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攻撃魔法は苦手ですが、補助魔法でがんばります!  作者: 緋泉 ちるは
第3章 辺境の街 トレンティア編
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弓月の刻、最後の夜

 「ザックさん、ありがとうございました!」

 「こちらこそです。皆さまの旅が良い方向に向かう事を願っていますよ」


 予定通り、テントを購入しました。

 性能は聞きましたが、実際に試していないので使うときが今から楽しみです!

 ザックさん達に見送られ、出発を明日に控えているので僕たちは宿屋に戻る事にしました。


 「へぇ、ラディくんは基本この街に残る事になるのですね」

 「うん、離れれば離れるほど召喚に魔力を使うみたいだけど、大丈夫そうだからね」


 召喚に使う魔力は感覚でわかるみたいですね。

 戻るときは、ルリちゃんの拠点に戻るように設定をしたそうです。ルリちゃんにお願いしたところ快く了承を頂けたようです。

 

 「条件をつけられちゃったけどね」

 「条件ですか?」

 「うん、情報屋の仕事を手伝う事が条件だって」

 「ラディくん達は優秀ですからね」


 ルリちゃんも危険を冒さずに情報を集められるって事ですね。

 そんなやりとりをしながら宿屋に戻ると、ちょうどシアさんも戻ってくる所だったのか、シアさんと宿屋の前で合流しました。


 「ただいま」

 「シアさん、お帰りなさい。どうでした?」

 「ユアンの指示通り、ボコボコにしてきた」


 そこまでしろとは言ってませんけどね!


 「シア……やりすぎてないよね?」

 「うん。ダメなところはちゃんと直した」

 

 剣の握りから、構え、3人での連携。シアさんが目についた所を指摘しながらひたすら模擬戦を行ったようです。


 「最後は笑ってたから平気」

 「なら……大丈夫ですかね?」


 シアさんとの差を見せつけ、疲労で動けなくなったカルロさん達は満足していた様子だったとシアさんは言います。

 逆に絶望していなければいいですが。


 「この程度で絶望するくらいなら、冒険者やる資格ない」

 「そうね。逆にシアという目標が出来た事で頑張ってくれないとね」


 そうですね。格上との戦いを経験しておくのは重要だと思います。一筋縄では勝てない相手にはそれなりの戦い方がありますからね。


 「そうだシア、私とも模擬戦しない?」

 「やだ」

 

 思いついたようにスノーさんがシアさんに提案しますが、速攻で断られました。


 「どうしてよ」

 「疲れた。ユアン補充しないと無理」


 僕を補充って何でしょうか。

 それでもスノーさんは諦められないようで僕にお願いをしてきます」

 

 「ユアン、悪いけどシアに抱きしめられてあげてくれない?」

 「嫌です!」

 「ユアン、嫌なの?」

 

 シアさんが哀しそうな目で見てきます。


 「シアさんの事は嫌ではないですよ。ただ、外ですからね、恥ずかしいから嫌です」

 「わかった。後にする」


 後でって……諦める事はしないのですね。

 どうしても僕を補充するつもりでいるようです。

 僕を補充って意味がわかりませんけどね!


 「それじゃ、護衛の途中にでも模擬戦はお願いね?その時ならユアン補充できてるでしょ?」

 「ユアン次第だけどわかった。私もスノーと戦ってみたかった」

 「ふふ、楽しみにしてる」

 「私も」


 どっちが強いか僕も興味ありますね。

 速さのシアさんと防御型のスノーさん、どっちが勝つのか予想がつきません。

 個人的にはシアさんのが有利だと思いますけどね。スノーさんがシアさんのスピードについて行けるかが鍵になると思います。


 「皆さんは旅に必要な物は揃いましたか?」

 

 宿屋に入り、お風呂と食事を終えた僕たちは最終確認をしています。ある程度、今日までに準備を済ませましたが、忘れ物があったら困りますからね。

 テーブルを囲み、僕たちは話し合いをしています。

 何故か、僕はシアさんに抱えられて、シアさんの上に座らされていますけどね。

 これで僕を補充していると言いますが、相変わらず良くわかりません。依頼報酬と言われて断る事も出来ませんしね。

 

 「私は平気」

 「私もないかな」

 「たぶん、大丈夫だと思う。必要な物が出来たらルリさんに頼んでラディに持たせて貰えばいいから」


 そんな使い方も出来るのですね。

 

 「あまり大きな物は無理だけど、ラディが持てる大きさなら問題ないと思う」

 「ラディくん、かなり便利ですね」

 「アリガトウ」


 いつの間にかラディくんも部屋にいました。


 「ラディ、勝手に出てきちゃだめだよ」

 「ゴメン」

 

