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補助魔法使い、地下通路を進む

 「ユアンとシアって出会ってまだあまり時間経ってないんだね」


 僕たちは地下通路を探索中です。

 地下通路は魔物が出ると聞いていましたが、今の所強力な魔物に遭遇することもなく、出会った魔物は魔鼠やスライムくらいです。

 そういう事で雑談しながら探索を続行しています。


 「あれは運命」

 「大袈裟ですよ……スノーさんそこに罠の反応があるので気を付けてください」

 「ありがとう。まぁ、シアが運命って言うのもわかるよ。だって、二人はお似合いだもん」


 ルリちゃんが言った通り、罠も仕掛けてあります。数は多くありませんが、それが逆に危険ですね。

 忘れかけた頃に罠があるので、油断しているところを狙われている気がします。

 僕が常に感知魔法で探っているので、今の所は問題ないですけどね。


 「お似合いですか?」

 「うん。何て言うか、自然体って感じかな。一緒に居るのが当たり前って感じ」


 何となくわかりますね。

 シアさんが一緒にいると気楽ですし、色々とサポートしてくれますからね。ちょっと度が過ぎている時がありますけど。


 「スノーさんは相方みたいな方は居ないのですか?」

 「相方かぁ。私達は個で戦う事よりも騎士団が一つとなって集になって戦う事のが多いから、強いて言えば騎士団のみんなが相方みたいなものかな」

 「それは相方と言うのですかね?」

 「違うだろうね。だから、ユアンとシアが少し羨ましいよ。お互いの為に命を懸けて戦えるからね」

 「その点はスノーさんも同じじゃないのですか?」

 「私達はエメリア様の為に命を懸けているからね。エメリア様を守る為なら仲間の命を犠牲にする覚悟で戦っているよ。私は副団長だからその決断をしなきゃいけない事もあるだろうし」

 

 主を守る剣であり盾でもあるって事ですね。

 主に危機が迫った時、仲間を犠牲にしてでも逃がしたりしなければいけない。

 仲間を失っても、主が無事ならそれでいいとスノーさんは言います。自分の命が必要ならそれも覚悟の上なようです。

 冒険者と騎士の違いがよくわかりますね。

 冒険者によっては護衛を見捨てて逃げる人も居ますからね。覚悟が違うって事ですね。


 「私の主はユアン。その気持ちはわかる」

 「ユアンは大事にされているね」

 「シアさんは過保護過ぎですけどね」

 「そんな事ない」


 そんな事あります。

 

 「良かったら、ユアンたちの事もっと聞かせてよ」

 「いいですけど、僕たちも出会ってから日が浅いのでそこ迄大きな出来事はないですよ?」

 「それでもいいよ。なんでそんな仲が良いのか気になるし」

 「わかりました……でも、その前に」


 魔物の反応がありました。

 

 「水の中です!」

 

 僕が魔物の場所を伝える前に二人は既に迎撃態勢に入っていました。


 「厄介な敵ね」

 「面倒」


 何かが水の中を移動している事をかろうじてわかります。しかし、濁った汚水のせいで確実な場所がわからないですし、数が多いせいで狙いを絞る事が難しい。

 何よりも水の中への攻撃手段が乏しく、倒す手段が思い浮かびません。


 「どうしますか?」

 「水の中は抵抗があって剣じゃ厳しいかな」

 

 会話をしている間も泳ぎ回る魔物はこちらを襲うタイミングを伺っているようです。


 「ユアンの魔法は?」

 「攻撃魔法は苦手ですので、水の中とはいえ感電させる威力は出ないと思いますよ」


 強力な雷魔法とかなら効果はあるかもしれませんが、僕が扱えるのは人や魔物を少しだけ気絶させれる程度です。水は電気を通しますが、広がってしまうので効果は薄そうです。


 「手段がないからやってみて貰える?」

 「わかりました……スタンスパーク!」


 前にシアさんとオークの群れと戦った時に使った魔法です。

 雷魔法は水と風の複合魔法なので扱いは少し面倒ですからね。そこまで複雑なのはあまり使いたくありません。

電撃が水面にあたり、水面を走るように電撃が広がる。


 「場所が場所なら綺麗そうだね」

 「うん。……何か浮いてきた」


 効果はあまりなかったようですが、成果はありました。

 浮かんできたのはギョロギョロにやせ細り、目が飛び出し、ノコギリ状に歯が並んだ魚みたいな魔物です。


 「何ですかあれ……気持ち悪いですよ」

 「デビルフィッシュ……Eランク」


 聞いたことはありますね。

 見た目が悪魔のようだと言われたのが由来のようです。

 沼やこういった汚い水の中に生息する魔物で、水の中に入った生き物を襲う事で知られている魔物です。

 ランクはEランクですが、これは水の中で倒しにくいというだけで、強さ的にはGランク程度と言われていますね。

 何せ魚型なので、地上に上がれないですし、上がったとしても口元に手を出さない限りは無力ですからね。


 「ユアン、食べる?」

 「え、嫌ですよ!」

 「一応食料になる」

 「シアさんは食べたいのですか?」

 「いらない」

 「僕もですよ」


 食料にできる魔物がいて、有名なのはオークですね。

 この魔物も食料に出来るようですが、流石に汚水に住んでいる魔物を食料にしようとは思いません。沼なら少し考えたかもしれませんが、好んでは食べたくないです。ほぼ骨ですしね。


