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補助魔法使い、魔法道具店に連れていかれる

 「時間、少し余っちゃいましたね」

 「うん」


 日はまだ落ちておらず、夕食にもまだ少し早い時間帯という事で僕たちは時間を持て余してしまいました。

 かといって、街を回るのには時間が足りなさそうです。


 「宿屋に戻ってゆっくりしますか?」

 「それでもいい。だけど、少し寄りたい所がある。大丈夫なら行ってきたい」

 「いいですよ」

 「ただ、場所が場所。一人で寄りたい」

 「そうですか……」

 「残念そうにしないで。直ぐに戻る、ちょっと知り合いに顔をだすだけ」


 残念そうな顔したつもりはありませんが、シアさん頭を撫でられてしまいます。


 「わかりました、僕は先に宿に戻っていますね」

 「うん。本当は離れたくない。ごめん」

 「大丈夫ですよ! 何かあったら魔力を流して呼んでくださいね!」

 「うん、ユアンも何かあったらすぐ呼ぶ」


 そう言って僕たちは街の中で別れる事になりました。

 何だかんだシアさんとはずっと一緒に居たので久しぶりの一人は淋しいですね。

 幸いにも宿屋からギルドまでは一本道で迷う心配もないので安心です。感知魔法ではマップがわからないのでこの広い街で迷ったら間違いなく迷子ですからね。そんな事でシアさんを呼ぶ羽目になるのは嫌ですしね。

 それにしても、街の中は色んな人で溢れていますね。

 人族は勿論、ピンク色の髪の兎族が親子で買い物をしていたり、真っ赤な髪をなびかせながら歩く獅子族の冒険者がいたり、色々な種族が歩いていますね。

 他にも、黒い髪獣人ーー……。

 かと思いましたが、違いました。

 黒の髪に灰色の混じった髪でした。

 あれは、影狼族ですね。

 一瞬シアさんかと思いましたが、シアさんよりも背が小さく、髪も肩までしかありません。それに、シアさんは眼鏡をかけていませんしね。ちょっと、似合いそうですけど。

 シアさんに似ていると思って、少し見ていると、影狼族の女性と目が合ってしまいました。


 「ちょっと、貴女!」


 目が合った瞬間でした。その女性が人混みをかき分けてこっちに向かって歩いてきます。


 「貴女よ貴女。ちょっと、こっちに来なさい!」

 「い、いきなり何ですか!?」


 問答無用に僕の腕を掴み、引っ張られます。痛みはないですが、ぐいぐいと引っ張られてその場に留まる事が出来ません。

 敵ならば雷系の魔法や光魔法などで気絶スタン拘束フリーズさせる事で逃れますが、僕の警戒魔法に反応がないので、悪い人ではなさそうですし、何よりも騒ぎになりそうなので使う事が出来ません。


 「こっちこっち!」

 「ちょっと、いきなりなんですか!?」


 僕の抗議も届かず、一軒のお店の前に連れられてきました。


 「私はこの店のオーナーをしている、イルミナよ。さぁ、中に入って」


 曇り一つない綺麗なガラスの向こうには沢山の魔法道具が並べていて、一目で魔法道具店とわかりました。しかも、高級な部類のです。

 看板には妖精トリック悪戯スターと書かれているので、どうやらお店の名前みたいですね。

 僕は、その中に強引に連れていかれます。

 中に入ると、貴族御用達の冷蔵庫や空調機器などの高価な魔法道具や、一般人でも買える値段の魔法鞄マジックバッグ小物袋ポーチなどもあり、中には用途不明な魔法道具が綺麗に並べられていました。

 もしかして、これを買わされるのかと心配していると、イルミナと名乗った人が大きな声で誰かを呼び始めました。


 「ララ! ララは居る!?」

 「はいはーい、そんな大きな声を出さなくても聞こえますよ、オーナー」


 イルミナ……さん?に呼ばれて出てきたのは垂れ耳が特徴の金髪のお姉さんでした。


 「居るならいいわ。それより、この子の服を仕立てるからサイズをすぐに測りなさい!」

 「えっとぉー誰ですかぁ、その子は?」

 「私が拉致ーー……じゃなくて、勧誘してきた子よ」


 明らかに拉致って言いましたよね?


 「また、犯罪まがいな事をしてー……いつも謝るのは私なのですから、少しは自重してくださいよぉ」


 そして、前科もあるようです。本当にこの人は大丈夫なんでしょうか?警戒魔法も強化する必要がありそうですね。


 「それよりも、早くしなさい!」

 「わかりましたよー。それじゃ、こっちにきてくださいねー」

 「ちょっと、少しは説明してくださいよ!」

 「まぁまぁ」

 「流さないでください!」

 「まぁまぁ、落ち着いて。さぁどうぞー」


 聞く耳持たず、僕は奥の部屋に連れ込まれました。もしかして、監禁でしょうか?

 一応、魔力を流してシアさんに居場所を伝えて置きましょう。


 「どうかしましたかぁー?」

 「いえ、何も」


 シアさんを呼んだだけです。とは言わずとりあえず大人しくしておきます。


 「では、まずは体のサイズを測りますねー」

 「ちょっと、フードは!」


 警戒していたのにも拘わらず、簡単にフードを外されてしまいました。すごい手馴れです。

 そのせいで、僕の特徴である黒髪と狐耳が露わになってしまいました。


 「あら、綺麗な黒髪に可愛い耳ですねー。私ちょっと張り切ってきましたよぉー!」

 「嫌じゃ、ないのですか?」

 「んー? 何がですかぁ?」

 「いえ、大丈夫ならいいのですが」


 僕の姿に嫌悪感はないようです。

 少し前にもサイズを測られましたが、それよりも丁寧に、細かく寸法を測られます。


 「はぁはぁ……いいですよぉ」

 

 何か悪寒が走りました。


 「はぁはぁ……腰のラインがたまりませんねぇ」


 あ、この人やばい人かもしれません。

 ララと呼ばれた人は、僕のサイズを測るにつれて、鼻息がどんどんと荒くなっていきます。

 何があってもいいように、防御魔法で全身を覆い、身の危険に応じて気絶スタンさせれるようにカウンター魔法も付与しておきます。


 「はぁはぁ……名残、惜しいですが……終わりましたよぉ」


 つま先から頭、更には指先まで事細かにサイズを測られ僕はようやく解放されました。カウンター魔法の出番がなくて良かったです。


 「オーナー! 終わりましたよー」

 「うん、ご苦労様」

 「それで、一体何が目的ですか?」

 「それはね……おっと、やっと来たわね」


 奥の部屋から店内に戻り、僕を連れてきた目的を聞き出そうとしたその時、入口のドアが轟音と共に吹き飛びました。


短めなので、2話更新です。


いつもお読みいただきありがとうございます。


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