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攻撃魔法は苦手ですが、補助魔法でがんばります!  作者: 緋泉 ちるは
第7章 龍人族のダンジョン編
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忍び寄る影

 「お呼びですか? 主様」

 「うん。ごめんね、こんな所に呼び出して」

 「いえ、それが私の役目であり、喜びですから」


 椅子に座る女性の足元で、耳と尻尾を生やした男性が跪いている。

 その部屋に灯りはない。

 まるで牢獄のような場所。

 青臭いカビの匂いが充満し、少し動けば埃の舞う、人が暮らすには不衛生な場所。

 壊れかけた椅子に座る女性が足を組み替える。


 「ねぇ、ちょっとお願いがあるんだけど?」

 「なんなりと」


 男にとって、主の命令は命よりも重い。

 それが、彼にとっての喜びであり、生きがいであった。


 「貴方たちの一族の手を借りたいわ」

 「お任せください」

 「できるの?」

 「主様の意向に必ず答えてみせます」

 「ありがとうね」

 

 女性のお礼は感情のない、ただ並べられた言葉。

 それでも、男の表情は緩む。


 「それじゃ、お願い。出来るだけ早くね?」

 「お任せください」


 音もなく男の姿が消える。

 まるで、最初からこの部屋には女性しかいなかったように忽然と姿を消した。


 「馬鹿な子ねぇ」


 女性にとって、男は駒でしかない。

 

 「私がいないとなーんにもできないんだから」


 嘲笑が部屋の中に響く。

 この世の全てが可笑しいといったように、美しい笑い声が響いている。。

 

 「うふふっ、もうすぐ私達が支配する日が訪れる。全てが壊れる。壊れてしまえばいい」


 この世界は、彼女の世界は既に壊れていた。

 花も草も木も魔物も動物も人も神ですらも壊れてしまえばいい。

 その時、人は求めるだろう。

 龍神でもなく、世界を新たに構築する彼女達を。

 生も死も彼女たちが握る日が遠い未来にある。

 そんな日を待ち望む。


 「いいえ、掴むのよ……この手で」


 小さな掌をぎゅっと握る。

 

 「全ては魔力の集う場所に」

 

 世界は動いている。

 終わりの時に向けて。

 始まりの時を目指して。





 「お呼びですか、お父様」

 「すぐに、全員集めろ」

 「全員といいますと?」

 「全員だ。一族全員を今すぐ集めろ」

 「無理です。優秀な一族の者は各地に散っていますから」

 「それでいい。各地から集結させろ。血の契約を使う事を許可する」

 「…………わかりました。ですが、それにも準備がかかります」

 「どれくらいだ?」

 「どんなに早くても一月」

 「遅い。半分で終わらせろ」

 「…………最善は尽くします」

 「結果で語れ。行け」

 「失礼致します」

 

 男にとって、娘は駒であった。

 そこに血の繋がりは意味はない。

 ただ、主への忠誠。

 それに比べれば娘の命は路傍の小石ほどの価値でしかない。


 「この日の為に、儂は……」


 身を捧げ、魂を売っていた。

 信じる者はただ一つ。

 

 「全てはオメガ様の為に」


 雪が激しく降り注ぐ山に笑い声が響く。

 しかし、その笑い声を気に留める者は一人も居なかった。

かなり短めです。申し訳ないです。


今日は少し休憩という事で……。

明日からまた頑張ります! 次の章あたりからポンポンと色々起こりそうなので、章感覚は短くなると思いますが、よろしくお願いします。


誤字報告ありがとうございます。

本当に助かります。

今後ともよろしくお願いします。

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