 「デビルフィッシュじゃ、放置しても問題なさそうね」

 「一応飛び出してくるのには気を付けてくださいね」


 防御魔法を張ってありますが、油断は禁物ですからね。

 デビルフィッシュを一応は警戒しつつ進む。雑談しながらですけどね。

 

 「それで、オークの集団を一緒に倒したんですよ」

 「その戦いで主はユアンしかいないとわかった」

 「うんうん。それで?」

 

 僕たちの話を嬉しそうにスノーさんは聞いています。


 「ギルドに戻ったらシアさんが怒っちゃいまして……」

 「あれはユアンを馬鹿にした二人が悪い」


 相変わらずデビルフィッシュがついてきていますが、順調に進んでいます。

 

 「シアらしいね」

 「うん。私達の事話した、スノーの事も教える」

 「私の事?聞いても楽しくないよ」

 「折角ですので教えてください。冒険者やレジスタンスとして活動している理由は聞きましたが、どうして騎士なったとかは聞いていませんからね」

 「面白くなくてもいいなら……」


 スノーさんの年は17歳、シアさんと同じですね。

 生まれは帝都で実家も帝都にあるそうです。


 「私の家は代々騎士の家系で男女関係なく騎士となるべく育てられたんだ」

 

 父親の教育は厳しく、子供の頃から剣を振って鍛えられたようですね。


 「だから甘い物なんて食べた事もないし、友達らしい友達もいないんだよね」

 「私と同じ」

 

 シアさんは影狼族でお爺さんが厳しい人……シアさんが言うには古い考えの人で煩かったみたいですね。


 「それで、15歳の時に騎士団に入団させられ、厳しい訓練を重ねるうちにエメリア様の護衛になって今に至る感じかな?」


 皇女様の護衛は女性であり身分がしっかりした人……つまりは貴族出身の者しかなれないようで条件に合う人は少なく、必然的にそうなったようです。


 「ね?特に面白い話ではないでしょう?」

 「確かに」

 「シアさん酷いですよ!」

 「ふふっ、実際にそうだから仕方ないよ」

 

 シアさんの失礼な発言にも笑って許してくれました。


 「スノーさんはずっと騎士のままで居るのですか?」

 「そうだね。このままいけば、引退して指導側に回って後輩たちを育てる事になるかな。このままならね」

 「このままなら?」

 「うん、この先はわからないからね。強硬派とぶつかるかもしれないし、戦争が起きたら参加しなければいけないからね」


 戦争が起きると、冒険者にも依頼が出ます。ですが、受けるかどうかは自由です。

 だけど、騎士は強制的に参加しなければいけません、騎士は国に所属していますからね。


 「騎士を辞めるつもりはないのですか?」

 「ないかな。というより、出来ないかな。家門名を汚す訳にはいかないから。それに、エメリア様にも良くしてもらっているからね、裏切れないよ」

 「残念」

 「そうですね。スノーさんさえ良ければ一緒に冒険者やるのも楽しそうですからね」

 「気持ちは嬉しいよ」


 女性の冒険者は男性に比べて少ないので、パーティーに所属していないソロの冒険者は珍しいですからね。

 シアさんも気に入っているようなので、とても惜しく感じます。


 「私の話はこれくらいでいいかな?」

 「はい、ありがとうございます」

 「それじゃ、次はこっちの番だね。二人は今後どうするの?」

 「僕たちはアルティカ共和国を目指しますよ」

 「アルティカ共和国!?」

 「は、はい。何かあるのですか?」


 スノーさんが驚いたように……いえ、羨ましそうに僕の方をみています。


 「何かある訳ではないよ。でも、アルティカ共和国かぁ……いいなぁ」

 「スノーは行った事ない?」

 「ないよ! むしろルード領から出た事がないかな。シア、アルティカ共和国ってやっぱり獣人が多いの?」

 「獣人の国だから当たり前」

 「そっかー。私、騎士辞めて二人について行こうかな」

 「えぇ!?」


 スノーさんがとんでもないこと言い始めました。


 「もちろん冗談だけどね。だけど、行ってみたいのは本当だよ」

 「何か理由があるのですか?」

 「え、だって獣人が沢山いるんだよ?」

 「えっと、それが理由ですか?」

 「それだけで十分だよ! モフモフの耳と尻尾が沢山なんだよ?」


 あれ、スノーさんのようすが……。


 「獣人の国なら多そうですね」

 「種族によってはルード領に来ない種族もいるみたいだしね。私、猫族も鼠族も見た事ないんだよね。一度は会ってみたいと思うでしょ?」

 「確かに、そうですね?」


 その種族の獣人は僕も見た事ないですね。

 警戒心の強い種族は自分の住む場所から出なかったりするみたいですからね。

 特に鼠族は獣人の国でもあまり見ないようです。


 「ちなみに、狐族に出会ったのはユアンが初めてだったんだよね!」

 「そ、それは光栄です」

 

 なんか、ちょっと怖いです。気のせいでしょうか?


 「えっと、何で距離をとるのかな?」

 「いえ、そんな事ありませんよ?」


 その後も延々とスノーさんに獣人の良さをシアさんと僕の特徴やチャームポイントを語られました。

 どうやら、スノーさんは獣人が好きみたいですね。

 ちょっと、引くぐらいに。

戦闘らしき戦闘はまだ起きませんでした。


スノーはケモノスキーです。

自分の他の作品にも獣人がでてくる事でわかりますが、自分も大好きです。

どの程度まで好きかは内緒ですけどね、抑えている方です。


いつもお読みいただきありがとうございます。

今後とおよろしくお願いします。


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