攻撃魔法は苦手ですが、攻撃魔法で頑張ります!
やはりこうなってしまいましたか。
ずっと嫌な予感がしていました。
もしかしたら、シアさん、スノーさん、キアラちゃん……三人が力を合わせても倒せない敵が現れるのではないかと。
そして、その予感は当たってしまいました。
みんなは力を使い果たし、戦える状態ではありません。
だから、僕がやるしかありませんね。
出来る事なら避けたかったですが、そうも行きませんよね。
僕は、攻撃魔法が苦手です。
「黒となれ」
敵に有効な魔法は闇魔法しかないから。
「ダークバインド」
私は、攻撃魔法が苦手。
すぐに体が悲鳴を上げるから。
「アシッドレイン」
私は、攻撃魔法が苦手。
光魔法を闇魔法へと変えなければいけないから。
「ダークアロー」
私は攻撃魔法が苦手。
魔力を全て注ぎ込まなければならないから。
「イビルフレイム」
私は攻撃魔法が苦手。
こんなにも悲しい気持ちになるから。
「ごめんね」
私は攻撃魔法が苦手。
だって…………。
「もう何も聞こえない」
だって……。
「祈りも届かない」
だって。
「なら」
命を奪う事しかできないから。
「最後に別れを……」
目の前の古龍が音もなく、崩れ落ちました。
どうやら、倒せたみたいですね。
ですが、僕は、みんなを護れたみたいです。
それと引き換えに……。
僕は…………。
「光が消えた夜
手足を拘束された少女は何を思う
酸の雨が街を
降り注がれる無数の槍が人を
激しく燃える炎が森を
壊していく
大事なものが全て奪われていく
少女は理解した
これは全て私のせいなのだと
どうして
何もしていないのに
私は、ただ、みんなのために
彼女は叫ぶ
その声は誰にも届かない
答えてくれる家族も友も恋人もいない
光を求め
闇を恐れ
水のような穏やかな
炎のように熱い心を
風のような爽やかな
自然を愛した少女の祈りは
憎しみへと変わった
奪われるくらいならば
奪いとってしまえばいい
全てを無に還してしまえばいい
彼女は別れを告げる
人を
過去を
未来を
自身の存在に
そして生まれ変わる
神を信じた者から神を堕とす者へと
穢れた魂を刈る死を司る者へと」
「後は、僕に任せてください」
私が止める暇もなく、ユアンは一人で防御魔法の外へと出ていく。
危ない。
主を危険に晒す事は出来ない。
ユアンを止めなければいけない。
なのに……足が、上手く動かない。
「光が消えた夜」
ユアンが膨大な魔力の籠った光魔法を生み出し、それを闇に染めた。
「ユアン?」
私の声は届いていない。
「少女は理解した」
ユアンが攻撃魔法を使っている。
詠唱……違う。
唄……違う。
これは、物語?
わからない。
だけど、ユアンの言葉に合わせて、魔法が繰り出されている。
影から生まれた鎖が手足を拘束している。
酸の雨が体を溶かしている。
真っ黒な槍が四肢を縫い付けている。
朱黒い炎が全身を包み込んでいる。
怖い。
見ているだけで、声が出ない。
魔法を使う度に、ユアンが血を吐いている。
指先から血が滴っている。
大事な主が傷ついている。
なのに、動けない。
止めなきゃ。
そう思うのに……。
今の主を見て、喜んでいる私もいる。
どうして?
心配なのに。
こんなに心が躍る?
もしかして、影狼の血が騒いでいる?
認めた主の素晴らしさに私の血が……。
「さようなら最後の別れを……」
残っていた魔力が一つになった。
だめ。
そんな体で、魔法を使ったらっ!
だめ。
ユアンがそんな事をしたらっ!
目が離せない。
漆黒の鎌が生まれた。
うつろな表情をした古龍がユアンを見ている。
あれは、命を奪うだけの魔法。
あれが、振り下ろされたら……。
「ユアン、だめ!」
ユアンの体が一瞬、硬直した。
だけど、鎌は止まらない。
漆黒の鎌が古龍の体を……通り抜けた。
失敗?
もしかして、私がユアンの名を呼んだから?
私が、主の邪魔を……。
ユアンが展開していた闇魔法が消えていく。
それと、同時に……古龍が横たわるように、静かに眠るように体を倒した。
「倒した……のかな?」
「そうみたいだね」
わからない。
だけど、古龍は動こうとしない。
もしかして、ユアンが……?
喜びと悲しみが入り交じる。
ぐちゃぐちゃな感情。
だけど、自然と体が動いた。
「ユアン!」
ユアンの体がゆっくりと傾いた。
四肢に力が入らない……だけど!
私が受け止める。
それが…………としての私の役目!
「ユアン……」
ユアンが倒れこむギリギリでどうにか受け止める事が出来た。
だけど、私の目に映ったのは……。
全身から血を流した…………だった。
ずっとやりたかったタイトルですが、もっとやれた気がしますね。
ここは絶対に改稿してもっと綺麗にまとめます!
今回はかなり短めですがお許しください。
長いとグタグタい拍車がかかりそうですし、短く纏めたかったので……。
いつもお読みいただきありがとうございます。
誤字報告ありがとうございます。 助かります!
今後ともよろしくお願いします。




