどね」

 「しかし、愚かだとわかっていたが、そこまで愚かだとは思わなかったな」

 「そうね。まさか、他国の村を襲って人材を確保しようだなんて……」


 そうなった原因の一端に、私達がサンケに居た魔族をナナシキへと連れて行った事が含まれているのかもしれないけど、まさかサンケの人たちがそんな事をするとは想像もしなかった。


 「しかも、鼠族の残党がいるとはね……」

 

 これではシノの事を悪く言えないね。

 国境で起きた出来事の後、ナナシキの近くにルード帝国の兵士が盗賊となって現れた事があった。

 今回の鼬族の残党はあの時と同じような状況で、私達との戦争でサンケに流れついたのだろうと予想される。


 「そればかりは仕方ない。元はといえば、鼬族が吹っかけてきた戦争で、私達はそれを撃退したに過ぎないのだから」

 「そうかもしれないけど、こうして関係のない人が被害を被っているのを見るとね」

 「だからこうして手を差し伸べている。大事なのは過去ではなく、これからどうするかだよ」

 「そうね」

 「もし、ナナシキで引き受けてくれるのであれば、私も協力しますので頼ってくださいね」

 「その時は遠慮なくお願いするよ」

 

 一応、エメリア達とも相談はするけどね。

 前はサンケからの受け入れだったから簡単に話は済んだけど、今回は魔族領の住民だし、勝手に決めていい事なのかわからない。

 もちろん、問題なければナナシキで受け入れるけどね。

 まだまだ発展途上の街だし、人手は多いに越したことはないからね。

書き始めるまで、セーラの事を完全に忘れていた作者でした。

前話でセーラの名前が出なかったのはその為です。

思い出して良かった。


いつもお読みいただきありがとうございます。

今後ともよろしくお願いします。

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