 ラディくんはラディくんで自由に現れる事も出来るみたいですね。その場合はラディくんが魔力を使用するみたいですけど。


 「ラディくんは沢山魔力あるのですか?」

 「ソウデモナイ。ダケド、召喚クライナラ問題ナイ。配下カラ魔力アツマッテクル」


 ラディくんの配下は数え切れないほどいますからね。少しずつ集めればそれなりの魔力になりそうです。


 「ユアンは平気?」

 「問題ないと思います」


 テントも買いましたし、食料もかなり準備をしました。

 今回は干し肉ではなく、お金もそれなりに稼げたので温かい料理を沢山購入しました。

 僕の収納は時間経過しませんからね。いつでも温かい食事をとる事が出来ます!


 「テントの性能は?」

 「はい、一応2種類購入しました」


 シアさんはザック商店に一緒に行かなかったので買ったテントの性能を説明しておきます。

 一つは組み立て式のタイプで、3角形のドーム型のテントで、4人で寝てもギリギリ大丈夫なタイプですね。

 実際は4人で並んで寝る事はないと思いますので十分です。

 火の晩や見張りなどは必要になりますからね。

 更に、少しお高かった理由として、テントは魔法道具マジックアイテムでもあり、耐寒と耐熱になっていてそれなりに快適に過ごせるようになっているみたいです。


 「……うん」


 シアさんが少し何かを言いたそうにしますが、先にもう一つのテントを説明しておきます。

 

 「もう一つは四方に鉄柱を刺し、雨を防ぐタイプですね」

 

 寝る事を目的にした訳でではなく、休憩の間に日差しや雨などから守る事を目的としたタイプですね。

 これも魔法道具で大きさが調整できるようになっていて、自由に伸縮できるので馬車なども収容できるサイズにできるようです。


 「どうですか?」

 「二つ目はいいと思う」

 「一つ目は?」

 「……ユアンの魔法で代用できる。むしろ、ユアンの魔法のが有能」

 「あ……」


 忘れていました、僕の防御魔法は耐寒耐熱防風、雨も遮断できます。買ったテントは明らかにそれの劣化版でした。


 「私はいいと思うよ?だから、言わなかったし」

 「なんで?」

 「ユアンの魔法が特殊過ぎるからね」

 「私もそう思います。ユアンさんの魔法は初めて見たから」

 

 自覚はありました。

 これは僕の創作魔法みたいなものですからね。

 創作魔法とは文字通り、新たに自分で作る魔法の事です。

 魔法と魔法を組み合わせたり、どんな魔法を創り、使いたいかを考えなけばいけません。

 聞くと簡単そうに聞こえますが、魔法理論を理解しなけばいけませんし、最初に使うときは繊細な調整が必要だったりします。

 特に魔法を組み合わせた複合魔法の場合はバランスを間違えると暴発する可能性もありますからね。


 「だから、4人でいる時はまだしも、知らない人の前であまり使わない方がいいかな」

 「私もエルフなのでエルフ特有の固有魔法を知っているけど、それを聞かれる事があったのでスノーさんに同意です」


 シアさんと出会う前までほぼソロだったのであまり気にしていませんでしたが、そういう問題もあったのですね。


 「そう。ならユアンの選択は正しい」

 「無駄にならなくて良かったです」


 それなりの買い物でしたからね。本当に無駄にならなくて良かったです。

 それにしても、改めてパーティーメンバーが増えた事を実感します。

 もちろんいい意味でです。

 僕とシアさんだけだと、こんな意見は絶対に出ませんでしたからね。

 頻繁にお互いの意見を交換しあう事の大事さを実感しながら、明日に備え休む事になりました。

 いよいよ明日から僕たちの新たな旅が始まりますからね!

 おやすみなさい……と言いたいところですが。


 「なんで、みんな一緒なのですか?」

 「知らない」

 「暫く、野営が続くと思うしいいんじゃない?」

 「そうですね」


 タンザの街、最後の夜はみんな一緒に眠る事となりました。

 前と同じ布陣でです。

 今度こそおやすみなさい。

今回で出発予定でしたが、次回に持ち越しですみません。

日曜日で書く予定が、一日ほぼ寝て過ごしました……。


いつもお読みいただきありがとうございます。

今後ともよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ユアン達が王様に手紙届ける件ってどうなったのか気になってここまで読んで見ました。 ユアン達がスノーとかレジスタンスに協力して領主捕まえる。 姫様たちが来て、ユアン達連れてかれて、褒…
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